気楽なカオス。
この記事はKenさんのブログ『Tokyo Life』からご寄稿いただきました。
気楽なカオス。
雲ひとつない土曜の昼下がり、知人の家のベランダで緑の庭を眺めながら、スウェーデン人のおばさんが「このアフリカのような途上国のカオスが、時々恋しくなるのよね。」とおっしゃる。
そうかも。たしかに、思ったように物事は進まないし、何事も雑だし、トホホなことも多い。しかしその分、うるさい規則やタブーが少ないとでも言いましょうか。
自己責任の部分が大きい、というか、自分で解決しないとどうにもならないことが多い。店や、業者や、役所に文句を言っても埒があかないっていうことも多くて、自分でなんとか片付けなきゃならない。だから少なくともサバイバル英語くらいはできないとキツい。
お金で解決しないと仕方ないこともある。電気や水がちゃんと供給されないなら、電力会社や水道局に頼らず自分でその手当をする羽目になったりするし、どうしても必要なものは海外からお取り寄せしないといけなかったりするし。
それでも、です。穴だらけの社会ゆえの気楽さがある。先進国の人間、特に北欧や日本みたいにきっちりした社会から来ると、途上国の暮らしはストレスが多い。でも、そのストレスは日本にいる時に感じるストレスとは別物です。もっと直接的と言いますか、サービスがちゃんとしてないとか、電気や水や物資の供給が安定しないとか、そういうもの。で、それを処理する術を見出せば、そしてある程度は「そんなもんか」と諦観できるようになれば、実はけっこう気楽だったりする。
たとえて言えば、自動車道が整備された先進国では「交通ルールをちゃんと守らないといけない」ということがストレスだとすると、アフリカのような途上国のストレスは「道路の穴に落ちたら大変だよ」ってところです。そして、穴に落ちても自己責任だからね、っていう感じ。その代わり、交通ルールの遵守は少々いい加減でもよい。
そこにずっと住めといわれたら困る。足りない物は多いし、なんといってもケガや病気をしたら、この物事の進まなさはシャレにならない。平均寿命が日本よりずっと短いのにはそれなりに理由がある社会なわけだし。 しかし、スウェーデンなり、日本なりの生活を知っている上で、そこで生活する選択肢を留保した上で、アフリカのような途上国のカオスの中に気楽さを見出すっていうのは、そのとおりだなぁと、そのおばさんのつぶやきを聞いて納得したのでした。
* * *
そして、そのスウェーデンのおばさんと話したのは、自殺が多いのは「きっちりした社会」の方だよね、ということでした。
そのおばさんや私のように、みんながみんな「カオスが恋しい」という感覚が共有できるとは思えないし、今、自殺するほどに悩んでいる人に「途上国暮らしは気楽だよ」って言っても何の解決にもならないとは思います。でも、世界は広くて、もっといい加減な社会もあるんだよっていうのは知っておいて損はないなぁと思う次第でございます。
執筆: この記事はKenさんのブログ『Tokyo Life』からご寄稿いただきました。
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