能作で製作体験&工場見学。「高岡鋳物の町」を観光する富山の旅
こんにちは! 歴史旅大好きモデルの加治まやです。突然ですが、皆さん「鋳物(いもの)」をご存じですか? あまり聞きなれない言葉ですが、私たちの身の回りには、鋳物が当たり前のように存在しているんです。
今回は、そんな鋳物を探訪する旅に出てみたいと思います! 旅の目的地は、富山県高岡市。鋳物メーカー「能作」での製作体験や工場見学、カフェでは鋳物の器でランチを楽しみます。
東京駅を出発
東京駅から北陸新幹線で新高岡駅へ
まずはJR東京駅から北陸新幹線「はくたか」に乗って、富山を目指します。乗り継ぎなし、2時間半ほどでJR新高岡駅に到着です! 新高岡駅は、古民家などにある縦格子をモチーフにしているんだとか。
高岡への旅は「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」を利用するのがおすすめです。新幹線と宿のセットがお得に予約できますよ。
能作で鋳物の工場見学&鋳物製作体験
老舗の鋳物メーカー「能作」へ
新高岡駅から加越能バスの「世界遺産バス」に乗って、能作前バス停で降ります。今日の目的地である「能作」に到着です。
能作は1916年(大正5年)創業の鋳物メーカー。2017年に現在の場所に移転したこちらの社屋には、工場だけでなく、カフェやショップ、鋳物製作体験工房などが併設されています。
伝統工芸の工場見学や製作体験ができるなんて素敵! さっそく建物の中に入ってみましょう。
入口を抜けてまず目に入るのは、鋳物をつくるための木型が数え切れないくらい並んだこちらのガラス張りの倉庫。工場見学はこのエントランスからスタート。所要時間は30分ほどです。まずは、ガイドさんに鋳物について教えてもらいます。
ここでようやく「鋳物」とは何なのかが判明しますよ!(笑)
※編集部注:工場見学(無料)は事前予約制です。詳しくはこちら
鋳物とは、熱して液体状にした金属を型に流し込み、冷やし固めた製品のことをいいます。真鍮(しんちゅう)、錫(すず)、青銅(せいどう)などを素材に用いたそれら製品には、日用品として私たちの生活になくてはならないものが多くあります。また、高岡では400年以上も前から、銅合金鋳物の生産が続いているそう。
能作では、「生型鋳造法」という伝統技術を継承しながら、真鍮製のインテリアや錫100%製のテーブルウェアが製造されています。
能作 工場見学
鋳物を知るために、いざ工場見学
技法や材料など、鋳物の概要が知れたら、次は職人さんたちが実際に製品をつくっている工場を見学してみましょう!
工場の中は、主に鋳造(ちゅうぞう:鋳物をつくること)をする鋳物場と仕上げをする仕上場にエリアが分かれています。職人さんは分業制で、それぞれのお仕事をしているんだって。
これは、鋳造した鋳物をヤスリで研磨している様子。手作業でひとつひとつ丁寧に磨いていることが分かります。金属のやわらかさなどによって、磨き方もそれぞれ違っていてとても興味深かった!
同じ金属でも磨き方によって全然質感が違うのが分かりますね。
さて、一通り工場を回ったらお待ちかねの体験工房に移動しましょう!
能作 鋳物製作体験
オリジナルの鋳物をつくれる製作体験!
「鋳物製作体験」では、砂を使って「鋳型」と呼ばれる型をつくり、その型に溶かした錫を流し込んで製品をつくります。エプロンをつけていざスタート! 私は今回、90分コースでぐい呑みをつくることにしました!
※編集部注:鋳物製作体験(有料)は事前予約制です。詳しくはこちら
正直、道具を見ただけでは何がどうなって、金属の製品が出来上がるのか全く想像ができません……。
まずはぐい呑みの鋳型をつくります。土台となる枠の中に、ぐい呑み用の原型を置いて、その上から原型が埋まるように砂をかけます。
砂をかけるなんて単純な作業も不器用な私にしたら大作業!(先が思いやられる……)
型が砂で埋まったら、上からギュッギュと砂を押さえつけて固めていきます。同じ作業を数回繰り返して砂が硬く押し固まったら、重ねた鋳型をパカッと丁寧に開きますよ。
それがこの状態。皆さん、どういう仕組みか段々分かってきましたか? ここからゆっくり、砂に埋めた原型を取り除くと……。
こう、なります! もう分かりましたか!? そうです、最後に2つの型をもう一度重ね合わせれば、鋳型は完成です。
それにしても、もう一度重ね合わせるのって難易度高すぎない!? どこかに当たって、固めた砂が崩れたら一大事じゃん!! とプチパニックな私。精神統一をして、いざ、型を重ね合わせます!
口の形がひん曲がっていて、必死さが伝わりますね(笑)。なんとか失敗せずに、重ね合わせることができました。
ここからは、溶かした錫を鋳型に流し込む作業に移ります。危険な作業なので、この作業は講師の方におまかせしますよ。
錫は比較的低い温度で溶ける金属で、230度ほどでこのような状態になります。キラキラしていてこのままでも、きれい!
なんだかSF映画に出てくるような、錫の質感にドキドキ!! つい触ってみたくなるような(熱いので絶対ダメ)、ぷるぷるとした見た目です。
錫は熱伝導率が高くすぐに固まるので、数分置いたらズドン、と砂を崩します。穴などなく、きれいな状態でぐい呑みが現れました! やった〜。
仕上げにヤスリで、飲み口をなめらかにして完成です!
