【約600棟を徹底調査】オフィスビルのトレンドと街の未来が見えてくる!オフィス坪単価マップ [2023年度 首都圏版]

本稿は、株式会社ヒトカラメディア・木幡大地氏による寄稿記事です。

スタートアップ企業のオフィスづくりにおいて重要な要素の一つとなるのが“場所選び”。今回は、オフィスビル事情に詳しい木幡氏に、首都圏エリアの坪単価についてご寄稿いただきました。

『オフィス坪単価マップ』最新版が公開

“リアルな相場がわかる! 狙い目のエリアが見えてくる!”と、毎年好評をいただいているヒトカラメディア名物の『オフィス坪単価マップ』。今年度も最新のMAPを完成させました!

オフィスビル市場において、この1年どんな動きがあったのか?これから移転するにはどこがオススメ?など、独自に調査・分析し作成した最新MAPをもとに詳しく解説していきます。

“ビルマニア”が手掛ける『オフィス坪単価マップ』とは?

東京だけでも数多あるオフィスビルですが、僕はオフィスビルがとにかく好きで、今までたくさんのビルを見てきました。

長年に渡って賃料やスペックを頭に叩き込み続けた結果、オフィスビルの外観を見ればだいたいの賃料や面積が分かるようになり、名刺を交換しても、入居ビルの名前から賃料や面積がわかるようになりました。そして、そんなふうに偏愛的能力を高めていったところ、気付けば巷では“ビルマニア”と呼ばれるようになっていました。

今回、最新版をお届けする『オフィス坪単価マップ』ですが、最初に僕が作ったのは2018年頃でした。日々最前線でオフィス情報に触れている中で、世に出ている家賃相場に対して「なんか高いな…。コレ、実際に成約した時の賃料なのか…?」と疑問を持ったのがきっかけでした。

エリアについても、区ごとに相場を紹介しているものが多かったのですが、区で分けてしまうと同じ区内で高い/安いの差が大きく出てしまうので、そこにも違和感を感じていました。「本当にリアルで役に立つ坪単価が知りたい!」と思い、自ら調査してMAPに落とし込むことにしたのです。

私が作る『オフィス坪単価マップ』は以下のような特長があります。

  • 家賃相場は、募集時の賃料(=定価)ではなく、成約時に近い賃料にて算出
    →実情に沿ったリアルな相場を知ることができる
  • 紹介エリアは、区ごとではなく移転先の検討時によく挙がるエリアで括る
    →比較検討しやすい
  • 主要ビジネスエリア以外も含む
    →さまざまなエリアを見て選択肢の幅を広げることができる

次の移転を見据え早めの予算シュミレーションをしたり、他の相場を知ることで選択肢を広げたり、このマップは移転にまつわるさまざまな場面できっと役に立つと思います。

今年度のマップについて、ここから詳しく解説していきますので、ぜひ他のエリアの相場や最新情報にも注目しながらご覧ください。

全体的には大きな変化はなかったが・・・


こちらが、2023年度版となる最新の坪単価マップです。まず全体としては、予想していたよりも大きな変化がなかったな、というのが所感です。2021年から新しいビルの竣工が続いていますが、そのビルの賃料が軒並み非常に高いんですね。

そうすると、その周辺のビルも影響を受けて相場が上がりがちなのですが、結果としてはそこまで大きな影響はなかったようです。というわけで、全体の相場感に極端な変動はなかったので、試しに築年数を基準として「2000年未満の竣工」と「2000年以降の竣工」で坪単価を算出して比較してみたんですね。それが次のマップです。すると、いくつかわかってきたことがありました。

狙い目物件は、竣工ラッシュエリアにあり!?


先ほども触れたように、ここ数年新しいビルがたくさん建って、それらはすごく高い賃料を設定しています。なので、2000年以降に竣工されたビルの坪単価は当然ながらどこも高くなっています。

そこで、ちょっと注意して見て欲しいのは2000年未満に竣工されたビルです。1年前と比べてみると、ほとんどの物件の賃料が下がっているんです。ひとつのエリアにキレイな新築ビルが経つと、古いビルはスペックやグレードが新築に劣るので、賃料を下げざるを得なくなり下げる…というのが理由だと思われます。

つまり、新しいビルができているエリアで、2000年未満に竣工されたものだと、割ときれいなのに賃料は安めの優良物件に出会える可能性が高いということです。それが現時点の“超狙い目”だと僕はこのマップを見て思いました。

[注目エリア] その1:渋谷


そういった観点で言うと、実はいま意外と渋谷が良いのでは?というのが、僕のひとつの見解です。以前だと「あんなに高い渋谷なんて…」と思われていましたが、渋谷の最安賃料を調べてみると、コロナ直前までは坪30,000円超えが当たり前だったのが2万円台前半(23,000円)で出ている物件もあります(実際はそこからさらに交渉できる可能性もある)。

渋谷で23,000円があるのか!と驚きますし、原宿では18,000円、表参道で21,000円もある…という現状を踏まえると、「渋谷近辺は実はめちゃくちゃ良いのでは?」というのが見えてきました。

