残業しないチームがやっている社内データ・資料を有効活用する書類作成のススメ
『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)の著者である石川和男さん。石川さんは、建設会社総務部長・大学講師・専門学校講師・セミナー講師・税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパービジネスパーソンです。そんな石川さんに「残業しないチームがやっている社内データ・資料を活用する書類作成のコツ」についてお聞きしました。
プロフィール
石川和男(いしかわ・かずお)
建設会社総務部長、大学、専門学校講師、セミナー講師、税理士と、5つの仕事を掛け持ちするスーパーサラリーマン。大学卒業後、建設会社に入社。管理職就任時には、部下に仕事を任せられない、優先順位がつけられない、スケジュール管理ができない、ダメ上司。一念発起し、ビジネス書を年100冊読み、月1回セミナーを受講。良いコンテンツを取り入れ実践することで、リーダー論を確立し、同時に残業ゼロも実現。建設会社ではプレイングマネージャー、専門学校では年下の上司の下で働き、税理士業務では多くの経営者と仕事をし、セミナーでは「時間管理」や「リーダーシップ力」の講師をすることで、仕事が速いリーダーの研究を日々続けている。最新刊の『「残業しないチーム」と「残業だらけチーム」の習慣』(明日香出版社)ほか、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)など、勉強法、時間術などのビジネス書を8冊出版している。
資格試験・大学受験に最短で合格する近道は過去問!
資格試験、大学受験に合格する一番の近道は何だと思いますか?
税理士、宅地建物取引士、日商簿記など資格の勉強を20年間続け、資格試験の講師を15年行った経験から確実に言えるのは、過去問を調べ尽くすことです。
まずは、過去問に目を通します。どのような形式で問題が出題されるのか、記述式か論述式か、○×による正誤問題か多肢選択問題か、計算と理論問題の割合、難易度、ボリュームなど、過去の問題を見るだけで、様々な情報を得ることができます。例えば〇×による正誤問題しか出題されない試験で理論対策をしても意味がありません。
そして何より、過去に出題された類似問題が出題される可能性が高く、難易度の低い試験では、全く同じ問題や数字だけ換えた問題が出題される試験もあります。色々な問題が掲載されている10冊の問題集を解いて試験に挑むのと、同じ問題が出題される可能性がある過去問を解いて挑むのとでは、どちらが効率的でしょうか?
過去から受け継がれた問題を解くだけでかなりの高得点が狙えます。過去問を解かないで試験に挑むのは、ゼロベースで問題を解くということなのです。
通常業務にオーダーの高級スーツはいらない
残業だらけのチームは、中身はほとんど変わらない書類をゼロベースから作る傾向にあります。提出先が違っていても、まったくのゼロベースで考えるのは時間のムダと言えるでしょう。
知人の旅行会社では、社員が各自でバラバラに同じような旅行プランの企画書を作っていました。「オーダーメイド」という言葉があります。スーツを作るのに既存のものだと体形が合わない。そのような人向けに、オリジナルのサイズで作るのが「オーダーメイド」であり、究極の顧客志向といえます。
しかし、この「オーダーメイド」は全ての仕事においても必要でしょうか?
言い方をかえると、全ての顧客に「オーダーメイド」は必要でしょうか?
答えは否だと思います。そもそも企画書や提案書の作成の段階では、たたき台で十分です。まずたたき台を作ってからお客様の傾向に合わせていく。過去に作成された企画書を踏襲したもので十分です。
残業しないチームでは、過去に諸先輩が作っていた企画書や提案書、とりわけ評判の高い企画書、汎用的な企画書は踏襲していました。それ以外に、お客様のアポを取るメールの文面、謝罪文、礼状……マニュアル化できそうなものは全てテンプレート化し、効率化していたのです。
特に、謝罪文や礼状などの文面は、ゼロベースで作成していては時間がかかります。私のかつての部下は、謝罪文をどう作っていいか分からず、悪戦苦闘していました。1時間後、私が外出先から戻り「B社へのお詫び状チェックしようか?」と聞いたら、「まだです」との答えが返ってきて驚いたことを覚えています。
「言ってくれれば、過去に私が作った謝罪文のテンプレートを渡したのに……」と声を荒げましたが、よくよく考えればリーダーである私の責任です。
起きてしまったミス、クレームなどの一連の流れや要因も、常日頃から社内のトラブル事例を把握しておけば、問題を最小限におさえることができます。手戻りや謝罪するミスが減るので、時間に余裕も生まれます。
過去実績や社内資料を参考にすると、仕事が格段に早くなる
私が以前、札幌の建設会社に勤務していたとき、東京の財閥系会社からKさんが取締役総務部長として出向してきました。Kさんは3週間以上、書庫に入りびたりで過去の社内実績や企画書、社内資料を読みふけっていました。
株主総会手順、稟議書の書き方、始末書、日報に至るまで、過去どんなデータや書類がどんな方法で作成されていたのかを把握していったのです。3カ月も経つ頃には、北海道は初めての赴任先なのに、3年勤めている私よりも社内のことに詳しくなっていました。歴史を学べば今が分かる。特に書類などは繰り返し作られるものだから、有効活用すべきだと言っていました。
そのときの教えから、私も社内の書類やこれまでの実績・成果を知ることの重要性に気づき、転職先では、まずは書庫の書類やパソコンのデータを読み込むようにしています。昭和の時代に作られた手書きの決算書、元帳類。諸先輩方の苦労がにじみ出ています。
そんな書類に敬意を払いながら、年代を追うごとに進化していく踏襲された書類。それらをベースにして、修正した書類を作り、データ化してチームで共有していくことで、大幅に残業時間を減らすことができているのです。
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