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宮内庁と共産党の国会漫才(あるいは宮内庁の反知性主義について)

kunaicyo

真実を知るチャンスが目の前にあるのに、それを阻害されていたというのは、やはり納得いかないです。「私も邪馬台国の謎(なぞ)を知りたい!」今回は罪山罰太郎さんのブログ『俺(おれ)の邪悪なメモ』からご寄稿いただきました。

宮内庁と共産党の国会漫才(あるいは宮内庁の反知性主義について)
「国会漫才」というタイトルにひかれてこのエントリを見てる方も多いと思いますが、その面白さを味わう為にやや予備知識が必要です。まずは、宮内庁と古代史の話に少々お付き合い下さい(これ自体、多くに人にとって興味深い話だと思います)

実は俺(おれ)、日本の古代史に結構うるさいんです。で、日本の古代史といえば「邪馬台国ってどこにあったの?」という大変メジャーなナゾがありますよね。近畿説と九州説が有名ですが、他にも千葉説(!)、エジプト説(?!)なんて珍説もあり、現在も論争が続いています。最近ではドラマにもなったヒット小説『鹿男あをによし』が邪馬台国近畿説に基づいたお話で、個人的にとても興味深く読みました。

ところで。

この邪馬台国の所在を明らかにする研究を宮内庁が(事実上)邪魔してるってみなさんはご存じでしょうか?

奈良県に箸墓(はしはか)古墳という古墳があるんですが、これは邪馬台国の女王・卑弥呼(ひみこ)の墓の有力候補の一つなんです。ごく簡単にその根拠を書けば、以下の通りです。
* 古墳の状態やその周りからの出土物が、邪馬台国のことを書いた『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』の記述と一致する
* 古墳の築造年代を測定したら、卑弥呼(ひみこ)の没年とほぼ一致した

これらの根拠を否定する意見もあるのですが(当然ながら、九州説を唱える人は否定的です)、多くの研究者や古代史ファンが注目している古墳であることは間違いありません。「箸墓(はしはか)古墳=卑弥呼(ひみこ)の墓」説を肯定するにしろ否定するにしろ、この古墳を詳しく調べてみるっていうのは、邪馬台国の研究を進める上で大きな意味があるのは間違いないでしょう。

とーこーろーがー。

今現在、この古墳には研究者が立ち入ることができず、内部の詳しい調査もできないのです。なぜなら、宮内庁がこの古墳は古代の皇族の墓であるとして、部外者の立ち入りを禁止しているからです。

もちろん宮内庁が卑弥呼(ひみこ)が皇族だと主張してるワケではありません。宮内庁の見解ではこの古墳は第7代・孝霊天皇の娘のヤマトトトヒモモソヒメノミコトさん(長いので以降モモちゃんと書きます)の墓なのです。

最近、id:y_arimさん(http://d.hatena.ne.jp/y_arim/)がこんな↓エントリを書いてましたが

個人的に「天皇はいらない!」と思う理由 – ビジネスから1000000光年
http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20100102/1262436851

宮内庁は「陵墓の静安と尊厳の保持」を理由に天皇家の墓と思われる古墳を管理して立ち入り禁止にしてるんですね。まあ「天皇はいらない!」とまで思う人は少数でしょうが、天皇家の墓だからといって学術的な調査をさせないのは、非合理的だと思う人は多いと思います。俺(おれ)もその一人です。

が、この話、本当にあきれるのはこの先です。

実は、宮内庁が箸墓(はしはか)古墳に眠ってると主張するモモちゃんって架空の人物なんですよ*1。”最初の方の何代目かまでの天皇が実在しないらしい” という話は知ってる人も多いと思います。モモちゃんのパパの孝霊天皇はその代表選手で、「欠史八代」と呼ばれる特に存在が疑わしい天皇の中の一人なんですね。その娘なわけですから、モモちゃんもいなかったと見るのが一般的です。

つまり、宮内庁は実在しない(可能性が極めて高い)人物の「陵墓の静安と尊厳の保持」の為に、古代史上の重要な研究を許さないのです。

あきれちゃいますよね?アメリカの進化論裁判とか全然笑えないと思います。もしかしたらここまで読んで「そうはいっても、宮内庁としても天皇家を守る為にやってることなんだろう」と思う人がいるかも知れません。

でも、俺(おれ)は断言しますけどそれは違います。

これだけ頑なな態度を取りながらも、彼らが本気で天皇家や天皇家の墓を守る気がないことが明白な事例もあるのです。第26代継体天皇という、日本の皇統を考える上で大変重要な天皇がいます。この天皇は先ほどのモモちゃんのパパと違って、ほぼ間違いなく実在したと考えられている天皇です。何が重要なのかといえば、この継体天皇のとき、男系の皇統が一回途切れて女系で継承された疑いがあるんですね。皇室典範改正が議論されたとき「万世一系」という言葉が踊りましたが、これは結構デリケートな話です。

そんないわくのある天皇の陵墓は、さぞ厳重に守られていると思いますよね?

ところが、違うんです。考古学者の間で継体天皇陵として定説となっているには大阪の今城塚古墳ですが……なんと、この古墳にはだれでも自由に入ることができて地元の人の散歩コースになっているのです!おまけに少し前までは古墳の外濠(そとぼり)が釣り場になっていました*2。そして、当たり前のように発掘調査も行われています。

大変結構なことだと思いますが、なぜ宮内庁はこの古墳を見逃してるのでしょう?

タネを明かしましょう。実は宮内庁は、同じく大阪にある太田茶臼山(おおだちゃうすやま)古墳という別の古墳を継体天皇陵だとしてるんですね。だから、「今城塚古墳? そんなの天皇と関係ないッスよ。散歩でも調査でも好きにして下さい」と、いう姿勢なのです。しかし、太田茶臼山(おおだちゃうすやま)古墳は出土物の年代が合わないので、継体天皇陵ではないことがすでに分かっています。その一方で、散歩コースの今城塚古墳が継体天皇陵である可能性は非常に高いのです。

つまりこういうことです。

宮内庁は天皇の墓でないことが確実な古墳の静安と尊厳を守りつつ、天皇の墓であることが確実視されてる古墳が大阪のおばちゃんの足蹴(あしげ)にされてることを看過している。これが現代の “王の墓守” の姿です。

宮内庁が採用している陵墓の比定*3は、江戸から明治にかけて行われたもので、現在の学識からすると明らかにおかしいものが少なくありません。継体天皇陵の他にも、先のid:y_arimさんのエントリで紹介されている平城天皇陵(平成天皇陵じゃないよ!)なども「これ絶対違うよね(笑)」ということで学者の見解が一致していますが、宮内庁は改める様子がありません。古墳の調査について、宮内庁は非常に反知性主義的態度を示し、「己の間違いを正したくない」というエゴを丸出しにしてるのです。

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