マンション管理費・修繕積立金が首都圏で月額約3万円に!?新築・中古ともに上昇し続ける要因はどこにある?
東京カンテイが、新築・中古のマンションでそれぞれ、毎月発生するランニング・コスト(管理費や修繕積立金の合計額)を分析した。それによると、ランニング・コスト(70平方メートル換算)は、首都圏では新築・中古ともに、合わせておおむね月額3万円に達しているという。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「新築・中古マンションのランニング・コストに関する調査レポート(2023年)」を発表/東京カンテイ
首都圏と近畿圏で上昇が続く、新築マンションの管理費・修繕積立金
まず、新築マンションの管理費と修繕積立金の額を見ていこう。東京カンテイでは2014年~2023年の首都圏・中部圏・近畿圏の1戸当たりの管理費と修繕積立金を「専有面積70平方メートル換算」にして分析しているが、2023年の月額の平均額と対前年比は、次のようになる。
首都圏中部圏近畿圏管理費修繕積立金管理費修繕積立金管理費修繕積立金2023年平均2万358円8729円1万1406円7287円1万3167円 7311円 対前年比+4.1%+9.9%-2.3% -1.1%+7.8% +6.1%三大都市圏 新築マンションの管理費・修繕積立金の推移(70m2換算)(出典/東京カンテイ「新築・中古マンションのランニング・コストに関する調査レポート(2023年)」より抜粋して筆者が作成)
管理費と修繕積立金を合計したランニング・コストは、首都圏では3万円近く、近畿圏と中部圏では2万円前後になっている。中部圏はここ4年程横ばいに推移しているのだが、首都圏と近畿圏では、増加が著しい。東京カンテイでは、坪(3.3平方メートル)の平均値も合わせて出しているが、坪単価つまり新築マンションの価格が首都圏と近畿圏で上昇し続けていることが影響しているようだ。
さて、「管理費」は、日常の管理が円滑に進むためのもので、管理会社への委託費、共用部の清掃費や水道光熱費、共用設備の点検などに使われる。首都圏の管理費が他の圏域より高いのは、管理員などの人件費の高騰の影響もあるのだろう。さらに都心部では、新築マンションが高額化し、グレードを引き上げるにつれて管理サービスの内容も充実させているといったことの影響も考えられる。
一方、修繕積立金は、主に12年周期などで実施される大規模修繕工事を実施するために積み立てられるもの。こちらは工事費が年々上昇していることの影響がうかがえる。建築資材に加えて、こちらも人件費の高騰が著しい。
また、一般的にタワーマンション(20階以上)の方が通常のマンションよりも、管理費や修繕積立金が高いといわれている。タワーマンションには多様な共用施設が備えられ、24時間常勤管理、コンシェルジュサービスなど、充実した管理サービスが提供されることが多い。また、タワーマンションの施工方法が一般のマンションと違い特殊になっていることで、日常の管理費や大規模修繕工事のための修繕積立金が高くなるのだ。タワーマンションの供給が多い首都圏と近畿圏では、こうした影響で平均額が上がることも考えられる。
中古マンションの管理費と修繕積立金、築年別で動きが異なる理由は?
次に、中古マンションを見ていこう。東京カンテイでは、2023年に中古流通したマンションのランニング・コストを70平方メートル換算で、築年別に分析している。
築年帯別の月額平均を見ると、管理費と修繕積立金で傾向が大きく異なることが分かる。おおむね築15年前後までは管理費は減少傾向、修繕積立金は上昇傾向にあり、真逆の動きをしていることが見て取れる。
※グラフ上では、管理費&修繕積立金の合計値を築1年時点および5年刻みで表記
首都圏 中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年流通分、70m2換算)(出典/東京カンテイ「新築・中古マンションのランニング・コストに関する調査レポート(2023年)」より転載)
※グラフ上では、管理費&修繕積立金の合計値を築1年時点および5年刻みで表記
中部圏 中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年流通分、70m2換算)(出典/東京カンテイ「新築・中古マンションのランニング・コストに関する調査レポート(2023年)」より転載)
※グラフ上では、管理費&修繕積立金の合計値を築1年時点および5年刻みで表記
近畿圏 中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年流通分、70m2換算)(出典/東京カンテイ「新築・中古マンションのランニング・コストに関する調査レポート(2023年)」より転載)
まず、管理費についてはおおむね、築10年あるいは15年にかけて平均額が下がるのは、先ほどの新築マンションの推移で新しいものほど管理費が高くなっていることが影響し、中古マンションの築浅の高さにつながっているからだ。
なお、中部圏で築30年~35年くらいに高くなっているのは、バブル期に分譲された豪華な設備仕様・サービスのマンションの影響ではないだろうか。
一方、修繕積立金については、逆に築年の新しい時期のほうが金額が低い。築5年から上昇が顕著になり、築10年を超えると緩やかに上昇するといった傾向が見える。
この理由は、近年分譲時に、修繕積立金の徴収方法で「段階増額積立方式」を採用する事例が多いからだろう。かつては、均等に積み立てる「均等積立方式」が主流だったが、近年は多くのマンションで、あらかじめ段階的に増額する「段階増額積立方式」を採用している。そのため、定められた時期、たとえば5年ごとや10年ごとなどに修繕積立金を増額することで、こうした推移になっていると考えられる。
なお、東京カンテイではランニング・コストについて、今回(2023年)と10年前(2013年)の額を折れ線グラフ2本で表示している。2013年当時の築1年は、2023年では築11年になっているので、黒い折れ線を右に10年分ずらして比べる必要があるが、いずれにしても2023年(赤)の折れ線が2013年(黒)の折れ線を上回っている。つまり、10年間のうちに、管理費や修繕積立金を値上げしたマンションが多いということだろう。
マンションのランニング・コストは、分譲当時の額から上がる可能性がある。今のように人件費や建築資材の高騰などの影響を受けて、当初の計画ではこれから実施する大規模修繕工事の費用としては不足するといった見直しがなされることもある。ランニング・コストについても、あらかじめ理解しておくことが必要だ。
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