ザブングルが解散、松尾さんのキャリアチェンジに共感の声が続々。40代は転職のターニングポイントとなる?
お笑いコンビ「ザブングル」が2021年3月末をもって解散することを発表し、松尾陽介さんは芸能活動からの引退を表明しました。
「週刊女性PRIME」のインタビュー記事で 、松尾さんは40代半ばという年齢での決断について「10年前なら引退は早すぎるけど、10年後なら遅いと思った」と語っており、ネット上では「40代って人生の後半を考える時期」「自分も同年代、このまま10年た経つと後悔しそう」など、松尾さんのキャリアチェンジに多くの共感の声が寄せられています。
20代・30代の頃と比べて、いざ転職となると二の足を踏む一方、コロナ禍で厳しさを増す社会情勢を目の当たりにし、「このまま今の会社にいて安泰といえるのか」という気持ちを抱く人も少なくないようです。
40代の転職市場の実情をはじめ、キャリアチェンジを成功させるために心得ておきたいことを、転職エージェントとして多くのミドル世代の転職を支援してきた岩泉匡洋さんに聞きました。
40代の転職事例はここ数年で増加傾向に。どんな職場でも必要とされる「ポータブルスキル」を磨くことで、未経験業界でも活躍できるチャンスは大いにあり
Q:40代で転職する人は以前昔に比べて増えているのでしょうか? 転職を希望する人の背景にあるものとは?
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ここ数年で40代の転職件数は増加し、「転職は35歳まで」といった年齢の壁は崩れつつあります。
その大きな理由の一つが「人手不足」。総務省の調査によると、20歳~34歳の人口は2000年時点で約2700万人だったのが、2020年には約1920万人 となっており、この20年間で800万人近く減少しています。
コロナ禍で一時的に採用を見合わせている業種もありますが、中長期的に見れば人手不足は継続的な課題。多様な人材を生かすダイバーシティ経営は企業の生き残りに必須であり、年齢の幅を広げて採用活動を行う企業が増えています。
もう一つは「終身雇用の崩壊」。事業所の閉鎖などによる希望退職や解雇で、転職を余儀なくされるミドル世代が増えたことも要因といえるでしょう。
転職のきっかけは、現状の仕事への不安・不満などのほか、ミドル世代ならではの理由として次のようなケースがあります。
・転勤を命じられたが、子どもの学校事情や親の介護などがあり、家族との生活を優先。
・社長や役員が変わり、会社の方針と自分の理念が合わなくなった。
・社内の動きや業績から経営不振を早めに察知した。
キャリアを積み、40代である程度のポジションにいるからこそ、世の中の動きに敏感で先が見通せる。それまで仕事に大きな不満がなかった人でも、何かのきっかけで「このまま会社に残る方がリスクだ」と判断し、転職へと舵を切ることが少なくないのです。
Q:採用企業側から40代はどのようなスキルが求められるのでしょうか? 異業種への転職は難しいのでしょうか?
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一般的に40代はリーダーや管理職の経験、専門スキルの高さなどが求められ、採用時のハードルは上がります。
ですが、全くの異業種でも、例えば「メーカー営業職」から「商社営業職」など、同職種なら大いにチャンスがあります。特に、地方の中小企業は実践力のある人材が不足しており、事業拡大期とミドル層のキャリアがマッチングすることも珍しくありません。
なかでも、総務・経理などの管理部門は経験の豊富さが有利に働き、「いい人であれば年齢の幅を広げて採用したい」という企業は多いです。私がお手伝いした事例では、「後任を育成できる」という理由で、50代半ばで異業種企業の人事部長として迎え入れられた人もいます。
Q:では、全くの未経験の仕事の場合、40代でチャンスはあるといえるのでしょうか?
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もちろん若手に比べると、正規のルートでは厳しいのが現実ですが、チャンスがないわけではありません。
例えば、副業やインターン、ボランティアなどの形で仕事を手伝わせてもらい、経験値を積んでから転職活動に臨む。あるいは、その職場での働きぶりが評価され、正規採用の声がかかる可能性もあります。
また、中小企業の場合はトップとの距離が近く、社長と価値観や理念が合う、つまり「ウマが合う」ことで、未経験の仕事でも採用されるケースがあります。経験のある業種・職種にこだわるより、制約を設けないことで、新たな活躍の場を見つけられる可能性もあるといえます。
Q:40代でのキャリアチェンジを成功させるために、心得ておきたいことは?