[注目エリア] その2:虎ノ門・神谷

次に触れておきたいのは虎ノ門・神谷町あたりのエリアです。ここは今、開発が著しく、街自体が猛スピードで変わっているところです。

数年前に虎ノ門ヒルズが出来て、その後も新しいビルがどんどん出来ていて、東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」に直結する「虎ノ門ヒルズステーションタワー」が今夏に、ヘザウィッグ・スタジオがデザインの一部を手掛けるということで注目を集めている麻布台ヒルズは今秋に竣工します。それによって街の価値がぐんぐん上がっていっているところですね。


神谷町というと外資系の企業ばかりが集まっているイメージでしたが、新しいビルがどんどんできたことで日系の普通の企業も増えてきて、昔と比べると企業の属性にバリエーションが出てきたように思います。

これは今後の話になりますが、森ビルがまたとんでもなく大きなビルの計画を進めているという噂も入ってきていますし、このエリアは街全体がここからもっと変わっていくんだろうな、というふうに見ています。

[注目エリア] その3:神田・秋葉原・岩本町

もうひとつ触れておきたいのは、神田・秋葉原でしょうか。秋葉原の坪単価を2000年以降に竣工したビルで見てみると、ハイグレードオフィスの空室が増えて1年前から4000円も上がっていてちょっと高く感じました。一方、2000年未満の物件は坪1万円台が増え、1年前から1000円ほど下がっているので、お得感はすごくあると思います。

秋葉原の周辺でいうと、ヒトカラメディアが数年前から注目していた岩本町の動向もやはり気になるところですね。岩本町は神田と秋葉原の間にあり、アクセスもすごく良いのにもかかわらず坪単価は安いからめちゃくちゃええやん!とずっと思っていたんですが、今回のデータを見てみると、神田・秋葉原の坪単価が岩本町のそれに近づいている。神田・秋葉原の最安値が12,000円で岩本町も16,000円だったりするので、掘り出し物はあるかと思います。

[注目エリア] その4:五反田

スタートアップやベンチャー企業がたくさん集まり、「五反田バレー」とも呼ばれ注目されていた五反田は、築浅の物件がちょこちょこ増えたことにより、2000年以降の竣工で見ると去年と比べてけっこう坪単価が上がっています。でも、以前と比べると空きは少し増えている印象で、トータルで見るとそこまで大きく変わっていないようです。

人気も下がっているわけでもないし、今まで以上に盛り上がっているわけでもなく、すごく順当というか、安定感が出てきたのが今の五反田だと思います。

これは僕が把握している情報なので、すべてに当てはまるわけでないのですが、五反田の企業は、事業の伸びが跳ねる時は一気に跳ねる印象があります。そこから、オフィスを拡張してデカいビルに行くぞ!となるわけですが、五反田には300坪を超えるようなビルがほとんどなく、隣の大崎を見てみたら意外と安い。駅前立地で広いワンフロアが取れる。となって大崎へ移転、というケースがけっこうあります。大崎が良いかどうかは置いておいて、山手線駅なのに坪単価2万円を切る物件もありますからね。

五反田についてはもう一点、新築ビルの竣工ラッシュも気になるところです。

五反田といえば…のTOCビルは老朽化で建て壊しになり、地上30階、床面積は1.58倍の高層ビルに生まれ変わる予定です。それから、TOCと五反田駅の間くらいにあるユーフォートも建て替えで、1フロア1000坪で小割り区画やスタートアップ向けのシェアオフィスのあるオフィスビルになります。

星野リゾートが運営するホテルも今年五反田にできる予定です。そういった意味で、五反田バレーと呼ばれていた時から別のフェーズに入り、今後また違う街になっていくかもしれないですね。

“木幡の坪単価予報”。今後の価格動向は?

今後ですが、渋谷はまた上がっていくと思っています。渋谷の中でも特に桜丘町あたりですね。「渋谷サクラステージ SHIBUYAタワー」というドでかいビルが竣工する予定で、そこに大企業が移ってくるのと、関連する企業も近くに集まってくる。そうすると渋谷の空きが少なくなり、残っているビルは必然的に高くなっていきます。第2の渋谷バトルは必至になりそうですね。

また、今回お話しした2000年未満に竣工されたビルは、おそらく来年以降も徐々に下がってくると思いますので、引き続き注視してその中でも良い物件を掘っていきたいなと思っているところです。

※この記事は、ヒトカラメディア公式ブログ内で執筆した「オフィスビルのトレンドと街の未来が見えてくる! オフィス坪単価マップ [2023年度 首都圏版]」を加筆・修正したものです。

<著者プロフィール>
木幡大地(こはた・だいち)
株式会社ヒトカラメディア ワークデザイン事業部 事業部長

1987年生まれ、東京生まれ東京育ち。現在神奈川県某海のそばに在住。新卒から一貫してオフィスビルの仲介営業を従事。2015年2月にヒトカラにジョイン。東京よりも自然が大好きで、今は海と自然豊かな環境に囲まれながら働くと暮らすをもっとオモシロクするために日々楽しんで生きてます。「暮らす」が豊かだと「働く」も豊かになる。夏と海とビールとBBQと家族が大好き。

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