ドラマ『宮本から君へ』から学ぶ、ダメ社員をデキる社員へと変えるたった1つの方法
ドラマが面白いと、明日が楽しくなる!そんなドラマの登場人物の行動やセリフから、ビジネスやキャリア形成のヒントを探るシリーズ。今回は、テレビ東京『宮本から君へ』をご紹介します。
「お客様を笑顔にしたい」「仕事は楽しく」「何があっても諦めない」。人はそれぞれプライドを持って働いています。ドラマ『宮本から君へ』の主人公・宮本浩を見ていると、かっこ悪くても、不器用でも、プライドのあり方を変えることで、現実が変わり始めるということに気づかされます。
©「宮本から君へ」製作委員会
そのこだわりはプライドか、美学か?
誰しも、仕事をするうえで何かしらのこだわりを持っています。それが一人よがりなプライドだけで終わるのか、かっこいい美学になるのかは紙一重です。誰のためにもならないこだわりを押しつけるだけでは、仕事とはいえません。
しかし、そのこだわりを正義へと変えるたった1つの方法があります。それは結果にこだわるということ。つまり、成果が出るまであきらめないということです。
それを教えてくれたのは、ドラマ『宮本から君へ』の主人公、文具メーカー・「マルキタ」の新人営業マン、宮本浩(池松壮亮)です。宮本はとにかく不器用です。全力疾走で、意固地で、失敗を繰り返し、妙なプライドを振りかざして周りと衝突してばかり。
ある時、1万冊のクリアファイルを特注で作るコンペが発生します。宮本は、自分を出し抜いてそのコンペに優位に立った競合メーカーを見返すべく、新たなデザイン案の提案を行おうと考えます。もちろん先輩にも上司にも反対されるのですが、宮本が上司の小田課長(星田英利)を説得する時のセリフに、彼の決意が表れています。 小田課長「仕事にせよ、女にせよ、一生懸命やるのは、そらええことや。せやけど社会に出たら大切なんは結果や。一生懸命やってるのに、結果が出えへんいうてダダこねんのは、ガキだけや」
宮本「勘違いしないでくださいよ。うまくいかないことにダダこねてんじゃなくて、中途半端で終わることにダダこねてるんです。このまま終わったら、俺、きっとがんばったってことで満足しちゃいます。そんなもん、クソくらえです。俺は結果をかみしめたいんです。勝ちでも負けでも」
©「宮本から君へ」製作委員会
いつもは一人よがりな宮本が、絶対に負けられないこの仕事をするにあたって、一つだけ大きな武器を身につけました。それが、自分ではなく「結果に」こだわるということでした。
それまで自分の意地を通すことに一生懸命で、仕事の成果を出すということへのこだわりが希薄だった宮本が、初めて「仕事の成果を出すために」プライドを持ったのです。それは宮本が、こだわり方を変えた瞬間でした。すると次第に周りも宮本につき動かされ、取引先は協力してくれるようになるし、最初は反対していた先輩や上司も宮本のために骨を折ってくれるようになったのです。
「勝てば官軍」という言葉がありますが、正しい結果が出るのなら、諦めない気持ちは美学へと昇華します。揺るぎないこだわりは正義となるのです。
本質は変えず、成果が出るようジョイントすればいい
ここで面白いのは、宮本自身の本質――独自のこだわりを持っているという部分は何も変わっていないということです。そのこだわりの矛先を、自分ではなく仕事の結果へ向けただけ。いくら結果が出ないからといって、社会人になった大人が、その人の本質を丸ごと変えるのは非常に難しいことです。自発的に変えようとするならまだしも、管理職とはいえ他人が変えるのは無理難題。マネジメントにおける永遠の課題といっていいかもしれません。
しかし、本人の持っている本質はそのままに、成果を出すことにうまくつなげることができれば、ダメ社員も優秀な社員へと変わることができるのではないでしょうか。
©「宮本から君へ」製作委員会
そう考えると、ダメ社員とデキる社員の違いは、ほんのわずかな差。不器用で要領が悪く、失敗ばかりしていても、あきらめずに結果へとつながることができれば、デキる社員になれる。その人の本質や本来持ち合わせているエネルギーが向いている方向性を、ほんの少しだけ変えられればいいのです。
正直、私たちは宮本ほど大胆にはなれません。見えない空気や周りの評価が厳しいこの時代、脇目も振らず走って、叫んで、ぶつかって、大怪我できる宮本は最高に清々しい存在です。
金曜日の夜中にこのドラマを見終えてテレビを消すと、なんだかいつもより大きな声で叫びたくなっている自分に気づきます。そして、月曜日はもっと熱く仕事をするぞ、という気持ちにもなります。宮本ほどは思いきった行動はできないまでも、自分の中の「プチ宮本」を発動させ、それを成果を出すために使うことで、仕事は少しだけ熱く、面白くなっていくのではないでしょうか。
<番組情報>
ドラマ25『宮本から君へ』(テレビ東京、金曜24:57~)
主演 池松壮亮、監督・脚本 真利子哲也という強力タッグによる深夜ドラマ。池松壮亮はテレビ東京『銀と金』にも主演しており、ギャンブルに逃げる素寒貧の若者から、目のすわった勝負師へと変貌を遂げていく様を見事に演じた。池松壮亮は真利子哲也が監督した映画『ディストラクション・ベイビーズ』にも出演。出演は他に、柄本時生、星田英利、蒼井優、松山ケンイチら。主題歌はエレファントカシマシの「Easy Go」、エンディングテーマはMOROHAの「革命」。
WRITING:石川香苗子
ドラマ好きの原点は、小学生の時に見た『刑事貴族2・3』、『ロングバケーション』、『イグアナの娘』。中高生の頃は図書館でシナリオ集を読みふけり、大学ではテレビドラマで卒論を書いた筋金入りのドラマ好き。好きな脚本家は岡田惠和さん、渡辺あやさん、森下佳子さん、林宏司さん。
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