新築でも中古でも最も妥協したのは「予算より高い価格」。注文住宅では性能にこだわりも 令和5年度住宅市場動向調査

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新築でも中古でも最も妥協したのは「予算より高い価格」。注文住宅では性能にこだわりも 令和5年度住宅市場動向調査

国土交通省は、令和5年度の「住宅市場動向調査」の結果をとりまとめ、公表した。毎年実施している大型調査ではあるが、コロナ禍を経て、住宅を取り巻く環境も変わりつつある。その影響がどう表れているか、見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「令和5年度住宅市場動向調査」の結果を公表/国土交通省

調査対象者の住宅取得時期は価格上昇が著しかった2022年度

この調査は、2022年度(2022年4月~2023年3月)に住み替えや建て替え、リフォームを行った世帯を対象に行ったもの。注文住宅と中古住宅は全国を、分譲住宅、民間賃貸住宅、リフォームについては三大都市圏を対象にしている。

さて、調査対象となる2022年度の住宅市況を振り返ってみよう。コロナ禍後の住宅ニーズに支えられ、どのエリアでも住宅価格が上昇していた時期だ。2022年2月にロシアがウクライナに侵攻するウクライナ危機によって、エネルギーなどさまざまなコストの上昇、円安なども進行した。

一方で、欧米諸国が利上げに動いたのに対して、当時の日本銀行の黒田総裁は低金利政策を維持していたが、2022年12月には長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げた。これによって、長期間金利を固定する住宅ローンの金利が上昇する可能性が高まった。

2024年の現時点では、住宅ローンの金利上昇は既定路線になり、住宅価格は都心部とそれ以外で動きが異なるといった市況になっている。2022年度とは市況が変わっているので、調査対象者の住まいの選択については、その点を承知しておく必要があるだろう。

妥協したもの、決め手になったものは住宅の種類によって異なる?

調査結果で、まず「妥協したもの」は何か(図1)を見ていこう。
程度の差こそあるが、新築住宅系(注文住宅、分譲戸建住宅、分譲集合住宅)では、まずは「価格が予定より高くなった」ことを挙げ、次いで「住宅の広さ」を挙げている。価格上昇で、予算より価格が高くなってしまったり、予算に収まるように広さを抑えたり、といったことがなされたことがうかがえる。

一方、中古住宅系(既存戸建住宅、既存集合住宅)では、同じくまずは「価格が予定より高くなった」ことを挙げているが、新築住宅系よりは妥協した割合が低くなっている。新築では予算との差が大きいが、中古ならその差が小さかったということだろうか。次に、既存戸建住宅では「交通の利便性」を、既存集合住宅では「間取り・部屋数」を挙げ、「広さ」については新築系よりは順位が低い。全体的にも、中古系のほうが妥協した項目の割合が新築系より低くなっており、新築系ほど妥協せずに済んだことがうかがえる。

住宅選択にあたり妥協したもの(出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」調査結果の概要より転載)

(図1)住宅選択にあたり妥協したもの(出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査」調査結果の概要より転載)

次に、住み替えた住宅を選択した理由を見ると、注文住宅では「信頼できる住宅メーカー/不動産業者だったから」が最多の52.2%。分譲戸建住宅、分譲集合住宅では「新築住宅だから」が最多で、それぞれ 64.9%、69.4%だった。既存戸建住宅、既存集合住宅では「価格が適切だったから」が最多で、それぞれ 67.9%、59.5%だった。新築にこだわるか、価格を重視するかで、新築を買うか中古を買うかが分かれるといえそうだ。

また、住宅の選択理由となった設備等について見る(図2)と、分譲戸建住宅と分譲集合住宅では、「間取り・部屋数が適当だから」、「住宅の広さが十分だから」、「住宅のデザインが気に入ったから」の3項目が僅差で上位になっている。既存戸建住宅と既存集合住宅では、「間取り・部屋数が適当だから」、「住宅の広さが十分だから」が上位になるものの、「住宅のデザインが気に入ったから」は新築系ほどには高くない。中古系の場合、間取りや広さが希望に添っていても、デザインは好みでないと感じる場合もあるようだ。

興味深いのは注文住宅で、同じ新築系であっても「間取りや部屋数」「住宅のデザイン」に加え、「高気密・高断熱住宅だから」や「火災・地震・水害などへの安全性が高いから」といった、性能面の項目が上位になっている。最近の注文住宅では、省エネ性や安全性などの性能の高さが特徴になっているからだろう。

設備等に関する選択理由(出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査 報告書」より転載)

(図2)設備等に関する選択理由(出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査 報告書」より転載)

予算より高い価格で、返済計画は大丈夫?

住宅価格(建築費用)の上昇が住まい選びに影響していることがうかがえる結果だが、では、それぞれを選んだ世帯の購入資金や返済計画などはどうなっているのだろう?

購入資金を見る(図3)と、土地を購入した注文住宅新築世帯で平均5811万円、建て替え世帯で平均5745万円だ。土地の取得費用の有無があるのにあまり変わらないのは、建て替えた注文住宅の延べ床面積が平均136.3平方メートルと最も広く、土地を購入した注文住宅は平均116.2平方メートルとそれより小さいので、面積の違いによる影響もあるのだろう。

また、購入資金はそれぞれ、分譲戸建住宅で4290万円、分譲集合住宅で4716万円、既存戸建住宅で2983万円、既存集合住宅で2793万円となっている。興味深いのは、分譲集合住宅で自己資金が多いことだ。借入額が少ない中古系と合わせて、自己資金比率が5割近くまで高くなっている。

購入資金(出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査 報告書」より転載)

(図3)購入資金(出典:国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査 報告書」より転載)

ただし、平均値で自己資金比率の高いものは、ローンを組まずに全額自己資金という比率も高い。住宅ローンを利用したのは、注文住宅(建て替え)で48.7%、分譲集合住宅で54.8%、既存戸建住宅で46.5%、既存集合住宅で38.8%となっている。

そこで、住宅ローンの借り入れがある世帯の返済負担率(※)を見てみよう。住宅ローンの年間返済額と返済負担率は以下のようになった。いずれの場合も、返済負担率は2割を切る比較的安全な返済計画を立てたことが分かる。

■住宅ローンの年間返済額(返済負担率※)
注文住宅(全体):155.2万円(19.4%)
分譲戸建住宅 :125.0万円(17.6%)
分譲集合住宅 :123.6万円(15.5%)
既存戸建住宅 :108.3万円(16.1%)
既存集合住宅 :110.6万円(15.7%)
※返済負担率とは、年間返済額の年収に占める割合

ちなみに、民間金融機関から借り入れた世帯の金利タイプを見ると、「変動金利型」が79.2%だった。超低金利が続いていた時期なので、より金利の低い変動金利型を選ぶのがスタンダードだったのだろう。

住まいを選ぶ際に、誰もが重視するのが「価格」「間取りや広さ」「立地」だろう。ただし、その時々の住宅市況によって、そのいずれをより重視するか、いずれを妥協するかは、変わってくるようだ。一方で近年は、省エネ性や災害対策など、住宅の性能に関する関心も高まっている。異常気象、猛暑、ゲリラ豪雨、巨大地震への不安などが、住まいの重視項目を変える可能性もある。

●関連サイト
国土交通省「令和5年度住宅市場動向調査の結果をとりまとめ」

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