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キャリアチェンジの過程では、「選考」と「雇用」、この2つのフェーズを分けて捉える必要があります。
まず、「選考」に臨む際ですが、転職ですべての希望条件を満たすのは難しいと覚悟し、優先順位を決めることです。年収や通勤時間、休日などの条件を厳しく設定し過ぎると、いい職場との縁を逃す可能性もあります。
少ないポジションを狙う40代は、チャンスを逃さない瞬発力も大切です。「面接に行く時間がない」と言っているうちに、いい求人案件は他の候補者に決まってしまいます。
採用の決め手を語る上では、コミュニケーション力も欠かせません。採用側は、どんなにスキルが高くても、社風に合わない人、対人面で問題がありそうな人は避けたいと考えており、「一緒に働きたい」と思われるかどうかが分かれ目といえます。
そして、「雇用」のフェーズです。組織で力を発揮するために必要とされるのが「ポータブルスキル」とよばれるものです。ポータブルスキルとは、「課題を発見する」「解決策を立案し、実行し抜く」「社内外で人間関係を構築する」といった、どんな仕事でも求められる力で、詳細は厚生労働省のホームページHPでも紹介されています。これらのスキルを磨いておくことは、未経験の業界にチャレンジする上でも武器になるといえるでしょう。
また、ポータブルスキルを発揮するためには、「自分に合った組織体」であることも極めて重要です。
今までに勤務した組織の風土や特徴を振り返り、「計画通りに進める仕事より、臨機応変に対応する仕事の方が力を発揮できた」「年功序列よりもフラットな職場環境がいい」など、自己分析を深めておくことでミスマッチが防げます。
会社の理念と自分の価値観が合うか、面接時の会話や、社内の雰囲気などからもしっかり見極めましょう。少しでも〝違和感〟を覚えることがあれば、その感覚を大事にすべきです。
Q:「今すぐ転職する勇気はないけれど、将来は別の仕事をしてみたい」という人も少なくありません。今から考えておくべきこと、準備できることはありますか?
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急速に変化するビジネス環境の中、いまや「この業界にいれば安泰」という仕事はなく、変化への対応力が全てのビジネスパーソンに求められています。
転職するかに関わらず「世の中で今何が求められているのか」「自分は何がやりたいのか」ということは常に考えておきたいものです。
特に中高年は仕事の世界に埋没しがちですが、転職を考えるなら視野を広げることが大切です。
そのためには、普段の生活に「非日常」を意図的につくり出すこと。「地域のボランティアや趣味のサークル活動に参加してみる」「同窓会の幹事をやってみる」「SNSですす薦められた本を読んでみる」など、できることはたくさんあります。ネットワークが広がることで、思いもよらぬ自分のスキルの価値に気付いたり、仕事の誘いを受けたりすることもあるでしょう。インターンや副業で知人の仕事を手伝ってみるなど、「ちょっとした一歩」を踏み出すことで、転職へのハードルはぐっと下がります。
40代ともなれば、家族のことや自身の健康面など、さまざまな問題も生じます。優先すべきことを一度整理し、方向性が見えれば、目的をもってキャリアチェンジを進めることができます。その過程で「転職ではなく学び直しが必要かもしれない」「雇用されるより起業が向いている気がする」など、別の道に気付くこともあるかもしれません。40代で真剣に考えてきたことが後に生きて、50代でチャンスをつかむことだってあります。
70代まで働く時代となった今、40代は折り返し地点に過ぎず、まだまだ可能性があります。ビジネスの世界では実年齢以上に、実務能力や若々しい感性、人間的魅力の方がはるかに重要です。これまで積み重ねた経験を武器に、年齢や業界の枠を超えても通用するヒューマンスキルをぜひ磨いてほしいと思います。
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