特定の物質の検出に使うテストキットをはじめ、食品および動物の安全性に関するさまざまな製品の開発、製造、販売等を行うグローバル企業・ネオジェン社(米ミシガン州ランシング)は、ネオジェンジャパン(神奈川県横浜市)本社にて、メディア向けセミナーを実施。「食品安全文化とデジタルトランスフォーメーション(DX)」をテーマとした講演も行われた。
◆ネオジェン社の概要と現在の取り組み
ネオジェン社は、1982年の事業開始以来、”世界の安全・安心な食糧供給に貢献する”ことを企業ビジョンとし、幅広く事業を展開。現在では世界12か国にカスタマーサポートラボを構え、日本を含む140か国以上に販売拠点がある。
ネオジェン社の最高科学責任者であるロブ・ドノフリオ氏は、「お客様の指標を聞いていくところからはじまり、ニーズや課題に合わせた培地、検体の採取、試験・検査、そしてデータアナリティクスを活用したソリューションを提供している。ネオジェンは製品を開発するだけではなく、お客様のサポートや教育も行う企業。食品安全をともに見守っていきたい」と語った。
◆テクノロジーと文化の双輪で食品安全を実現する
この日、ゲストとして登壇したのは、ウォルマートやウォルト・ディズニー・カンパニーなど世界的な企業で30年にわたって指導的役割を果たし、2023年までFDA(アメリカ食品医薬品局)の食品政策・対応担当副長官を務めたフランク・イアナス氏。アメリカの食品安全について中核的な役割を担う人物だ。
フランク氏は、過去に欧米で発生したいくつかの集団食中毒を例に挙げながら講演を進めていく。そのなかには死亡者が出ている深刻な事例も少なくない。また、こうした重大事案が一度でも起これば、企業の信用は一気に失墜するということも想像に難くないだろう。「食品供給がグローバル化し、食文化が発展を続けている一方、現在も食品汚染のリスクはなくなっていない。より安全な供給ができるよう、テクノロジーの活用によって改善していかなければいけない」と、フランク氏は語る。
これまでも、クレジットカードの購入履歴から集団食中毒の感染源を特定したり、過去の食中毒の事例を論文にしてオンラインで閲覧可能にすることで情報共有が容易になったりと、テクノロジーの活用が食の安全に良い方向に影響した例もある。「今後はさらにAIやブロックチェーン(分散型台帳)などの技術を使い、膨大なデータを効率的に活用していく、現代に合ったアプローチが必要だ」と、フランク氏。あらゆるものがデジタル化・IT化された現代において、食品安全を守るためには、テクノロジーの活用は欠かせないというわけだ。
それと同時に、「人と人のかかわり」も、食品安全を守るうえで必須だという。フランク氏は食の安全を実現するために、リスクのある行動様式を変え、新たな文化を作っていく「食品安全文化」という考え方を提唱している。企業や組織が主体となって食品安全に関するプランを立て、実行、検証していくことで、人々が無意識にとっていた行動様式が変わり、文化が作られていく。それを可能にするのが、技術とコミュニケーションだ。デジタルツールの活用とチーム内での連携といった、いわばハードサイエンスとソフトサイエンスを両立させることが、恒久的な食品安全を実現できる唯一の方法かもしれない。
◆精密な実験・検証も行われるラボ
セミナーの後には、ネオジェンジャパン社のラボの公開、見学の時間が設けられた。同社の製品を新しく、あるいは初めて使用するクライアントに対し、正しく製品を使えるようトレーニングをしたり、どのような結果が得られるかを検証したりする場所だ。社内には全部で3室のラボがあり、特定のメンバーのみ入室できる、病原菌を扱うレベルの部屋もあるという。その他、同社セミナールームでの座学や実技によるトレーニング、クライアントの検査室に赴いてのレクチャーも行っているというネオジェン社。誰もが安心して食事を楽しめる未来に向けて、技術の研鑽と支援を惜しまない。