マクドナルド、国内全店禁煙に。狙いは
これまでの禁煙化=業績低下という図式が覆されている
世間的に禁煙化が進む中、飲食店大手の日本マクドナルドが、8月1日から全国のマクドナルド全3135店舗(2014年7月31日現在)を禁煙としたことを発表しました。同社は、「『全てはお客さまのために』の考えのもと、お客さまの声に耳を傾け、そのニーズにお応えするべく、全国で禁煙店舗を広めてまいりました」と、説明しています。
では、飲食店の禁煙化は、業績にどのような影響をもたらすのでしょうか?予想されることは、喫煙者が離れることによる売上の減少です。過去に禁煙化に取り組んだ飲食店はありますが、その多くが客数や売上が下がったことで禁煙を撤回しています。
しかし、世間的にも禁煙化が進んでいる近年においては、その影響が少し変わってきているようです。例えば、2013年11月より「ロイヤルホスト」が、大手ファミリーレストランチェーンでは初めての全店禁煙に踏み切りましたが、2014年上半期において、来客数は前年比を若干下回ったものの、売上・客単価は共に前年比で100%を超える結果となっており、これまでの禁煙化=業績低下という図式が覆されています。
禁煙化よるマクドナルドの二つの狙い
では、マクドナルドの場合はどうなるでしょうか?今回の禁煙化よるマクドナルドの狙いは大きく二つ考えられます。
一つは、イメージアップにつなげること。今年、飲食店での過酷な労働環境が話題になったことで、飲食店=労働環境が悪いというイメージが定着しました。そこで、マクドナルドは禁煙化の理由として、「従業員への健康に配慮することも、マクドナルドの大切な役割のひとつ」と伝えることで、「マクドナルドは違う」という良いイメージを持ってもらうことができます。
また、「よりきれいな空気と健康に配慮した環境の中でお食事をお楽しみいただけるよう配慮してまいります」と、食事をする環境をよくするための取り組みであるという理由も、イメージアップにつながると思います。
もう一つは、ファミリー客を呼び込むことです。マクドナルドのビジネスの原点は、ファミリー客へのサービスの提供です。ところが、近年マックカフェの導入を進めたことで、ビジネスパーソンの利用者が増え、家族でわいわい楽しめる雰囲気ではなくなり、メイン客であるファミリー客が離れていくという状況でした。しかし、禁煙化にすることで健康や環境面を改善したので、「子どもを安心して連れていけるお店」という認識を持ってもらい、ファミリー客の増加を狙っていると考えることができます。
本来の顧客を呼び戻せるか。今後の業績の変化に注目
通常、禁煙化が成功するかどうかは、顧客のことをしっかりと理解しているかどうかがポイントになります。例えば、喫煙する顧客の割合が多いのに禁煙化に踏み切った場合、顧客が離れてしまうことは容易に想像できます。また、顧客が食事を「味わい」に来ている場合は、禁煙化は成功するかもしれませんが、喫煙しながら食事ができる「環境」を求めてきている場合、客離れが起きてしまいます。マクドナルドの場合は、顧客の分析をした上で、というよりは、本来の顧客を呼び戻すための禁煙化であるようにも思います。
マクドナルドが禁煙化を発表後も、ゆるやかに株価が上昇している点からも禁煙化の取り組みが期待されていることがわかりますが、今後の業績の変化に注目です。
最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。
ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。