仕事のピンチをチャンスに! 知っておいて損しない“謝罪フレーズ”とは?―山口拓朗の『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』
あなたは、自分の語彙力に自信がありますか?
「その場で適切な言葉が出なくてあせった…」
「『言葉遣いがなっていない』と上司に怒られた」
「正しい敬語の使い方がわからない」
「相手に応じて言い回しを工夫することが苦手だ」
「教養のある人たちの会話についていけない」
「言葉や表現に自信がなくて、人と話すことが億劫だ」
このような悩みをかかえてる人や、さらに語彙力に磨きをかけたい人の“強力サポーター”となるのが、新刊『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』で話題の山口拓朗さんの短期連載(全5回)です。
「紛らわしい語彙や言い回し」から「武器になるビジネス語彙」「実践的なモノの言い方」まで、全5回に渡って語彙力アップのヒントをお届けします。
第2回のテーマは、「『言いにくいこと』を上手に伝えるモノの言い方」です。
語彙力があれば、ピンチをチャンスに変えられる!
言いにくいことを言わなくてはいけない――。
仕事をしていれば、そんなシーンに遭遇することもあるでしょう。
実は、こういうときにこそ真の語彙力・フレーズ力が試されるものです。
単刀直入に言いすぎて相手を怒らせてしまえば、仕事に滞りや損失が生じかねません。かといって、あまりに遠回しな言い方をすれば、真意が伝わらず、かえって相手の気持ちを害してしまう恐れもあるからです。
そこで求められるのが、言葉を工夫して「言いにくいこと」を、角を立てずに伝えるための語彙力です。相手が受け取りやすい形で「言いにくいこと」を伝えることができれば、仕事に支障をきたすリスクが減ります。それどころか、好印象を残して、相手と良好な関係を築くこともできるかもしれません。
なかでも「クッション言葉」は、社会人が武器にすべきコミュニケーションツールと言えるでしょう。
クッション言葉とは、<相手に依頼、質問、反論、意見、指摘、謝罪などをするケースで使われる前置き>のこと。
代表例は、 「お手数をおかけいたしますが〜」 「恐れ入りますが〜」 「申し訳ございませんが〜」 などです。
クッション言葉を上手に使うことによって、 角が立ちにくくなり、なおかつ、誠実で丁寧な印象を相手に与えることができます。
「言いにくいことを、波風を立てずソフトに伝える語彙力」は「ピンチをチャンスに変えるスキル」 ともいえます。身につけておいて損をすることはないでしょう。
「断り方」に、その人の品性が表れる
人からの依頼を断るときに、何の工夫もなく「それはできません」「ムリです」「ほかの方に頼んでください」と断ってしまうと、相手の心証を損ねてしまうことがあります。断るときには、それなりの配慮が必要になるのです。
【角が立ちやすい断り方の例】
その日は予定があるため、お役に立てません。よろしくお願いいたします。
【角が立ちにくい断り方の例】
あいにくその日は大阪出張の日程と重なっております。せっかくご依頼くださいましたのに、お役に立てず、誠に申し訳ございません。
断る際に「あいにく」という言葉を使うことによって、「申し訳ない…」「残念です…」というニュアンスを伝えることができます。また、断るに値する正当な理由があるケースでは、その理由を書いたほうが、相手が断り文句を受け入れやすくなります(例文では「大阪出張」の旨を伝えています)。
また、「せっかくご依頼くださいましたのに」や「お役に立てず、誠に申し訳ございません」というフレーズにも謙虚さが表れています。
「お役に立てず」の部分は、受けた依頼内容に応じて「お力になれず〜」「ご協力できず〜」「要望に沿えず〜」「ご期待に沿えず〜」「力不足で〜」「ご希望にお応えすることができず〜」などを使い分けます。的確な表現を選ぶことによって、相手の気分を害するリスクを抑えましょう。
反対意見を言うときにも、効果絶大な“クッション言葉”
仕事をしていれば、ときに相手に反対意見を伝えなくてはいけないケースもあるでしょう。
そんなときに何の工夫もなく「それはおかしくないですか?」「それは間違っています」とストレート言えば、相手との関係にヒビを入れてしまうかもしれません。 お言葉はごもっともですが〜<続いて反対意見を言う>
反対意見を言う際に使えるクッション言葉の一例です。反対意見を伝える前に「お言葉はごもっともですが〜」とクッション言葉を添えることで、相手は、その続きの言葉(反対意見)を受け取りやすくなります。なぜなら、先に自分の言葉を受け取ってもらっているからです。
反対意見を伝えるときには、ほかにも以下のようなクッション言葉があります。シチュエーションや相手との関係性、反対意見の強さなどに応じて、適切な言葉を選びましょう。
大変失礼ながら〜 誠に申し上げにくいのですが〜 差し出がましいようですが〜 僭越ながら〜 おこがましいようですが〜 余計なことかもしれませんが〜 出過ぎたまねとは思いますが〜 失礼なことを申し上げるかもしれませんが〜 ○○さんのお考えとは少し違うかもしれませんが〜 おっしゃることの意味は重々承知していますが〜
“お詫び”をするときこそ、語彙力が試される!
