コロナ下の在宅ワークや巣ごもりで電力消費量はどう変化したか
旭化成ホームズでは、自社が提供したヘーベルハウスに設置したHEMS端末を介して、建て主(一戸建て約2000棟)の電力消費量傾向の調査を実施し、それを解析した。その結果を見ると、コロナ禍の行動変容により、あきらかに電気の使われ方が変わったことが分かる。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析/旭化成ホームズ
コロナ禍の行動変容で電力消費量が増加。特に2021年の正月で顕著
東京に初めて緊急事態宣言が発出されたのが、2020年4月7日のこと。当時の安倍総理大臣が要請して、全国の小中高が3月2日から春休みまで臨時休校になり、小池都知事などが不要不急の外出自粛を求めたうえでの緊急事態宣言だった。
旭化成ホームズの解析結果によると、2019年度(2019年4月~2020年3月)と感染拡大期に入った2020年度(2020年4月~2021年3月)の年間積算電力消費量を比較してみると、2020年度の年間の電力消費量は前年度より9.7%増加していた。
さらに、月ごとに電力消費量を比べてみると、前年同月より大きく消費量が伸びているのが、2021年1月と2020年8月だ。詳しく見ていくと、学校が休校になった2020年3月から電力消費量が増加し始め、旅行や帰省の自粛を促した8月には一段と増加した。一方で、GoToトラベルを実施した10月~12月には電力消費量の伸びが鈍化したものの、感染者の増加によりGoToトラベルは12月28日から停止となり、年末年始は自宅で過ごそうと自粛が呼びかけられ、電力消費量も一気に増加した。
出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載
同社が2020年と2021年の正月の過ごし方を調査したところ、2021年の正月は「出かけることはせず、自宅で過ごした」人が、前年の31.5%から72.0%に倍増し、帰省や旅行をした人が減ったことが分かる。この結果からも、巣ごもりの生活と電力消費量に深い関係があることがうかがえる。
出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載
コロナ禍で一日の生活スタイルも変化。特に2020年で顕著
コロナ禍の行動変容は、一日の生活スタイルにも影響している。
同社が2019年~2021年の3年間の4月の時間帯別電力消費量を比較しているが、同じコロナ禍でも2020年と2021年では違いも見られる。在宅勤務に関する多くの調査結果では、初めての緊急事態宣言中が最も在宅勤務の比率が高い傾向が見られたが、同社の調査でも、仕事をしている夫も妻も、2020年の4月・5月が最も在宅勤務の実施率が高くなっていた。
こうした影響もあって、2020年4月では朝の電力消費のピークが後ろにずれているが、2021年4月では2019年並みに戻っている。また、在宅勤務やオンライン学習の普及などで、2020年の昼食時と夕食時の電力消費量は大きく増加したが、2021年は2020年ほどの消費量には至っていない。ただし、2020年・2021年の夕食時のピークが2019年4月より1時間ほど前倒しになる傾向は変わらず、定着したことも分かる。
出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載
世の中の雰囲気も、電力消費量に影響か?
解析結果を詳しく見ていくと、コロナ禍において、緊急事態宣言や休校要請、GoToキャンペーンなどの施策が人の動きに大きな影響を与え、それによって勤務先の在宅ワークなどの推奨や外出自粛などで各人の生活スタイルに変化が生じていることが、電力消費量からも分かる。
とはいえ、感染者数が2020年より増加している2021年4月時点で、電力消費量は2019年水準に戻りつつあった。いわゆる“自粛疲れ”が指摘されて久しいが、こうした世の中全体の雰囲気といったものの影響も大きいと思われる。
いままた、新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の影響で感染者が爆発的に増え続けている。2021年の夏も旅行や帰省の自粛が求められているが、東京2020のオリンピック・パラリンピックが開催され、外出自粛が薄れている懸念もある。この夏の人の動き次第で、電気消費量にも影響を与えることだろう。
さて、在宅ワークで家庭の電力消費量が増加し、家計の支出が増加することになる。在宅ワークが増えれば、その分オフィスの電力消費量は減少するので、将来的には勤務先が電力手当を支給するという時代が来るのかもしれない。
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