子育て備忘録──備えあれば憂いなし?災害に備える

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kanpan

 先日の地震では随分と肝を冷やした。避難するほどではなかったが、我が家もよく揺れた。

 その時わたしは我が子を寝かしつけ、原稿を書いていた。三十分ほど集中し、没頭していた時だった。
 原稿は主にスマートフォンで書いているのだが、急に画面が変わった。黒地に白い文字で「緊急地震速報」と出ている。「え?」と一瞬頭が真っ白になり、混乱した。その後すぐに理解したが、その頃には既に揺れていた。そこから後は、考えるよりも先に身体が動いていた。
 スマートフォンを握りしめたまま、すぐ近くで寝ていた我が子に多い被さりながら抱っこする。そして、そのまま近くのテーブルの下へ逃げ込んだ。我が子は地震では起きなかったが、わたしがぎゃあぎゃあと大騒ぎしながら抱っこしたのでそれで起きたらしい。終始ぐずっていた。
 緊急地震速報を受信すると、不快な警報音が鳴る。そのことは知っていたし、聞こえた気はする。けれど、今回はあまり聞こえなかったし、音も覚えていない。必死すぎたからだろうか。つくづく人間の機能は不思議だ。

 揺れている間、避難するべきかどうか本気で考えていた。そしてその場合、別の部屋にある抱っこ紐と防災袋を取りに行くかどうかも悩んだ。どちらもパッとと取れる場所にはあるが、玄関からは遠ざかるからだ。またら抱っこ紐を取ってきたとしても、装着するのにもやや時間がかかる。普段でも手間取ることすらあるのに、平常心でいられない時に上手くいくとはとても思えない。けれど、ないと避難には不便なように思う。しかし、場合によってはあまり悩んでいる暇もないだろう。

 東日本大震災の折にテレビで出ていた話だ。
 亡くなった方の中には、防災袋を背負ったままの方が大勢いたらしい。中には水やカンパンなどの防災グッズが詰め込まれていたそうだ。避難する際に装備を整えてから出発されたのだろう。しかし、津波の方が早く来てしまった、ということだった。
 一瞬よぎったが、せっかく用意してあると思うと惜しい気もする。けれど、避難のために死んだのでは元も子もない。そうして悩んでいるうちに揺れもおさまり、実際には避難するほどではなかったのでほっとしたわけである。一息ついた後、すぐに防災グッズを確認した。

 後から改めて考えてみた。何でも優先順位が必要なのだろうと、今は思う。わたしが優先順位を付けるなら「防災グッズ<子ども・わたし」となる。ちなみに、子どもとわたしは同列である。子どもを守るためには、ますは自分も無事でないといけないからだ。

 抱っこ紐は取れるようなら取って、とりあえず引っ掛けるだけしてもいいかもしれない。自力で子どもを抱っこして、脱出するのが先だろう。抱っこ紐がなくても、子どもが無事ならそれでいい。
 防災グッズは家の中に同じ内容で、防災袋を何ヶ所かに用意しておけば、一つくらいはサッと持って出られるかもしれない。そして、いざという時は防災グッズも放棄することも必要なのかもしれない。命を懸けるのが惜しい物には、命を懸けてはいけないのだ。

 随分怖い思いをしたし、今回の地震もまだ警戒するようにとのお達しが出ている。この数日は毎晩、防災袋と上履きと抱っこ紐を寝室まで持って入ってから寝ている。できれば必要ないのに越したことはないのだが、安心材料にはなる。
 実際に起こってみないと、なかなか考えつかないこともあった。子どもの年齢にもよっては用意する物も変わってくる。焦ってからでは遅い。どうしたら守れるか、初めて真剣に考えるきっかけになった。

※写真は筆者撮影

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(執筆者: 高梨 廉) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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