オルソケラトロジーで視力回復、効果・費用やリスクは?

オルソケラトロジーで視力回復、効果・費用やリスクは?

特殊なハードコンタクトレンズを寝ている間だけ装用するオルソケラトロジー

オルソケラトロジーは、特殊なハードコンタクトレンズを使用するのですが、通常のコンタクトレンズと違い夜寝ている間だけレンズを装用します。特殊な形状をしたレンズの裏面で角膜を圧迫することで、角膜のカーブを変化させます。その変化のおかげで近視度数が減り視力が上昇します。

オルソケラトロジーに用いられるレンズは内面に特殊なデザインが施されており、レンズ下涙液の圧の変化により角膜形状を変化させ、一時的に近視・乱視を軽減します。酸素透過性の高い素材を使用しているので、劣化や汚染が無ければ、寝ている間にコンタクトレンズを装用することで起こりうる酸素不足の心配は少ないと言えます。

ただし、注意点もあります。しっかりとレンズを洗浄するなど適切に管理しないと結膜炎などになる恐れがあります。また、目をかくなどしてレンズがずれると、外した後に十分な視力が出ないこともあります。

費用は両眼で10万円~20万円。原則20歳以上から治療可能

日本では2009年に厚生労働省から承認を受けたレンズが登場しました。現在は4社が製造・販売している。レンズの価格は治療費に含まれ、両眼で約10万~20万円。健康保険はきかないため、やや高額です。

コンタクトレンズ学会は2009年に「オルソの適応は20歳以上」との指針を出しています(ガイドライン)。オルソKの承認と同時に作成されたガイドラインは作成後7年を経過し、一定数の市販後調査データの集積が得られたためガイドラインの見直しを行うこととなりました。

主な改正点は、適応年齢を原則20歳以上とするものとし、未成年者への処方に対しては慎重処方であるものの処方可能としたという点です。

オルソケラトロジーに関するよくある質問

どのくらいの近視までが対応可能か?

基本的には、中等度(-4D)までの近視が適応範囲となります。個人差はありますが、起きている間、また場合によっては24時間~36時間程度効果が持続します。

どれくらいの頻度でレンズを付ける必要があるか?

大部分の患者は、毎日夜寝る前にレンズを付ける必要があります。中には一日おきにレンズを付けることで近視の軽減(正視化)が可能です。

視力は突然元に戻ってしまうのか?

就寝時のレンズ装用を中止した場合、徐々に元の近視に戻っていきます。最終的に元の角膜カーブに戻るのは2週間~1ヶ月程度です。

子どもの近視の進行抑止にも期待

オルソは子どもの近視の進行を抑える効果も期待されます。筑波大学が5年間、子供43人(8~12歳)の近視の進行度をオルソと眼鏡で比べた結果、近視につながる眼軸長の伸びはオルソの方が3割抑制できたとのことです。海外でも同様の報告は相次いでいます。

視力向上が持続するわけではないので注意

ただし、視力向上が持続するわけではないため成人になってもオルソを継続しなければなりません。成人になると夕方以降に欠点が目立ってくるようになります。例えば自動車運転する人は夕方以降、裸眼視力が下がってくるため運転が困難になる、その他の活動も眼鏡が必要になるなどです。

また仕事などで生活が不規則で多忙になると、睡眠時間が短くなり、レンズ装用時間も短くなり視力向上が得られなくなるおそれがあります。

そのため成人になるとオルソを中止し、通常のコンタクトレンズや眼鏡を使用するか近視矯正手術レーシック(日本眼科学会ガイドラインで18歳以上が適応)を受けて近視を治すケースも多い状況です。

(田川 考作/眼科医)

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