ピンチをチャンスに「できる」人と「できない」人、その差とは?ーーーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

ピンチをチャンスに「できる」人と「できない」人、その差とは?ーーーーマンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』です。

『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい奥深い一言をピックアップして解説します。

©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「坂本龍馬や西郷隆盛がいてもいなくても、新しい時代はやってきた!」

(『インベスターZ』第7巻credit.57より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

徳川幕府が滅びたのは、財政破綻が原因だった

ある土曜日、財前は調べものをしに学校の図書館に行くと、途中で担任の先生に呼び止められます。雑用で一緒に塾長室に入ると、そこには道塾学園の設立者・藤田金七(かねしち)の肖像が掛けてありました。財前が金七のことについて先生に訊ねると、先生は社会担当の野々村先生を呼んでくれました。

野々村先生が言うには、金七は6歳で江戸の油商に奉公した後、17歳で藤田商店を開業。牛乳の販売に乗り出すと、明治維新後の生活の欧米化に伴い、商売は大盛況。当時、乳牛は大変な高値で取引されていました。そこで金七は輸入した乳牛を卸すことで、日本と海外との内外価格差を利用し、巨万の富を得ます。それは今で言うアービトラージ(裁定取引)という投資法でした。

野々村先生は、財前に「実は徳川幕府が倒れたのも、外国人がこのアービトラージを行ったことによって、国内の金が大量に海外に持ち出されたことが一因だった」と話します。「当時、日本の金相場が世界的に見て低く設定されているのを知った外国人が、金を買い占めてしまったからだ」と言うのです。先生は「英雄豪傑がいなくても、どのみち徳川幕府は財政破綻していた。1つの見方だけをしていたのでは、ものごとの本質は見えてこない」と教えてくれたのでした。

世の中の多くのことは、人為的には変え難い

今回のお話は、ものごとをさまざまな角度から見ることの大切さを説いたものです。歴史の教科書等では、幕末と言うと、旧態依然とした徳川幕府と理想に燃えた志士たちとの攻防戦が繰り広げられ、それに勝利した薩長の藩士たちによって明治維新の扉が開かれた、とされています。

しかしそれはミクロ的な目線から見たものであり、マクロ的な目線から見てみると、実は明治維新は起こるべくして起こったものである、というのです。通常、ピンチは同時にチャンスを伴っています。ピンチの中でチャンスをモノにするには、「時の利=トレンド」をつかむことが必須の条件となります。

本来、社会という大きな流れの中にいて、ある特定の1人が人為的にトレンドをつくり出す、というのは至難の技です。ですから実際は「トレンドを見つけ出し、それに相乗りしている」というほうが真実に近いのではないでしょうか。

©三田紀房/コルク

「因果応報を変えるには、時間が必要」

明治時代に大蔵省などを歴任した後に実業界に転じ、「日本の資本主義の父」と呼ばれるようになった企業家に、渋沢栄一氏がいます。渋沢氏は農家に生まれ、若いころ、尊王攘夷を夢見て江戸や京都をうろついているうちに、一橋慶喜公(ひとつばしよしのぶ:後の徳川15代将軍)に仕えるようになります。やがて欧節団の一員に選ばれて海外に渡った渋沢氏は、欧州の進んだ文明を目の当たりにして衝撃を受けます。

当地で見た株式会社の仕組みに感銘を受けた渋沢氏は、大蔵省を退任後、第一国立銀行(現在のみずほ銀行)を設立。生涯で設立に関わった企業は500社を超えるといわれています。氏の代表的な著作『論語と算盤』の中に、次のような言葉があります。

「すでにある事情が原因となって、ある結果を生じてしまっているのに、突然、横から現れて形勢を逆転することなど、早々あるものではない。因果の関係は容易に断ち切れるものではなく、私は、ある一定の時期に達するまでは、人力ではとうてい形勢を動かせるものではないことに思い至った。人が社会で生きていくためには、状況を静観して時期の到来を待つということも、忘れてはいけない心がけである」と。

時の利をつかめば、自分の能力以上の結果を残すことも夢ではない

それでは、どうしたらそうした趨勢やトレンドをつかむことができるのでしょうか。私からのオススメとしては、まずは自分の中で「マクロとミクロのスイッチを切り替える」訓練から始めてみてはいかがでしょうか。折りに触れて「自分の今の見方はマクロ的か?ミクロ的か?」と自問し、「反対の目線から見たらどうなのか?」と考えてみるのです。

確かに、人間1人の存在は小さく、その影響力も限られたものではあります。けれど、どんな時代にも、その時代に応じたチャンスはあるものです。そうした時の利をつかんで流れに乗れば、1人ではとうてい成し得なかったことも可能になるのではないでしょうか。

マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス 第46回

俣野成敏(またの・なるとし)

30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』および『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。

俣野成敏 公式サイト

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