「パクリ」と「著作権侵害」の境界線
「パクリ」と「著作権侵害」は異なる
押切蓮介氏の連載漫画「ハイスコアガール」について、連載の一時休載や単行本の回収等が話題になっています。ゲームソフト会社が、自社のキャラクターを漫画の中で無許可使用されたとして、著作権法違反で販売元のスクウェア・エニックスを刑事告訴したのが発端です。
「ハイスコアガール」は、1990年代の日本が舞台。アーケードゲームや家庭用ゲーム機に夢中な少年と少女の物語です。作中には必然的に当時のゲーム画面が登場しますが、それだけでなく、主人公の心の中でゲームキャラクターが語り掛けたりもします。
ゲームに限らず、既知のキャラクターの使用はコンテンツビジネスでは重要な問題です。まず、大きなポイントは、いわゆる「パクリ」と著作権侵害が異なるという点。例えば、「未来からやってきた青色のずんぐりしたネコ顔のロボットと、ちょっと頼りない少年との交流を描く小説(イラストなし)」を書いたとしましょう。誰もが「あの有名な漫画のパクリだ」と非難するかもしれません。しかし、これは著作権法違反には当たりません。著作権は、あくまでも具体的な表現を保護するものです。容貌や性格上の特徴といった抽象的な人物像としての「キャラクター」自体は、著作物ではないというのが判例です。
大手出版社の商業作品として無許可使用は問題
また、引用も著作権侵害ではありません。例えば、有名なアニメについての評論記事を書いたとしても、一定の要件を満たせば、著作権者に承諾を得ずに絵を掲載することが可能です。しかし、明らかに特定のキャラクターを連想させる漫画を無断で描けば、これは著作権侵害になります。この場合、ストーリーがオリジナルであれば、それは新たな創作的要素を加えた二次著作です。知名度の低い作品が、ファンの二次著作で盛り上がって原作の宣伝になるケースもあります。しかし、だからと言って許されるものではありません。仮に作品中に描かれるキャラクターの具体的姿態が原作中に一切登場していないとしても、その事情は変わりません。
「ハイスコアガール」では、ゲームキャラクターが単に作中のゲーム画面に描かれているだけでなく、ストーリーの要素として描かれています。単純な引用とは言い難いでしょう。また、大手出版社の商業作品として無許可使用は問題です。良い作品だけに、穏当な決着が望まれるところです。
最新の気になる時事問題を独自の視点で徹底解説するWEBメディア「JIJICO」。各分野の専門家が、時事問題について解説したり、暮らしに役立つお役立ち情報を発信していきます。
ウェブサイト: https://mbp-japan.com/jijico/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。