【調査部レポート:SNS 第3回】SNSはウェブのOSになるか

facebook上のアプリケーション

Facebook上のアプリケーション

2008年11月27日、『mixi』は来春以降のサービス展開について発表。登録制の導入と年齢制限の引き下げ(18歳→15歳/12月より)を行う。さらに『mixi platform』をオープン化し、『mixi connect』を正式公開するという。

mixi platformの開放によって、サードパーティの開発者はmixi内のサービスやアプリケーションの開発に参加することが可能になる。また、mixi connect はmixiのデータを外部に持ち出してサービスやアプリケーションを開発できる仕組みだ。この動きを受けて、いよいよ日本でもSNSのオープン化が一気に加速しそうだ。

SNSのオープン化については大きく分けて二つの動きがある。一つは、SNS上のアプリケーションを開発するプラットフォームの共通化。そしてもう一つは、SNS機能やユーザー情報を非SNSサイト上に組み込む「データポータビリティ」に関する動きだ。いずれの動きも、Googleが主導する形で『Facebook』以外の大手SNSを巻き込んで進められている(バックナンバー:第1回 / 第2回)。


 
■SNSアプリ開発に共通のプラットフォームを
2007年11月、GoogleはSNS向けのアプリケーションを開発する際の共通プラットフォーム(API) 『OpenSocial』を発表した。OpenSocialには、Facebookをのぞく主だったSNSが相次いで参加。現在のパートナーは75にものぼる。日本からはmixiも名を連ねており、来春に正式版がリリースがされる予定の『mixi platform』も、OpenSocialに準拠したプラットフォームだ。

OpenSocialを習得すると、開発者はすべてのOpenSocial対応サイト上で動くアプリケーションを作ることができるだけでなく、そのネットワーク利用して幅広く発表することができるという。OpenSocialの発表から1年が過ぎて、今では1000以上のアプリケーションが開発され、すでに利用されている。

開発者向けのチュートリアルビデオ(英語)
OpenSocial Tutorial – Part 1: Gadget Basics

OpenSocialに参加しないFacebookは、2007年5月に独自のAPI『Facebook プラットフォーム』を発表、1年後にはオープンソース化されている。現在までに4万8000以上のアプリケーションが作られている。さらに2008年11月には、Facebookは公認アプリケーション計画(Verified App Program)を発表。Facebookの公認アプリケーションに申請して認められれば、Facebookアプリケーションのディレクトリに特別な場所と公認バッヂがもらえるという。(※公認アプリに認定されると一年間375ドルをFacebookに支払う)

SNSアプリケーション開発のプラットフォームが共通化されたことで、開発者の負担は軽減され、作られたアプリケーションは多くのユーザーが集まるSNS上に発表の場を持つことができるようになる。SNSサービスを運営する側としても、アプリケーション開発にかかる社内コストを抑えられるというメリットがあるのだ。
 
 
■データポータビリティの充実
2008年5月初旬、MySpaceが『Data Availabilityイニシアティブ』を、Facebookは『Facebook Connect』を発表したことを皮切りに、SNSユーザーの情報をサイトの外へ持ち出すことができる「データポータビリティ」に向けた取り組みが始まった。

さらに、Googleは『Friend Connect』を発表。パートナーサイトのSNS機能を、既存のウェブサイト上に付加することを可能にした。Friend Connectには、Facebook、『Google Talk』、『Orkut』、『LinkedIn』、『Plaxo』、『hi5』がパートナーとして参加している。2008年12月15日には『Twitter』の参加も発表されている。

データポータビリティによって、情報とユーザーコミュニティの連携は強まり、ユーザーはより効率的にウェブを利用することができるという。たとえば好きなミュージシャンの情報を知りたいユーザーは、ミュージシャンのウェブサイトとSNS上のファン・コミュニティを行ったり来たりしなくて済む、というわけだ。

FriendConnect 意外にかんたんそう

FriendConnect 意外にかんたんそう

実際にFriendConnectが使われているサイト

実際にFriendConnectが使われているサイト

国内では12月4日、来春のmixi connect正式公開前の実験的活用として、ソニーのウィジェットサービス『FLO:Q(フローク)』から『mixichecker』をリリースした。mixi checkerは、日記への新着コメント、友人の新着日記や足跡などをデスクトップで確認することができるウィジェットだ。

mixi connectを活用したmixi checker @FLO:Q

mixi connectを活用したmixi checker @FLO:Q


 
 
■あらゆるサイトはSNSになる?
招待制のmixiが主流だった日本のSNSユーザーにとっては、「SNSのオープン化」と言われてもいまいちピンと来ないかもしれない。しかし、登録制のSNSがほとんどである海外のSNSユーザーは、そう違和感なく既存のウェブ上にSNS機能を追加して利用しはじめている。来春のmixi connectの正式公開以降は、日本でもSNSのオープン化が一気に進み、日本のSNS環境も大きな変化を迎えることになる。

SNSのオープン化が進み、あらゆるウェブサイトにSNS機能が追加されていくようになれば、「どのSNSで、どの程度自分の情報を公開するか」は問題ではなくなる。ユーザー情報は今ログインしているアカウントに紐付けられ、ユーザーは、コミュニティや知り合ったユーザーごとに「自分の情報をどの程度公開するか」を決め、相手に合わせて「つきあいかた」を変化させることになるだろう。

ウェブ上のコミュニケーションがより細やかになり、現実世界での「つきあいかた」に近くなっていくにつれて、コミュニティもより属性や性質の似通ったユーザーで構成されたニッチでリアルなものになる。ニッチでリアルなコミュニティは、非常に価値の高い広告ターゲットになるだろう。

SNSはネットユーザーを詳細にカテゴライズすることで、ウェブ上の情報も再構成されていく。近い将来、SNSというサービスはユーザーを軸にウェブ全体を構成する、ウェブ上のOSとして機能することになるのかもしれない。(終)
 
 
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Kyoko Sugimoto

京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。

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