サブスクサービスへの継続的な意向の強さが明らかに Zuora最新版レポートを発表
サブスクリプションビジネス収益化のためのプラットフォームを提供しているZuoraが3月23日オンライン記者説明会を行った。同社は半期に一度、サブスクリプション事業を展開する500以上の企業(以下、SEI企業)を対象に調査した「Subscription Economy Index(SEI)レポート」を発表している。今回の記者説明会では、同社が主催するシンクタンクSubscribed InstituteのAPAC議長であるニック・シェリエ(Nick Cherrier)氏が2022年最新データを発表した。
今回のレポートではSEIのサブスクリプション企業が、引き続き高い成長率を継続していることが報告された。SEI企業は過去10年間でS&P500の約4.6倍の成長率を誇っている。S&P500に対して深刻な影響を与えた新型コロナウイルスもSEI企業には大きな悪影響がなかった。むしろ世界各国ではロックダウンが消費者の行動を変化させ、サブスクリプションがより注目されるようにもなったという。
一方でロックダウンが終われば消費者の行動が戻り、SEI企業の成長率が鈍化するという見通しも一部ではされていた。しかし、今回のレポートでSEI企業が2021年も衰退することなく2桁成長を継続していることが示されている。ニック氏は4半期ごとのデータを示し、SEI企業は安定した成長を続けており、ロックダウン後の鈍化という予測が否定されたと強調した。
また、サブスクリプション事業の成長には顧客の新規獲得に加えて顧客維持が重要なことから、チャーンレート(解約率)についても言及。2021年の解約率は、前年と比べて14%も改善していることが示された。解約率の低下は顧客の満足度の高さの表れでもあり、消費者の行動がコロナ禍以前に戻っても引き続きサブスクサービスを享受し続けている結果がうかがえるものだ。
続いてニック氏はAPAC地域の状況を解説。こちらも過去3年間で年平均18.6%と非常に高い成長率を誇っていることが示された。
また、業種別では、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)、メディア、製造業界について考察。
SaaSはサブスクリプションサービスの先駆けのような存在でもあり、ほかの業種と比べて洗練されたサブスクリプションのやり方を採用している、とニック氏は語った。中国とインドで中間層が台頭、中小企業にも需要が拡大するなどの要因もあり、SaaSのSEI企業は4年間で19.4%と非常に高い成長率を誇っている。
映画や本、音楽、ゲームなどのサブスクリプションサービスはロックダウンで注目され、多くの加入者を獲得した。こうしたメディア業界のSEI企業だが、依然として業績を伸ばしている。メディア業界のSEIは、2021年も11.7%とコロナ禍前より高い成長率を達成した。これは消費者がロックダウン後も解約をせず、契約を維持していることを示している。またニック氏は、従来型のメディア企業もサブスクリプションサービス事業に参入する傾向があり、今後も高い成長率を維持できる可能性が高いと分析した。
製造業界ではSEI企業とその他の企業で動向が異なった。S&P500の製造業界は2019年から20年にかけて8四半期連続で減少しているが、SEI企業は堅調な成長を見せている。製造コストの上昇により、製造業界では新たな収益の柱としてサブスクリプションサービスの可能性が模索されている。加えて電気自動車の普及が進んでいることから、自動車へのコネクテッドサービスの需要が高まり、サブスクリプション化が進むとニック氏は予想した。
最後にニック氏はサブスクリプションサービスを行う上でどの業界にも大切な3つの要素があると述べた。
1つ目は「アジリティ(俊敏性)」。変化の大きい時代の中で、素早く適応していく俊敏性がビジネスの成功につながると考えられる。2つ目は顧客を中心にサービスを考えること。商品を重視して一方通行で販売するのではなく、消費者のニーズに応じたサービスを設計し、提供していくことが必要だと説いた。3つ目は「成功は旅である」ということ。長期的に成長するためには、ビジネスの成熟に応じてその戦略を進化させていかなければいけない。データを駆使して顧客の消費体験を向上させることが長期的な成功につながるとして、記者会見を結んだ。
サブスクリプションサービスは、すでにかなりスタンダードになってきたビジネスモデルではある。ただ、コロナによる巣ごもり需要がより加速させたと言えるだろう。多くの業種でますます参入企業が増えてくると予想される。今後も業界全体の動向を注視していきたい。
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