謝罪する際のフレーズで大事なことは、相手に快く許してもらうことです。
そのためには、「申し訳ありません」や「申し訳ございません」以外のフレーズも増やしておくとよいでしょう。闇雲に「申し訳ございません」を連発しているようでは、相手に誠意が伝わりません。
以下は、「申し訳ございません」と一緒に使える謝罪のフレーズです。
お詫びの言葉もございません。 お詫びの申し上げようもございません。 大変失礼いたしました。 大変(ご面倒/ご迷惑)をおかけいたしました。 大変お手を煩わせました。 弁解の余地もございません。 不徳の致すところです。 (責任を/未熟さを/至らなさを)痛感しております。 自責の念にかられています。 痛恨の極みでございます。 深く反省しております。
お詫びするときには、その経緯・事実関係をきちんと説明することで許しを得やすくなります。
「誠に申し訳ございません」の前に「とんだ不始末をしでかしまして〜」「とんだ失態を演じまして〜」「このような事態を招いてしまい〜」「ご不快の念をおかけいたしまして〜」「ご期待に添えず〜」「ご要望にお応えできず〜」などのフレーズを組み合わせてもいいでしょう。
ほかにも、お詫びする原因が自分自身にあるときには、以下のようなのフレーズが使えます。
不覚にも○○してしまい〜 うかつにも○○してしまい〜 油断して○○してしまい〜 恥ずかしながら○○してしまい〜 不用意にも○○してしまい〜 軽率にも○○してしまい〜 不注意で○○してしまい〜 うっかり○○してしまい〜 つい○○してしまい〜 思わず○○してしまい〜
お詫びをするときは、ただお詫びをすればいいわけではなく、
<誰に迷惑をかけたのか><どんな迷惑をかけたのか><何が原因だったのか><どう責任を取るつもりなのか>
などの要素を勘案したうえで、最適な表現を心がける必要があります。
誠意を欠いたり、ピントがずれていたりすると、かえって火に油を注いでしまう恐れもあるので注意が必要です。
TPOに応じて、最適な言葉を選び取ろう!
文字どおり、クッション言葉には、無礼になりがちな言葉の衝撃を和らげる効果があります。シーンごと的確なクッション言葉を使える人は、相手の気持ちを害しにくい人です。また、“気遣いのできる人”として、周囲から好意や信頼も獲得しやすくなります。
もっとも、いくら立派な語彙や敬語をたくさん知っていても、「その場の空気」をつかみ損ねれば、「伝わらない」「誤解される」「怒りを買う」などの悲劇を招きかねません。「その場の空気」とは“相手の立場や感情”“相手との関係性”“その場の状況”などを含む TPOのことです。
TPO に応じて、さり気なくも的確に、気のきいた語彙・フレーズをくり出すことができる。そういう人こそが、人と上手にコミュニケーションをとりながら、仕事で成果を出していく人ではないでしょうか。
著者:山口拓朗
『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』著者
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。『伝わるメールが「正しく」「速く」書ける92の法則』(明日香出版社)のほか、『残念ながら、その文章では伝わりません』(だいわ文庫)、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)他がある。最新刊は『できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方』(PHP研究所)。
山口拓朗公式サイト
http://yamaguchi-takuro.com/
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