子どもの探求心を育むために
高校生が大人顔負けの「研究」 必要な3要素
韮崎高校の生徒たちが「ハエに青い光で死ぬプロセスの解明」という、大人顔負けの研究をして世間を驚かせています。
こうした探求心あふれる研究結果を出せる生徒は、他の生徒たちといったいどう違うのでしょう?幼児期の教育に関係があるのでしょうか?今回は、このことについて書いていきます。
まず、こういった研究に欠かせないものは
1. 強い好奇心
2. 適切な「目標設定能力」と「目標までのロードマップ作成能力」
3. 結果がでるまで決してあきらめない強い持続力
だと思います。
1の「好奇心」はすべての研究の源です。この「知りたい!」という好奇心なしに研究などできません。2は、「研究の目標をどこに定めるか、そして、その結果を出すためには、何をどのようにしていけばいいか」を決める能力です。身の丈にあった「目標」を設定できなければその研究は潰れますし、その「目標」を達成するまでの合理的な道筋が作れなければゴールまでたどり着けないのです。この2の能力は右脳のイメージ力と左脳の論理力の両方が必要になる高度な力です。でも、結局持続力(根性)がなければ研究を続けることはできません。研究に失敗はつきもので、心が折れそうになることは茶飯時なのですから。だから3の能力も絶対に欠かせません。
子どもの好奇心にブレーキをかけてしまう大人の言動
今回は、1の好奇心を育む方法を中心に書いていきます。
本来、人間は誰でも好奇心を持っています。逆に、人類の祖先の中で「好奇心」のない種族は滅んでしまった、と言っていいでしょう。はるか太古、人類の祖先はアフリカで発生し、強い好奇心を持った者だけが発明、発見を繰り返し、世界中に拡散して「文明」を育んでいったからです。いわば「新たな未来をつかみ取る力の源」と言っていいでしょう。
ですから、人はみな好奇心を持っていて当たり前。子どもの時はなおさらです。しかし、学年が進むにしたがって生徒たちは変わって行きます。理科実験の時に、それははっきりわかります。年長さんや小学低学年の生徒たちは、ほぼ例外なく「実験!」と聞くと、我先に飛んできます。そのワクワク感は、こちらにもすぐに伝わって来るほどです。それが、学年が上がるにつれて無関心な生徒が出てきます。「実験」と聞いても「屋上の天文台で星を見る」といっても席を立とうとしません。何よりも眼の輝きが失せているのです。これはいったい何なのでしょう?
これは、おそらく、幼児期に子供の好奇心の芽を摘み取ってしまった結果なのです。
小さいとき、子どもたちは「これは何?」「これはどうして?」と好奇心を連発していたはずです。この時、多くの大人が「うるさい」「面倒くさい」と思って、叱ったり、ごまかそうとします。子どもは、こういった「大人が嫌がっている」という気持ちを読み取ります。無防備である子供にとって、親に嫌われるのは「死活問題」なので、無意識に自らの「好奇心」に蓋をしてしまいます。つまり子供の脳が「好奇心」を「悪い事」として認識してしまうのです。
ですから、まず子どもの「これは何?」「どうして?」にちゃんと向き合う事。(日々、忙しい事は重々わかるのですが、少なくとも「うるさいなあ」と叱ったりはしないように!)
好奇心を育むために大切なのは「すぐ答えを教えない」「褒める」
ただ、その際、注意することがあります。すぐに答えは教えないのです。すぐに教えてしまうと、一時の好奇心は満たされますがそれでお終いになってしまいます。本当の喜びは、もっと奥深い所にある。それを教えないと「好奇心」の発露は単発で終わってしまうでしょう。
ではどうすればよいのか。すぐに答えを教えるのではなく、「なんでかな?」「どうしてかな?」と親が一緒に考えてあげるのです。そして、その時に「知るためにはどういう思考法が必要か」を教えていくのです。
言って見れば、「魚」を渡すのではなく、「魚の取り方」を教えるのです。ストーリーテラーになったつもりで、自分もわからないふりをして上手に「思考法」を伝えて下さい。
そして子供が自ら答えを出した時は、間違っていても思いっきり褒めてあげること。最初は大変ですが、子どもがいったん自分で好奇心を満たす思考法を手に入れたら、自ら進んで答えを導き出すようになり、手もかからなくなります。
これは、子どもの脳に「達成感」という新しい至福回路が形成されるからです。「達成感」とは「ハードル」を超える喜びのことで、これも人間進化の重要な原動力です。この「好奇心」と「達成感」が結びつくことで、子供の心は生き生きと成長していきます。そして、この必勝パターンを固定化するために「褒めること」は重要なのです。また褒められることで子供は「自己肯定感」を持つようになります。
「自己肯定感」は「やる気」の源泉です。こうなった子供は、一生涯、強い「好奇心」を持ち続けることができるのです。
(北川 実/理数専科塾塾長)
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