ネタバレ厳禁ホラー『黄龍の村』阪元裕吾監督インタビュー「“この物語で、この尺にする”理由を一番に考える」「アクションへのこだわり」

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「これ、村の決まりやから」山あいを迷った若者たちがたどり着いた見知らぬ村 かってない驚愕の体験が待ち受ける…ネタバレ厳禁のスラッシャーホラー『黄龍の村』が現在上映中です。

夜の街でキャンプに行こうと盛り上がる 8 人の若者たち。途中、携帯も繋がらない山の中で車がパンクし、助けを求め歩きトンネルを抜けると、包丁が頭に刺さった案山子がある奇妙な村「龍切村」にたどり着く。そして、その村を舞台に、狂気の集団と若者たちの想像を絶する血と惨劇の戦いの火蓋が勃発するのだが…。

弱冠25歳にして『ある用務員』、『ベイビーわるきゅーれ』ほか続々と新作が公開され、賞賛を受ける阪元裕吾監督にお話を伺いました!

ーー本作、大変楽しく拝見いたしました! お聞きしたいことはたくさんあるのですが、ネタバレ厳禁な本作なので、気をつけて質問したいと思います。まずは本作を作られたきっかけから教えていただけますでしょうか。

阪元監督:「村ホラーを作ろう」という話がまず出ました。撮影はコロナの前なので『犬鳴村』などの、村ホラーに乗っかったわけではないのですが。

大学生の頃から「やばい村に迷い込んで、老人が鎌で襲ってくる」そんな画が撮りたいなとずっと思っていました。それで「老人に猟銃で一晩中追い回される」という企画書を作って映像会社に持ち込んだりしていました。その時はあまり良い感触は得られずに実現しなかったのですが。

村の風習とかで男尊女卑がまだ残っていたりとかしますよね。映画ではそこまで(男尊女卑の描写に)長い時間が割けなかったのですが、「うち鍋つかみ禁止やねん」とか。ほんまに意味わからんルールがまだあるんだって、地方出身の女優さんから聞いたりするんですよ。そういう何の意味の無い、言ってしまえば気持ち悪いルールを新参者が壊していくという話にしたいなと思いました。最初のきっかけはそれでしたね。撮影したのがちょっと前なので、今思うと、そこらへんをもう少しねちっこく撮っても良かったかなと思っています。

ーー謎ルールの恐ろしさ、ありますよね…。そこに今どきの若者たちが乗り込んでいく、しかも所謂“リア充”的な男女が痛い目に合うという、ホラー定番の流れも「これこれ」という感じで、面白かったです。

阪元監督:そこ工夫しても仕方ないかなと思う部分もありました。山や村に行くのって、キャンプとか山登りとかがほとんどであって、そこに20,30分使ってもなという(笑)。僕が高校生の時に、男女で泊まってホラー映画を観る会というのをやったんですよ。その時に『悪魔のいけにえ』を観ていて、自分は面白いなと思って観ていたのに、「長い長い!」「はよ展開進んで」みたいに女子たちがすごく言うんですよ(笑)。『ショーン・オブ・ザ・デッド』も観たのですが、男子も「まだ〜?」みたいに文句言っていて。それが普段意識はしていないのに何か頭にあるのか、どうしても展開は早めにしようと思うんです。とっととヤバイ村行っとこ、みたいな(笑)。

ーーそういう「省くところは省く」という作り方が、66分なのにすごく濃密な展開である本作を作り上げているのかもしれませんね。普段から映画の尺(長さ)については意識されていますか?

阪元監督:今は配信もあるので、「長いからやめよ」ってすぐに飛ばされない様に意識はしています。尺って映画で一番大事じゃないですか?って思うくらい、普段から気をつけています。映画をいち観客として観ていても、140分の映画の後に、115分の面白い映画を観て「あれより25分長い理由は何?」ってすごく考えてしまう。「この物語で、この尺にする」という理由を一番に考えています。

僕の最新作『ベイビーわるきゅーれ』も85分ver.を一回作る気でいて。95分ver.も問題なく観れるよってプロデューサーに言ってもらって、自分もそう思ったので今の尺になっています。『ある用務員』は80分台の映画だなと思ったので、88分に収めています。

