【ここは法廷だゼ!】「死刑になりたい」とガソリンを……渋谷ライブハウス放火未遂事件【前編】初公判
昨年8月に東京・渋谷のライブハウスにガソリンを撒いたとして、殺人予備、現住建造物等放火予備などの罪に問われたS(24)の初公判が2月に東京地裁で開かれた。
法廷に現れたSはグレーのスエット上下にサンダルのメガネくん。頬はふっくらツルツルだ。膨れっ面で何か言いたげな顔をして俯く様子は、若さというより子供っぽさのほうが勝っている。
逮捕当時は「大量に人を殺して、死刑になりたい」などと話していた事が報じられているが、取り調べ時にも同様のことを語っていたようだ。
証拠によればSの生い立ちと事件に至る経緯はこのようなものであった。
小学5年の頃から疎外感を感じるようになったSは、死体の写真や映像に興味を持ち、ネットで過去の重大殺傷事件の画像などを頻繁に閲覧するようになる。その中で次第に、自分もいつかは……という思いを抱くようになったという。
高校時代。男児をハンマーで殴り、少年院へ。出所後は通信制の高校を卒業し、就職する。ところが『人手不足のお盆に休んだ事』を上司から叱責されたことがきっかけで、会社を辞めて失踪することを決意。同居していた両親に「明日は会社を休んで、香川にうどんを食べに行く」と嘘をつき、上京した。
そして過去の事件現場をまわるなどしたのち、犯罪を犯す事を考え、ライブハウス放火による大量殺人を思いつく。ガソリン、催涙スプレーなどを準備し、イベント中のライブハウスへ。ガソリンをバケツに移し替え、フロアに置いたが放火の前に身柄を拘束された。
このときSはバケツを蹴ってフロアにガソリンをぶちまけ「殺してやる。自分も死刑になるんだ」と叫んだという。
調書では動機について「死にたいが、自殺はもったいない。悪い形でも注目されたかった。大勢を巻き込んで派手に死にたいと思っていた」と語っている。また「出所したら大人しく自殺で人生を終わらせようと思っており、できなければまた人を殺そうとするかもしれない」とも。勘弁してくれ。
Sは最初から最後までムスッとしていた。
自殺願望を持ちながらそれを実行できず、“大量殺人を犯せば死刑になる”と、犯罪を犯す被告人はたまに見かける。しかし、死にたいというよりも、ただ自分の苦悩を世間にアピールしたいだけなのではないかという気もしてしまう。“自殺はもったいない”という言葉にもうんざりだ。本気なのだろうか。それともカッコつけているだけなのだろうか。
つづく……「死刑になりたい」は強がりか?渋谷ライブハウス放火未遂事件【後編】被告人質問
画像引用元:flickr from YAHOO
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傍聴人。近著『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)ほか古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)『あなたが猟奇殺人犯を裁く日』(扶桑社)など。好きな食べ物は氷。
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