体が動く法話を目指す、くらしき仏教カフェ:天野こうゆうさんに聞く
FMくらしきの法話バラエティ番組『拝、ボーズ!!』でおなじみの天野こうゆうさん。高野山真言宗の布教師でもあるこうゆうさんは、法話のプロとしてお寺だけでなくラジオにテレビにイベントにと、これまであらゆる場所で仏教を伝える活動をされています。
先日、新たにイベントを立ち上げるというお知らせをいただいたのですが、これまであえてやってこなかったスタイルのイベントにされるとのこと。いったいどんなことを考えて、何をされようとしているのか聞きたくなって、 明日3月25日からはじまる「くらしき仏教カフェ」 についてインタビューを申し込んでみました。(インタビュー、構成:松下弓月)
くらしき仏教カフェができるまで
―――今回新しく「くらしき仏教カフェ」を始められたのはどうしてですか?
これまで「根幹から順を追って話す」というスタイルで法話をやってきました。根っこからずどーんと太い幹があって、そこから枝葉に分かれていくってイメージ。根幹というのは、たとえば「高野山高校へ入る時にした母親との最後の食事」みたいなストーリーです。で、枝葉が「数珠の持ち方」とか、「仏様の教えに八正道というのがありまして」みたいな仏教雑学。これが年齢を問わずに一番入りやすい手法だと思って、5年間毎月新しい法話を作って1時間しゃべってきました。そしたら最近はこの枝葉の部分だけ聞きたいという人が増えてきて。それで一度企画を練り直してみることにしました。
ところが、なかなかタイトルが決まらなくて。悩んだすえ、ある方に「なんかいいタイトルないですかねー」って相談したんです。その方も、ものすごく考えてくれるんやけど、どの案もお互いベタだってダメだししあって決まれへんし。でも、あとでサイエンスカフェってのが世界的に有名で「倉敷サイエンスカフェ」もすごく流行ったという話を聞いて、仏教カフェはどうかって話になりました。じゃあついでに上に「倉敷」ってついたらおしゃれっぽいなーと言ったら、その方が「いいですね。京都と倉敷と鎌倉はブランドですから」って言うので、じゃあ「くらしき仏教カフェ」にしましょうっていうことになったんです。
―――良いタイトルですよね。ひらがな漢字カタカナのバランスがいいなーと。内容的にはいったいどんなことをされるんでしょうか?
これまであえてやってこなかった、「なんでも聞いてください」というスタイルで、コーヒーでも飲みながら気楽にやろうと思ってます。二部構成で、一部は仏具や作法、仏事についてのあれこれで、二部は人生相談的なもの。「イジメってどうします?」とか、「自殺って……。」みたいな話がポロッと出たら、それに答えていく。みなさんから材料をいただいて、私がちょっと調理をして、みなさんの耳元まで運ぶという感じです。
で、その中にプチ瞑想ってのを入れます。目を凝らすって言いますが、木の枝に止まってる鳥をじーっと見るみたいに、とにかく音に集中して、遠くで鳴いている鳥の声や色んな音を耳で聴くという訓練が高野山にあるんです。新しい発見があるので、必ず5分くらいは入れるつもりです。
法話のライブハウスを目指して
―――イベントに来られた方に、伝えたいのはどういうことでしょうか?
やっぱり思わず体を動かして、「お参りに来ました」とか、「お寺へ行ってみました」みたいなことに結びつけたいんです。頭でっかちになって欲しくなくて。いま仏教文化に凝ってる人がいっぱいいますけど、仏像が好きな女の子たちを見てて、「惜しいなー」って思うんですよ。立ったまま拝観してる子が多いんだけど、やっぱりちょっと座って、その目線から、拝するってことをやったら変わるじゃないですか。だから、とにかく自分の話を聞いたら、「いっぺん経験したい」とか「行ってみたい」みたいに、頭じゃなしに体が動くようにしたいんです。
―――頭じゃなしに、体が動く。
ライブでも、ずっと座って、手も叩かないでいるのはつまらんじゃないですか。おんなじ来てくれるのでも、せっかくノリノリなんだから一緒にステップ踏めばって思うんです。「良いライブだったけど席半分座ってたよ」みたいなのではなくて、立って踊らしたい。法話も、一緒に「イエー!」とは言わなくていいけど、帰るときに「ちょっと鳥居をくぐってみた」とか、「お地蔵さんを見た」とかなって欲しい。法話ってそういう起爆剤だと思ってます。
―――くらしき仏教カフェは、来て、立って踊るようになれる、法話のライブハウスってことですね。
後味を持ち帰る
―――くらしき仏教カフェには、倉敷という街の魅力もありますよね。
倉敷の美観地区は、地元の人でも観光気分になれる場所なんですよ。ただ、休日の昼間なんか駐車場がいっぱいになるから、出てくるのに結構覚悟がいるんです。それでもみんな駐車場を探してでも法話会に来てくださって、「このあとご飯に行ってきまーす」みたいな感じで帰って行かれるんですけど、これがすごい嬉しくて。なんか自分の法話会をきっかけに、夫婦で飯食うなんてすげーなって思うわけよ。帰りに美観地区を散策しながら、法話の内容を振り返っておしゃべりしたという話を聞いたことがあって。そういうのも嬉しいですね。
法話をメインに据えるのは寺でいいじゃんって思うようになってきました。だから、音楽をかけて、お茶を飲みながら、みんなで歓談してる時にスルッと始まるような形にしたいです。みなさんに持って帰ってもらうものは後味だと思うので。「今度会ったときにこれを聞いてみよう」とか、「私はこう思うんだよ」っていう話を持ってきてもらうような場所にしたいですね。
―――お話、ありがとうございました。
イベント案内
日時:2012年3月25日(日)15:00〜
会場:夢空間はしまや(岡山県倉敷市東町1-20)
内容:仏教解説(仏事・仏像・お経)、プチめい想、座談会など
会費:1,500円(お茶代込)
講師:天野こうゆう師(高蔵寺住職、高野山本山布教師)
申込:086-422-2564、または[email protected]まで。
※今後は同会場にて、毎月一回開講予定です。開講予定日は、4月15日(日)、5月27日(日)、6月17日(日)。
※当日こうゆうさんに答えて欲しい質問をこちらのメールアドレスにて受け付けています。[email protected]
※また、6月には東京で開催予定です。まだ会場が見つかっておらず、協力者を探されているそうなので、興味のある方はご連絡してみてください。
ウェブサイト: http://www.higan.net/
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