おしりを洗い続けて40年。日本の誰もが知っているあの方のお名前は?
おしりをひたすら洗い続けてきた、あの方。40年洗い続けた間には、その実力を磨き、見た目も美しく姿を変えてきた。今では、あの方やそのお仲間は、日本の文化とまで言われるようになった。今回は、そんなあの方について、みっちり語ろうと思う。【今週の住活トピック】
「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」について公表/TOTO
「おしりだって、洗ってほしい。」で注目を浴びた、あの方
あの方のお名前は、そう、皆さんもよく知っている「ウォシュレット」(「ウォシュレット」はTOTOの登録商標)。
では、なぜ「ウォシュレット」というお名前になったか、ご存じだろうか?
トイレの生活文化を「拭くから洗う」に変えるこの商品のネーミングは難航したというが、「どんどん洗おう」=「レッツ・ウォシュ」、語呂が悪いから逆にして「ウォシュレット」となったという。『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』の司会をしている古舘伊知郎さんでも、ご存じないかもしれない。
「ウォシュレット」は、TOTOの登録商標なので、実は筆者はめったに、“ウォシュレット”とは書かない。記事には基本的に「温水洗浄便座」と書く。これほどたくさん「ウォシュレット」と書けるのは、この記事が「ウォシュレット」発売40周年の話だからだ。
さて、「ウォシュレット」が発売されたのは、1980年6月。その知名度を一気に上げたのは、1982年9月のテレビCMだ。当時のトップコピーライターの一人、仲畑貴志さんのコピー「おしりだって、洗ってほしい。」を個性的キャラだった戸川純さんが表現するCMは、大きな話題となった。筆者もよく覚えている。
制作裏話によれば、「ウォシュレット」の良さを伝えるため、開発担当者の一人が仲畑さんに、手に付けた絵の具を紙で拭いても落ちないが洗えば落ちることを見せて、おしりも同じと説明したところ、そのままコピーにしようとなった。当時「おしり」という言葉はマスメディアで使われることがなかったが、仲畑さんは最初の打ち合わせで社長に「おしり」を使っていいか確認したという。
紙で拭くという長く続いてきたトイレの生活習慣は、簡単に変えるのは難しいもの。特に日本では和式便所が長く使われており、TOTOの和式・洋式便器の出荷比率で洋式が和式を上回ったのが1977年というから、洋式便器が急速に普及しだしたころに、「ウォシュレット」が登場したわけだ。
今ではトイレ事情は様変わりしている。内閣府の消費動向調査によると、2020年3月末時点の一般家庭(二人以上世帯)の温水洗浄便座の普及率は80.2%で、洗髪洗面化粧台の70.4%、システムキッチンの67.7%より広く普及している。温水洗浄便座が、今の生活に深く入り込んでいることが分かる。
40年間で機能を増やし、デザインを変えてきた、あの方
40年の間に、「おしりを洗う」機能の向上はもちろんのこと、新しい機能も増やしてきた、「ウォシュレット」。例えば、使用中から使用後のしばらくの間に臭気を吸い込む「脱臭機能」、使うときだけすばやく便座を温める瞬間暖房便座や使わない時間帯は便座の温度を下げるおまかせ節電などの「節電機能」、ノズルや便器を清潔に保つきれい除菌水(電解除菌水)による「清掃機能」など、さまざまな機能が搭載されてきた。
リリースの「ウォシュレットの歩み」で、その変遷が分かる。
(出典:TOTO「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」リリースより転載)
またデザインも、便座シート型、一体形それぞれタンクレスに対応し、コンパクトに美しいデザインへと進化を続けている。
(出典:TOTO「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」リリースより転載)
こうして日本では当たり前になってきた「温水洗浄便座」だが、高級ホテルを中心に海外にも進出している。筆者が海外で宿泊するホテルはほとんどがスタンダードクラスなので、温水洗浄便座に出会う機会がないのが残念だ。成田国際空港の国際便の到着ロビーには、「experience TOTO」という、来日客に体験してもらうIoTを活用した最先端のトイレ空間があるというので、筆者も一度利用してみたいものだ。
さて、かつてトイレは、「ご不浄」や「はばかり」ともいわれた。不浄だったり、人目をはばかる場所だったりしたわけだ。今のトイレは、そんなイメージを払拭するほどの快適さや清潔さがある。一日に何度となく利用するものだけに、今後もさらに進化を遂げていくのだろう。
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