汚いコードとは何か?

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汚いコードとは何か?

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

汚いコードとは何か?

プログラミングを知らない人には、プログラマが言う「汚いコード」というものが実感できないかもしれない。それをシンプルに説明してみる。

たとえば円周率の3.14。円周率を使って円の面積を求めるプログラムが組まれているとする。3.14という数字が書かれているコードがある。

それがどうしたの?と思うかもしれない。ところがこのコードは汚いのだ。「え?なぜ?!」というのが、非プログラマの反応だろう。

もっと精度よく計算するために3.1415を使いたくなったとする。その場合、それまで3.14だったところを3.1415に修正するわけだが、プログラムが巨大になると、その箇所は膨大になる。どこかを修正し忘れたりする。

ある場所では3.14で計算し、別な箇所では3.1415で計算すると、同じになるはずの数値が同じにならない。これをバグという。

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ではどうすればいいか。プログラムのある箇所で「PI=3.14」と定義すればいい。そしてそれ以外の箇所ではPIを使い、絶対3.14という数値を使わないことに「決める」。

そうすればPI=3.14の箇所だけ「PI=3.1415」と修正すれば、全部直るわけだ。直し忘れもなくなる。

ところがある箇所ではPIを使い、別な箇所では3.14をそのまま使っていたりすると、PI=3.1415と修正した瞬間に、そのプログラムは正常には動かなくなってしまう。

つまりPIと書いてあったり、3.14と書いてあったり、はたまた別の箇所では3.141とか書いてあるプログラムは「汚い」のだ。

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3.14ぐらいコードを検索すればいいんじゃない?と思った人!たとえば6.28という数値が使われていたらどうだろう。もちろん6.28=3.14*2だ。でも3.14を検索しても6.28は見つからない。円周の計算ではこちらの数値のほうが頻繁に出てくるかもしれない。

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これを読んで多くの人は、じゃあ、ちゃんと「3.14を使わずにPIを必ず使いましょう」「6.28を使わずに(PI*2)を使いましょう」と、みんなで約束を決めて守ればいいじゃん、と思うことだろう。その通り!つまりそれが「綺麗にコードを書く」ということなのだ。

え?そんな単純なこと?と思うかもしれない。もちろん現実はこんなに単純じゃない。

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たとえばコピペ。あちこちから使えそうなコードを切り貼りして組み合わせる。確かに手間を省ける。でもあちこちから持ってくるから、ある箇所は3.14を使っていて、別な箇所は3.1415を使っていたりする。定数の定義も「PI」だったり「PIE」だったりする。

プログラムは一見動いているけれど、なんかちょっとおかしい。微妙に計算が合わない。そんな感じになる。コピペで作ったプログラムというのは、大雑把な形になるのは早いが、バグがなかなか取りきれないというのは、こういうこと。

誰かが書いた膨大なコードをちゃんとチェックして、円周率が同じ値に統一されているかを確認する作業は結構大変で、場合によっては自分で書いたほうが早いし確実ということもある。

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単純過ぎて実感がわかない?じゃあ具体例。

惨憺たる評価だった某オンラインゲーム。何かとサーバーがダウンすることで多くのユーザーの不評を買った。おそらく通信エラーの処理をしていなかったと思われる。

社内でテストした時はLANだから安定していて、通信エラーが起きなかったのだろう。でも正式リリースして世界中のPCとインターネット越しに通信するようになると、いろいろな理由で通信エラーは起きる。

通信エラーが起きることを前提にプログラムをしていないと、内部のデータが矛盾してしまい、サーバーが止まってしまう。エラー処理というのは命綱のようなもの。「なくてもとりあえず動くからいいや」と手を抜くと、必要な状況になったときに悔やんでも悔やみきれない。

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しかもエラー処理というのは、後から付け加えて済ませることができるようなしろものではない。ときどきオマケみたいに考えている人がいるけれど、実は一番複雑な部分。時には設計全体の方向性を決定づけてしまうほど。

銀行の送金で途中でエラーが起こった場合、お金がどこにもなくなってしまっては困る。かといって両方の口座に残っていても困る。送金が完全に完了するか、送金が全く行われないか、どちらかでないといけない。これはトランザクション処理といってコンピュータサイエンスの一分野。

まずエラー処理はなしである程度作って、後から付け加えようというものではないのだ。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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