ぐい呑みをつくるのに使った道具と一緒に記念撮影!
ぐい呑み1つをつくるのにこんなに手間がかかるなんて、あらためて、職人さんたちに尊敬の念が湧いてきます。普段は「何かをつくる」ことはほとんどないのですが、講師の方がやさしく教えてくれたので、楽しい時間を過ごせました!
「高岡では、小学生が鋳物製作体験をする授業があるんですよ」と、講師の方から伺って、とても素敵なことだなと思いました。全国の小学校でもぜひやってほしい!
能作 ランチ
体験後はIMONO KITCHENで遅めのランチ
超集中して鋳物製作体験をしたら、とってもお腹がすいてきました。併設されたカフェ「IMONO KITCHEN」でランチをいただきます。
単品からセットメニュー、スイーツまでメニューも豊富! お腹ぺこぺこな私はがっつりご飯を食べますよ。
オーダーしたのは「いろいろベーグルセット」。富山県の米粉を使用した日替わりベーグルが4種に、日替わりスープ、サラダ、日替わりのデリ2種が付く、ランチセットメニュー。
ランチを見て、開口一番出た言葉は「かわいい!!」。ぽてっとしたベーグルのフォルムもですが、器に能作の製品が使われていて、お洒落な雰囲気が倍増しです。
べーグルが入った器は、錫のやわらかい性質を利用した人気商品「KAGO」シリーズ。縦横に引っ張ったり曲げたりして、バスケットなど好きな形に変形できるんです。
この日のベーグルは、プレーン、ペッパーベーコン、トロピカル、スイートポテトの4種。さまざまな味が楽しめて飽きることがありません。地元の食材を使ったサラダにオリジナルの人参ドレッシングがぴったりで素材の味が活きます。中華スープもやさしい味で、張っていた気がほっとほぐれていきました。
そして、デザートにオーダーした「能サクッ!アップルパイ」(数量限定)を楽しみに待っていると……。
現れたのがこちら!! り、りんごやんけ!! ベーグルの器に使用されていた「KAGO」をイメージしたパイ生地の中に、国産りんごが丸々包まれています。中にはさつまいもペーストが入っていて、2度おいしい!
ベーグル山盛りにアップルパイと、ぺこぺこだったお腹が3倍くらいに膨れ上がりました! ご馳走様でした!!
最後にショップでお土産を物色します。錫の曲がりやすい性質を利用したアイテムが、本当にかわいくてお洒落で目移りしてしまいました。
この日はバスでJR高岡駅に移動して、駅前のホテルに宿泊しました。
高岡鋳物発祥の地・金屋町
伝統的な千本格子の家並みで歴史を感じる
次の日の朝は早起きをして、高岡鋳物の歴史を探るために金屋町という場所を訪れます。
高岡駅から加越能バスに乗り、6分ほどの金屋バス停で下車。歩きだすとすぐに、時間の感覚を忘れてしまうような素敵な町並みが現れます。
金屋町は高岡鋳物発祥の地といわれており、重要伝統的建造物群保存地区にも指定されているんです。いまも千本格子の家並みが残り、石畳とのコントラストが美しいですね。
ほとんどのお家の軒下に金属製の風鈴がつるしてあって、ちりんちりんと色々な方向から聞こえてくるのがなんだか神秘的。ところどころ食事処や鋳物の雑貨を売っているお店もありますよ。
高岡市鋳物資料館
資料館で高岡の歴史を知る
そんな金屋町にある「高岡市鋳物資料館」を訪れました。資料館には、高岡の鋳物の歴史からつくり方、その発展の様子が分かりやすく展示されています。その土地の歴史を知ることができる資料館は、私の旅には欠かせません!
元々は「加賀百万石」で有名な加賀藩の領地であった高岡。加賀藩の2代藩主・前田利長が隠居するための城として高岡の地に高岡城をつくり、城下町を発展させる一環として、日用品の鍋や釜をつくる鋳物師たちを招き、鋳物場を開設したのが、この地の鋳物産業のはじまりといわれています。
その後、一国一城令(1つの国にお城は1つだけ)が出されると高岡城は廃城となりますが、招かれた商人や職人たちは高岡に残り、次の藩主が職人たちを手厚く保護したことで、職人の町として再スタートを切ることになったのだとか。
私が興味深かったのは色つけのコーナー。勝手に金属製品は金属そのものの色で出来上がっていると思い込んでいたので、こんなに沢山の色のつけ方があるなんてびっくりしました!
茶道具の釜も上の部分は鉄、下の部分は銅でできていたりするんだって。下の部分はあまりにもツヤツヤしているから、陶器のような印象を抱いていたけど、火にかけるんだからよく考えてみたら金属ですよね。このツヤツヤ感も色付けがなせるワザなんだなあと感心してしまいました。
昨日実際に鋳物をつくってみたからこそ、構造を思い浮かべながら歴史が勉強できて、とても有意義な訪問になりましたよ。
日常生活に欠かせない鋳物ですが、今回の体験をするまでどのようにできているかなんて考えたこともありませんでした。高岡の旅を通して、日本の伝統工芸の魅力を目一杯味わえました!!!
東京駅に到着
掲載情報は2024年11月27日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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