中学生、高校生の子にミニシアターに足を運んでもらうのってなかなか難しいと思うのですが、配信でこの尺だったら観てくれるかなという思いもあります。

ーー配信だと離脱されてしまう、という恐れがありますものね。また、この映画での縦型動画の使い方がすごく好きでした。

阪元監督:自撮りが一番顔がハッキリ映りますし、腰を据えて撮っていたら数日かかる様な素材を一気に撮れました。あのバツっ、バツっと展開が切り替わって行く感じも、YouTube的というか、POV作品だからこそ出来る演出なのかなと。

ーー「走馬灯が縦型動画」というのに本当に笑いました。

阪元監督:ありがとうございます。あれはもともと脚本に無くて、現場でこういうの入れたら面白いなと思って撮りました。ホストのROLAND(ローランド)さんが「死ぬときに走馬灯のように流れるものがスマホだけになるのは嫌だ」という様子な事をおっしゃっていて、本当その通りですし面白いなと思ったのが印象に残っているのもありました。

ーーアクションも大変素晴らしくて、痺れました。こだわりを教えていただけますか?

阪元監督:アクションに挑戦しようと思って作ったのがこの『黄龍の村』で、『ある用務員』や『ベイビーわるきゅーれ』の前なので、本当に転換期の作品です。少し前なので、今観るともう少しこうしたかった、という部分もありつつも、良いなと思う部分もたくさんあって。ラストの一ノ瀬ワタルさんVS.アベンジャーズみたいなアクションシーンは、今観ても全然見劣りしないなと思っています。

特に一ノ瀬さんの圧がすごくて。練習でも同じ迫力でやってくださっています。本当にただ避けてるだけ、っていうカットもあるくらいです。一ノ瀬さんって『宮本から君へ』で役作りのために30kg増量したり、お芝居に対するアプローチが素晴らしいなと思っていたのでご一緒出来て本当に光栄でした。

ーー一ノ瀬ワタルさんの圧倒的な強さがあり、それに対峙するキャラクターたちの本気のバトルがカッコ良いですよね。

阪元監督:ハリウッドのアクションは型が決まっていて見世物的な側面があると。でも自分は殺し合い、ヒリヒリする様な圧を感じるアクション、バトルが好きで、映画の中でもそこは心がけています。この映画の後に自主制作で作った『最強殺し屋伝説国岡』という映画でも、本気のしばき合いを撮っていて、そういう本気の戦闘に実際に感情が乗ってくるというのが、一番良い芝居なのかなあと。本作でも皆、一ノ瀬ワタルさんを本当に倒さなきゃ!という感じでやってくれていたので。

ーー監督がアクションを好きになったきっかけってあるのでしょうか?

阪元監督:映画でいうと『ザ・レイド』ですかね。人ってこんな事出来るんやな、とか人にはこんなすごい力があるんだ!って、驚いたり感動したりすることが映画の原点だと思うんです。ミュージカルだったら、人ってこんなに綺麗な歌声が出せるんだ、とか。人間のすごいフィジカルをカメラに収めるのが映画の魅力かなと。その中で一番アクションが自分に合っていたんだと思います。「一ノ瀬さんってこんなに強いんだ、とか伊澤彩織さんだったら、スタントマンが本気でアクションしたらこんなにカッコいいんだ!」とか。

ーーなるほど、人間の能力が最大に出された作品というか!同じく大ヒット上映中の『ベイビーわるきゅーれ』もアクションのカッコ良さが大変話題ですよね。

阪元監督:『ベイビーわるきゅーれ』も好評で嬉しくて、ああいう楽しくてさっぱりした映画を皆観たかったのかなと思います。本作も村ホラーでありながら、さっぱりしているので、同じく楽しんでもらえるのではないかなと思います。

ーー監督の次回作を早くも楽しみにしているのですが、もう構想はありますか?

阪元監督:今企画書が3つくらい動いていて、どれか撮れればという感じです。ブルース・ウィリス主演の『デス・ウィッシュ』という映画を観て、「自分はこういう映画を日本でたくさん撮っていこう」と考えて。現実離れしていない設定の中で、

日本映画ってどうしても、漫画原作でファンタジーで、自分が見ると予算にあっていないスケールの作品が多い様に感じるんですね。それよりも『デス・ウィッシュ』くらいの規模の作品をたくさん作れたらもっと変わっていくのかなという。だから僕は企画をサボらずに、面白い映画作りを続けていきたいなと思っています。

ーー次回作も本当に楽しみにしております!今日は素敵なお話をどうもありがとうございました。

(C)2021「黄龍の村」製作委員会

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藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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