アドラー心理学第一人者の著者が伝える、母娘関係の問題を改善するためのヒント
一時期、大きな話題となった「毒親」という言葉。子どもに対して支配的で悪影響をおよぼす親のことを言います。また、ここ最近では「子どもは親を選べない」という考え方を指す「親ガチャ」という言葉も流行りました。
どちらも子ども目線からの言葉であり、毒親などに関する本は巷で数多く出版されています。いっぽうで、まだ多くないのが「子育てにしくじってしまった親のための本」。『娘が理解できません』は、大人になった娘との関係に行き詰まりを感じているお母さんのための本です。著者はアドラー心理学の第一人者として、40年間でのべ20万人以上に講演・研修カウンセリングを実施してきた岩井俊憲氏。「未来志向の心理学」と言われるアドラー心理学に基づき、過去の原因追及やダメ出しをするのではなく、現状に目を向け、改善していくための思考を同書では学ぶことができます。
たとえば、母娘の関係がこじれている場合、「無理して関係修復する必要はない」という考え方もあるでしょう。けれど、「こじれてしまった親子関係は、和解して、折り合いをつけられるようになっていくのが理想」(同書より)だというのが岩井氏の考えです。世の中に完璧な親などいないもの。だからこそ、もしも今までよくない関わり方をしてしまっていたのならば、まずはそれを受け入れ、そこから「これから何ができるか」という視点を持って行動を変えていく。そうすれば、子どもとの関係性も自然と変わっていくと岩井氏は記します。とても大変な作業に感じますが、「しくじったときは謝って、ただ直していくだけでいい」(同書より)と考えれば、少し気持ちが軽くなる人もいるのではないでしょうか。
もちろん、なかには関係がこじれすぎていて和解が叶わないこともあります。同書5章「母と娘のQ&A」で紹介されているのが、「娘と距離が生まれて寂しく思っています。娘のしあわせをただただ願っているということを、どう伝えればいいでしょうか?」という相談。これについて、「しあわせは主観的なもの。親が決めるものではありません。そう考えると、『娘のしあわせを願っていることを伝えたい』という思いも、娘の側からすると、余計なお世話かもしれません」と岩井氏は回答します。もし和解や折り合いがつかなかったとしても、子どもが自分で選んだ道を自分なりに歩んでいるのであれば、それはかならずしも不幸なことではありません。どんな形であっても子どもの成長を見守ること、そして自分のしあわせに気持ちをフォーカスすることも、親子関係においては大切なのだと考えさせられます。
岩井氏自身の体験や豊富なカウンセリング事例に基づいた、親子関係のヒントが満載の同書。お互いを責めたり、負の気持ちを持ち続けたりすることから卒業したい人にとっては、きっと気づきの多い一冊ではないでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
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