ジェーン・スー&高橋芳朗がラブコメ映画34本を語り尽くした対談集 往年の名作から新時代の注目作品まで

ジェーン・スー&高橋芳朗がラブコメ映画34本を語り尽くした対談集 往年の名作から新時代の注目作品まで

 観る人に夢とロマンス、そしてコミカルな笑いを届けてくれる「ラブコメ映画」。恋愛、結婚、キャリア、生き方……私たちの人生に悩みごとは尽きませんが、そんなときラブコメ映画に癒やされ、救われたことがある人も多いのではないでしょうか。

 今回紹介する書籍『新しい出会いなんて期待できないんだから、誰かの恋観てリハビリするしかない:愛と教養のラブコメ映画講座』は、人気エッセイストのジェーン・スーさんと音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが、34本のラブコメ映画について語り尽くした対談+エッセイ集。

 同書のタイトルを見て「ラブコメ映画から恋愛テクニックを学ぶ本」と思われるかもしれませんが、そうではありません。同書は「ラブコメディ(もしくはロマンティック・コメディ)と呼ばれるフィールドで描かれる物語を通して、自分自身の輪郭を愛情を持ってなぞり、確かめるための本」(同書より)です。ラブコメ映画は恋愛や結婚などのロマンスをベースにしてはいるものの、同時に「自分の人生を歩む人たちの物語」であるとも言えるのです。

 それは『キューティ・ブロンド』と『プラダを着た悪魔』を取り上げた部分を読めばよくわかるかもしれません。どちらの作品にも共通しているのは、ラブコメ要素を取り入れているけれど、けっしてそこだけに比重を置いていないところ。

 同書では『キューティ・ブロンド』は「『私らしさ』を決して忘れなかった女の子の成長譚」、『プラダを着た悪魔』は「アシスタントのアンディとカリスマ編集長ミランダとの性愛が絡まないラブストーリー」としており、「2000年代のエンパワメントムービーとしては普遍的な良さがある」と評価しています。

 時代を経ても色褪せない名作があるいっぽうで、今の時代には手放しで称賛できない作品も。そのひとつとして挙げられているのが『プリティ・ウーマン』です。主役のジュリア・ロバーツが魅力的であることは称えながらも、スーさんは「女のことがすべて男の都合でしか描かれなくて愕然ともした」「中年男が年端もいかない女の子を、お金を浸かって自分好みに都合よく仕立て上げる物語はもう2020年代には絶対無理よね」(同書より)と述べています。ラブコメ映画は、自身のジェンダー感覚がアップデートされているかを判断するためのリトマス紙としても有効なのかもしれません。

 このほか、『ラブ・アクチュアリー』『恋人たちの予感』『ノッティングヒルの恋人』『ブリジット・ジョーンズの日記』といった王道作品から、『クレイジー・リッチ!』『アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング』『ロマンティックじゃない?』といった最近の作品まで、さまざまなラブコメ作品を紹介。対談で取り上げられなかった40作品は、「ラブコメ映画カタログ」として巻末に掲載されています。

 「おわりに」で、「本書はラブコメディの本来的な良さを踏まえつつ、時流に即した新しい楽しみ方を提案できていると自負しています」と記している高橋さん。同書を読めばきっと再び観たい、新たに観たいと思えるラブコメ映画に出会えることでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]

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