オーディエンスの反応を「想像」しながら、プレゼンテーションを作る──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その11)
前回は澤さん直伝の「想像力強化のためのトレーニング方法」をお伝えしました。みなさん、想像力はアップしましたでしょうか?(前回の記事はこちら)
澤円のプレゼン塾・第11回は、その想像力をいかに「プレゼンテーション作り」に活かしていくのかについて、お伝えします。
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まず、オーディエンスの反応を想像する
私がプレゼンテーションを作り始めるとき、二つのことを主に想像しながら進めます。一つ目は、オーディエンスの反応。二つ目は、その後の伝言ゲームの進み方です。それぞれの内容を詳しく説明しましょう。
私のプレゼン資料を見たことがある方はご存知だと思いますが、スライド内の文字を少なめに作ります。理由は、オーディエンスがきちんと私の話を集中して聴きやすくするためです。
スライド内に文字が多いと、どうしてもそれを読み始めてしまいます。事前にスライドを配布してある場合などは、一度も顔を上げてもらえない場合もあります。これだと、オーディエンスの反応を知ることが難しくなってしまいます。
なので、オーディエンスが行間を語る私の顔を見て、リアルタイムで反応を受け取る場面を想像しながらスライドを作るのです。
スライドの文字を少なくするのは、実は勇気のいる行動です。「読めば分かる」状態ではないので、自分が語る言葉によってオーディエンスの脳内に情報をどんどんイプットしていかなくてはならないからです。
でも、それをポジティブに想像してほしいのです。オーディエンスがあなたの語る言葉にうなずいたり、メモを取ったり、「より詳細な話を聴きたい」とアンケートに書いてくれる姿を。そんな状況を想像しながら、プレゼンテーションの言葉を慎重に慎重に選んでいきます。
また、絵や写真、グラフや象徴的な数字なども織り交ぜながら作っていきます。(実際にどのようにPowerPointを使ってスライドを作っていくかは、また別途詳しく書いてみたいと思います)
スライドには記載されないアイスブレイクを差し挟む箇所なども、あらかじめ決めておきます。そして、アイスブレイクの言葉を発した時のオーディエンスの反応も、複数パターン想像します。とてもニコニコしている人々の顔や、ムッスリと無反応なパターンまで。
プレゼンテーションをやっている自分の姿を自分の目(=第一極)、オーディエンスの目(=第二極)、そして他の人たち…会場設営のスタッフ、通りがかりの清掃担当者、お客様に飲み物を運んできたカフェの人の目(=第三極)、それぞれ想像しましょう。ここでも第三極の思考は大活躍です。いろいろな視点で自分のプレゼンテーションしている姿を想像しましょう。
デモが失敗したときのリカバリーは?
失敗するシーンを想像するのもOKですが、その失敗を華麗にリカバリーする姿もあわせて想像しましょう。失敗の想像だけをしてしまうと、どうしても不安が増大します。リカバリーできる姿もあわせて想像すれば、どんどん不安は減っていきます。そして、本番でも堂々とのびのびとプレゼンテーションができるようになります。
特に、エンジニアの皆さんはデモを行うことも多いかと思います。ITのデモは、本番で失敗するのが普通ですよね(笑)。
いつもは確実に動くデモが、なぜか当日動かない。それがITのデモの宿命なのです。それも想像して織り込み済みにしましょう。一瞬静まり返った会場を気の利いた一言で空気を和ませて、プランBのデモなどで切り抜ける自分の姿を想像しましょう。なんとかっこいいことでしょう!
プレゼン資料やデモを作っている時は、単に文字を打ち込んだり、画像を貼り付けたり、機能の確認をするだけの作業にとどまらず、脳内で繰り返しリハーサルをしましょう。
「スライド完成→通しで練習」というやり方だと、うまく話せなかったりイメージとずれがあったりするときに、作業の大幅な手戻りが発生するリスクがあります。作業を効率化してかつ失敗のリスクを減らすためにも、オーディエンスの反応をひたすら想像しながら資料やデモを作っていきましょう。
スライドのないプレゼンテーションをする場合
スライドのないプレゼンテーションをする場合もあるでしょう。会議で急に意見を求められたときなどはこれにあたります。このようなパターンも、大事なプレゼンテーションの場面です。「えっ、急にふられた場合は想像も何もできないのでは?」と思った方もいらっしゃるでしょう。いえいえ、ちゃんと想像できます。話す内容はともかく、話し方や使う言葉はいくらでも想像できます。
例えば、かなり厳しい立場で何かの説明をすることになった場合にも、慌てふためいている姿はさらしたくないですよね。であれば、普段から「どんな質問をされても慌てない自分のいる場面」を想像しておけばいいのです。
落ち着いた表情で「なるほど、少しだけ考える時間をいただけますか?」とか「まさにご指摘の通りです。つきましては、挽回するためのアイデアを出させてください」と話して、鋭い質問をしてきたオーディエンスが「お、こいつはなかなかやるな?」という顔で自分を見ている場面を想像しましょう。
その場で思いついた言葉で取り繕おうとすると、どうしても噛んでしまってトホホな状態になりがちです。常に自分の言葉のライブラリを増やす努力を怠らなければ、いざというときに落ち着いて対応できるはずです。
連載:マイクロソフト澤円のプレゼン塾 記事一覧はこちら 撮影:栗原 克己
著者プロフィール
澤 円(さわ まどか)氏
日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界世界No.1プレゼン術」
Twitter:@madoka510
※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。
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