能力があっても、発揮する「機会」がない。そこを何とかしたかった|大島伸矢さん(一般社団法人スポーツ能力発見協会)

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能力があっても、発揮する「機会」がない。そこを何とかしたかった|大島伸矢さん(一般社団法人スポーツ能力発見協会)

プロが使う測定ツールで子どもたちの身体能力を正確に計測し、得意・不得意なスキルを共有して早く「好きで得意なこと」に出会える場を提供する測定プログラム「SOSU」。展開する一般社団法人スポーツ能力発見協会(DOSA)理事長の大島伸矢さんは、障がい者スポーツの世界でも活動を広げています。

無償で行うスポーツ能力測定会のほか、新たに設立したのが「DOSAパラエール」というアスリート支援プログラムです。長期的な視野で障がい者スポーツ振興を見据えています。これまでの成果と、現在抱えている課題についてお聞きしました。

大島 伸矢(おおしま・しんや)

1970年生まれ。学生時代はプロサッカー選手を目指したものの、ケガのため断念。大学卒業後は就職・起業を経験したのちにカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)株式会社傘下のコンサル・マーケティング企業に入社。投資先選定、新規事業立案や自治体の財務システム導入などに携わる。そのとき能力の精密測定を事業化するプランと出会い、2007年に知育面で活用する株式会社プライム・ラボを設立。2014年には体育面で活用する一般社団法人スポーツ能力発見協会(DOSA)を設立した。

能力があってもスポーツに出会う機会がない

—DOSAは参加者無料でプロが使う機材によるスポーツ能力測定会を開いています。障がい者も参加できるのですか。

はい。2016年から個々の障がいに合わせた測定メニューを整えています。測定会は毎回1000名近くの応募があります。告知には「障がい者の方も参加可能」と記載はしていますが、実際の申込者は多くて5名ほど。世の中で障がいを持つ人の割合を考えるとこの数は少なすぎます。なぜ参加できないのか、調べてみたらいろんな要因がありました。

まず「人に見られたくない、健常者が集う場所に行きたくない」という人が多数います。障がいを持った自分が見られることが嫌、家族の障がいを見られるのが嫌、だから応募をしません。障がいを知られるのが嫌で「障害者手帳」を取得しない人もいます。実際に手帳さえあればすぐに日本代表になれる能力を持つ人もいるんです。でも手帳の取得から頑なに拒まれるケースが少なくありません。

—個人的な身体や機能以外のところで多くの課題があるんですね。

彼らがスポーツや運動に触れる機会も限られます。まず障がい者は公営体育館を使用するのが難しい。多くの体育館はフロア保護のために車いすは禁止です。そのほかの理由を担当者に聞くと「安全性が担保できない」「指導者がいない」「運動したい障がい者が少ないので予算が割り振れない」とも言われます。たしかに住民の声がなければ自治体は改善できません。

しかし彼らがスポーツに出会う機会はほとんどなく、そもそも自分の身体能力でどんな運動が可能なのか、生活に手一杯で測定どころか検討も難しいというのが現状です。声を上げようにも、そのきっかけすらまだ得られていない。彼らが「まずスポーツに触れてみる」という段階から課題が山積みなんです。これはなんとかしなければと思い、とにかく自分たちができることから始めることにしました。

環境を整える経済的・人的なサポートが不可欠

—それで新たに設立したのが「DOSAパラエール」ですね。どんな活動をしているのでしょうか。

協賛企業と一般の方々から寄付を募り、集まった資金はそのままパラエールに登録しているアスリートへ均等に配分しています。現在の登録アスリートが参加している競技は、パラローイング(ボート競技)、競泳、車いすフェンシング、車いす陸上競技などがあります。

例えば車いす陸上選手は、世界ランキングを維持するために国際大会に出場しなければいけません。渡航費用のほか、交換する競技用タイヤには約30万円かかります。またパラローイングでは、障がい者向け練習場が琵琶湖にしかないため他県からの遠征費用、地元でトレーニング機材を揃える費用が必要です。アスリートによっては支援金を練習時のベビーシッター費用に充てる場合もあります。

経済的な支援のほか、身体能力を測定して競技者登録ができるよう協会とかけ合ったり、トレーニングに必要な高額機材のレンタルを手配したりするのも大事なサポート活動です。ただし、正直に言ってまだまだ資金が足りない状態です。

最終ゴールは、誰もが自由に運動できる社会

—世界に通用するアスリート育成が大島さんの目標ですか。

いえ、よく誤解されるんですが違います。もっと障がい者スポーツの裾野を広げることが僕たちのゴールです。障がい者も健常者と同じように「やりたい」と「できる」が一致する競技に早く出会えれば、十分スポーツの世界で活躍できます。もしアスリートにならなかったとしても、身体能力に合う好きな運動を見つけて自由に楽しめる社会にしたい。アスリート支援はその第一歩です。

障がいを持っているアスリートの活躍や頑張りが注目されれば、同じ障がいを持つ人は「できるかも」と自信を持てます。今ある身体能力に興味を持って測定会に来てくれるかもしれません。僕たちがそこで個々のスキル情報と可能なスポーツ名、学べる場所を提供できたら、彼らが運動を楽しむ道が生まれるはずです。その人数が増えたら公共施設のあり方も変えられるかもしれない。ポジティブな障がい者が増えればアスリートを直接支援する企業スポンサーや、一緒に働ける求人がもっと増えるかもしれません。長い道のりではありますが、これらが実現したとき喜んでくれる人たちの顔を思い浮かべると、どんな困難があっても頑張ろうと思えます。

前編はこちら

 

DOSAはリクルートキャリアと共に、「障がい者アスリート応援プロジェクト」をスタートしました。実績がなくても能力や可能性のあるパラアスリートの挑戦を後押しすべく、個々の選手が抱えるハードルを取り除くための支援を行い、世界で活躍することを目指し、強化指定選手や代表選手になるまでのあと一歩に伴走します。

「障がい者アスリート応援プロジェクト」(→)

https://www.recruitcareer.co.jp/athlete/

インタビュー・文:丘村 奈央子 撮影:平山 諭

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