デキない人のメールには、「クッション言葉」がない
▲メールで「クッション言葉」使ってますか?
相手の心を開かせる魔法の言葉とは?
人間は、機嫌がいいほど心を開きやすく、機嫌が悪いほど心を閉じやすい生き物です。もしも、あなたが書いたメールが相手の機嫌を損ねてしまえば、その先のコミュニケーションが図りにくくなり、仕事の目的自体が達成できなくなるかもしれません。
確実かつスピーディに仕事の成果を手にしたいなら、決して相手の機嫌を損ねてはいけません。メールを受け取った相手に「傲慢だ」「一方的だ」「身勝手だ」「生意気だ」「冷たい」と思われてはいけません。相手が「心地よい」と感じるメールコミュニケーションを図りましょう。
その際に重宝するのが「クッション言葉」です。クッション言葉とは、相手にお願い、依頼、質問、反論、意見、指摘、謝罪——などをするケースで使われる「前置き」のこと。
クッション言葉を使うことによって、敬いの気持ちや気遣いが伝わりやすくため、メール送信者の印象が格段によくなります。相手の機嫌を損ねないどころか、機嫌をよくすることもできる“魔法の言葉”なのです。
クッション言葉を使うだけで印象がソフトに
① 本日中にご返信ください。
② 本日中にご返信をいただけませんでしょうか。
①はやや「上から目線」のメールであり、状況次第では、相手に「傲慢」「偉そう」「生意気」と受け取られかねません。そう思われたら、すぐに返信をしてくれない、あるいは、こちら(メール送信者)の要望や依頼に応えてくれないというリスクが高まります。「機嫌を損ねる」という人間の感情を甘くみてはいけません。
一方、「いただけませんでしょうか」とお伺いの形で書いた②のほうが、①よりも丁寧です。傲慢さが消えて印象がよくなりました。しかし、理想的な文面かといえば、答えはノーでしょう。まだ改善の余地がありそうです。
③ お忙しいところ誠に恐縮ですが、本日中にご返信をいただけませんでしょうか。
「お忙しいところ誠に恐縮ですが」というクッション言葉を盛り込むことで、さらに印象がよくなりました。敬いや気遣いが感じられるこの文面であれば、より速く、より好意的な返信がもらえるかもしれません。
このように、同じ内容でも、①のように相手を不機嫌にさせて自分が望む結果を得られない書き方もできれば、クッション言葉を盛り込んだ③のように、相手を機嫌よくさせて自分が望む結果を得る書き方もできるのです。
クッション言葉は、単なる社交辞令ではありません。メールでやり取りする相手と信頼関係を築くうえで必要不可欠なツールなのです。
使えるクッション言葉をストックしておこう
クッション言葉を使いこなすためには、クッション言葉の種類を知っておく必要があります。 以下は、代表的なクッション言葉です。
お願い・依頼・質問などをするとき
・お忙しいところ(誠に)恐縮ですが〜
・お忙しいところ(誠に)お手数をおかけいたしますが〜
・お忙しいところ(誠に)申し訳ございませんが〜
・誠に勝手なお願いですが〜
・ぶしつけなお願い(質問)ですが〜
・突然の◯◯で恐縮ですが(申し訳ございませんが)〜
・お手間をとらせますが〜
・ご迷惑(ご面倒)をおかけしますが〜
・ご迷惑(ご面倒)でなければ〜
・お使い立てして申し訳ございませんが〜
・たいへん失礼ですが〜
・差し支えなければ〜
・もし可能であれば〜
・お時間が許せば〜
・よろしければ〜
・お手をわずらわせますが〜
・たびたび(重ね重ね)申し訳ございませんが〜
・うかがいたいことがあるのですが〜
断るとき
・あいにくですが〜
・せっかくですが〜
・残念ながら〜
・申し訳ございませんが〜
・恐縮ですが〜
・◯◯したいのは山々ですが〜
・お役に立てず申し訳ございませんが〜
・心苦しいのですが〜
・ありがたいお話ですが〜
・お気持ちは嬉しいのですが〜
・身に余るお言葉ですが〜
・ご期待に添えられず申し訳ございませんが〜
反論・意見・指摘をするとき
・誠に申し上げにくいのですが〜
・老婆心ながら〜
・余計なこととは存じますが〜
・たいへん失礼とは存じますが〜
・お節介とは思いますが〜
・僭越ながら〜
・お言葉を返すようですが〜
・確かにおっしゃるとおりですが〜
・おっしゃることは重々理解しておりますが〜
微差が大差を生む?
では、クッション言葉が“ない文章”と“ある文章”を読み比べてみましょう。
【なし】ご協力できません。
【あり】残念ながら、ご協力できません。
【なし】価格を教えていただけませんでしょうか。
【あり】差し支えなければ、価格を教えていただけませんでしょうか。
【なし】わたしが案内いたします。
【あり】よろしければ、わたしが案内いたします。
【なし】先に拝読いたしました。
【あり】僭越ながら、先に拝読いたしました。
【なし】先約がございます。
【あり】あいにくですが、先約がございます。
【なし】貴社のカタログに誤りがございます。
【あり】誠に申し上げにくいのですが、貴社のカタログに誤りがございます。
【なし】再送いただけますでしょうか。
【あり】お手数をおかけいたしますが、再送いただけますでしょうか。
【なし】ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか。
【あり】もしご迷惑でなければ、ご一緒させていただいてもよろしいでしょうか。
【なし】お時間をいただけませんでしょうか。
【あり】たいへん不躾なお願いではございますが、お時間をいただけせんでしょうか。
クッション言葉が“ない文章”でも丁寧に感じられるものもありますが、“ある文章”のほうが、より誠実で物腰の柔らかい印象を受けます。ひと手間をかけるかかけないか、その微差が大差を生むのです。
相手の機嫌は「宝物」のように扱え
相手の機嫌を損ねない。くり返しになりますが、クッション言葉の最大の目的は、この言葉に尽きます。お願いするにせよ、断るにせよ、指摘するにせよ、自分が望む結果を得たいのであれば、相手の機嫌を損ねてはいけません。
「相手の機嫌を損ねる→相手が心を閉ざす」となれば、結果的に、仕事の目的を達成することが難しくなるからです。相手が重要な取引先などであればなおのこと。配慮を欠いたメールを書いて損をするのは、結局、自分自身なのです。
仕事ができる人ほど、クッション言葉を上手に活用し、スピーティかつ効率良く仕事を進めています。そして、次から次へと仕事で成果を上げていきます。あなたもその仲間入りをしませんか?
著者:山口拓朗
『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』著者。
伝える力【話す・書く】研究所所長。「論理的に伝わる文章の書き方」や「好意と信頼を獲得するメールコミュニケーション」「売れるキャッチコピー作成」等の文章力向上をテーマに執筆・講演活動を行う。忙しいビジネスパーソンでもスキマ時間に取り組める『問題を解くだけですらすら文章が書けるようになる本』(総合法令出版)のほか、『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』(日本実業出版社)、『書かずに文章がうまくなるトレーニング』(サンマーク出版)、『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』(明日香出版社)他がある。
山口拓朗公式サイト
イラスト:いらすとや
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