エンジニアのプレゼンにありがちな「落とし穴」──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その1)

エンジニアのプレゼンにありがちな「落とし穴」──マイクロソフト澤円のプレゼン塾(その1)

技術や製品やサービスの機能を正確に伝えようとするあまり、一方通行のプレゼンテーションをしてしまい、相手にまったく響かなかった…そんな経験はありませんか?

技術プレゼンのエキスパート澤円氏による「プレゼン塾」新連載・第1回はエンジニアのプレゼンにありがちな「落とし穴」について考えます。

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」にて掲載された記事を転載・改編したものです。

「伝えられるエンジニア」への道 ~はじめに~

ITエンジニアの皆さんは、なぜその道を選んだのでしょうか。

コンピュータが好きだから?

コーディングが得意だから?

理系でなじみが深かったから?

もしかして「話をするのは得意ではないから」「人と会うのが苦手だから」という「消去法」でエンジニアの道を選んだ方はいませんか?

今や、「コミュニケーション能力」はビジネスの中で最も必要とされる基本スキルになりました。その方法は、対面での会話だったり、大衆に語りかけるプレゼンテーションだったり、電子メールによるやり取りだったり。

コミュニケーションをとらずにできる仕事は、もはや存在しないといっても過言ではないですね。

であれば、もともと技術力のあるITエンジニアの皆さんが、コミュニケーション能力を磨けば、もっと「得」をすることができるのではないか、と思ってこの執筆を始めました。

皆さんのコミュニケーション能力がアップして、「さらにデキるITエンジニア」への道をまっしぐらに進んでいただけることを祈っております。

ITとプレゼンテーションの関係

スティーブ・ジョブズの名を出すまでもなく、ITの世界とプレゼンテーションはもはや切っても切り離せない関係になりました。

新しい技術、素晴らしいソリューション、クールな製品は、優れたプレゼンテーションによって世の中に「効果的に」伝えられます。

どんなに素晴らしい製品やソリューションでも、発表会などでのプレゼンテーションで魅力を伝えられなければ、マーケットに大きな影響を与えることはできないでしょう。

発表会が行われるような大きな規模の話ではなくても、社内業務アプリケーションのアップデートや、顧客のシステムメンテナンスなどの説明も、プレゼンテーション次第でその結果が大きく変わってきます。

エンジニアが全ての判断ができるのであれば話が早いのですが、最終的な判断を下す人物がITに詳しくない、「ITが大の苦手」な場合も大いにあり得ます。

そんな時こそ、エンジニアの皆さんのプレゼンテーション力が試されるわけです。

では、エンジニアがどのようにプレゼンテーションをすれば効果的なのか、紐解いていきたいと思います。

エンジニアのプレゼンテーションにありがちな「落とし穴」

さて、まず考えてみたいのが、エンジニアの皆さんのプレゼンテーションにありがちな「落とし穴」です。

エンジニアは技術的・機能的な部分を説明することを求められる場合がありますよね。その時に優先するのはどんなことでしょう。

最優先するべきは「情報の正しさ」だ!と思った人は、要注意。これこそ、一番エンジニアが陥りやすい罠なのです。

「技術や機能を正しく伝えなくてもいいのか!?」と、鼻息荒くするにはまだ早いです(笑)。「情報の正しさ」を追求するあまりに、「受け取り手不在」のプレゼンテーションになっていないかをチェックする必要がある、というのが私の論点です。

「この機能は細かく説明しなくては」

「この画面推移は全部見せたほうがいいな」

「やっぱりパフォーマンスを裏付けるデータを比較表にしておこうかな」

と、いろいろと思いついて、あれもこれも入れたくなって。

30分のプレゼンテーション時間にもかかわらず、50枚のスライドができ上がったりして。1枚のスライドの中にはびっしりと文字が書かれてて。

結局、スライドは説明しきれず、途中早口になり、プレゼンテーションが終わった後の聴衆の反応はなんだか微妙な感じ…。

こんな悲劇的なプレゼンテーションに出会ったことがない方は、幸運です。

世の中には、このような悲劇が連日発生しているのです。私も何度もその場に立ち会いました。

「情報の正しさ」はもちろん必要ですし、不正確な情報を提供するのは言語道断です。ただ、「あれもこれも」「とにかく全部」と思ってしまうと、本当に伝えなくてはならないことがぼやけてしまいます。

「自分は若手で、そこまで技術力があるわけではないから大丈夫だ」と思った人も、気を付けなくちゃいけません。「十分ではない」と思っているがゆえに「せめて自分が知っていることは全部正しく紹介しよう」と思ったら、ほぼ同様の悲劇が待っています。

自分の知識不足を補うためにいろいろ調べて、その調べるプロセスまでスライドに記述してしまったりしたら、これまた時間無視の超大作に仕上がってしまいます。

では、どうすればいいのか。この連載の中で、私なりの考え方をご紹介していきたいと思います。

著者プロフィール

澤 円(さわ まどか)氏

日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方」「マイクロソフト伝説マネジャーの世界世界No.1プレゼン術」

Twitter:@madoka510

※本記事は「CodeIQ MAGAZINE」掲載の記事を転載しております。

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