韓国スリラーの“コレコレ!”がつまりながらも最後の展開が新鮮『パズル(原題)』:ゆうばり映画祭レビュー
特撮からアニメ、エログロ、SFと、多彩なジャンルの作品が上映され、その“ふり幅の広さ”で毎年話題を集めている『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018』。3月19日まで開催されています。
個性的なラインナップの中から、ホラー通信むけに、ホラー/サスペンス作品をご紹介。1本目は韓国映画『パズル(原題)』です。
【ストーリー】
才能と財力に恵まれた男・ドジュン。しかし海外留学中の娘と、娘に付き添い移住した妻と離れて暮らすうち、妻に対する疑心暗鬼が深刻になっていた。ある夜、ドジュンは独りで酒を飲んで徘徊する途中、謎めいた女・セリョンを助ける。そして彼女の魅力に惑わされ、取り返しのつかない事件に足を踏み入れることに…。
目覚めると殺人者になっていたドジュン。誰かから常に脅され続ける恐怖のなかで、複雑にもつれたパズルを解くために走り始める。
仕事も成功、美しい妻と可愛い娘を持ち、高級マンションに住んでいるシュッとしたサラリーマンが主人公。でも実は夫婦は不仲で離婚寸前、爆発寸前の不満を抱えている……って『新感染』(2017)の主人公もそんな感じでしたが(こちらは完全に離婚してたけど)、韓国では共感しやすい人物設定なのでしょうか?
この主人公が、ひょんな事から知り合った女の子が働く風俗店を訪れるのですが、女の子から「どのコースにする? 最後のは……オススメしないわ。精神的にも体力的にもリスクが大きすぎるの」と説明を受け、「そこまでいうなら、それにしましょ!」って見事にその謎のコースを選んでしまいます。聡明なホラー通信読者の諸君ならお気づきだと思いますが、うん、罠だよね。
翌朝、目を覚ますとその女の子が死んでいて、主人公は思わずその場から立ち去るのですが、何者かから「自首しろ」「誠意を見せろ」と脅しのメールがじゃんじゃん届き、捕まりたくない故にその要求に応えるしかなく……。ここからは怒涛の展開で、誰が主人公をはめているのか、本当の黒幕は誰なのかをつきとめる為、主人公もバキッバキに戦いだします。
これまで普通のサラリーマンだったのに、いきなり戦闘能力が開花、戦い方も安定のハンマー、ナイフ、拳。と、観たい韓国映画の要素が盛りだくさん。体が傷つく音とか、すごく生っぽいんです。本作、低予算で撮られた映画という事ですが、それを感じさせない不穏で暗い映像は安っぽさ無し。
冒頭で、ピエロのお面をかぶった人物がハンマーで暴れ出すシーンがあったのですが、ホラー/サスペンスにおいてのピエロのお面ってちょっと賭けじゃないですか? 殺戮シーンでクラシック音楽かけるみたいな、これまでにやられすぎていて、カッコよくなるかダサくなるか、ダサくなる方が多い、みたいな。そういう意味では最初「ちょっとアレ?」って思ったのですが、ラストの衝撃の展開を受けた後だと効いてるな〜と思いました。
そして、その衝撃の展開っていうのが「こう来たか!」って感じでちょっと笑っちゃう感じなんですけど、韓国定番のサスペンス・スリラー描写はしっかりやっておきながら、新しいアイデアをどんどん入れていくっていう韓国映画の作り手の見事な心意気を見させていただきました。日本公開は未定ですが、情報届き次第更新します。
映画祭に訪れた監督&俳優の皆さん。
チラシの裏。これを見るだけで不穏な雰囲気は感じていただけるでしょう。
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。