【ゴーパッパって何?】「笑顔で空模様を伝えたい」と話す岡田みはるさんに“気象予報士”のお仕事について聞きました

f:id:arkcomm:20160805171557j:plain“明日晴れたらいいな”というささやかな幸せから、“積み荷の陸揚げがあって波高が知りたい”というのっぴきならない事情まで、さまざまなお天気に関する情報を伝えてくれる気象予報士さん。

夏と冬の年2回行われる国家試験に合格すればなれることは知っているけれど、資格をゲットしてからの道については、あまりイメージできませんよね。 いざ予報士になったら日々どのような仕事が待っているのかを、現役のお天気お姉さんとして活躍中の岡田みはるさんに聞きました。

■気象予報士はサービス業の一面も

—現在はどんなお仕事をしているのですか?

岡田:TBSの「ひるおび!」で森朗さんが出演している、お天気コーナーのサポート業務をしています。

気象予報士は表に立つ出演の仕事だけでなく、チームで予報や季節ネタを考えたり、番組でアナウンサーが読む原稿を考えたり、さまざまな裏方ともいえる仕事があります。

TVやラジオに出演している予報士はほんの一握りかもしれませんが、見えないところで多くの予報士が働いているんです。

以前、アイドルの女性のために原稿を書く仕事をしていたこともありますよ。原稿書きも好きで、こう言ったらかわいいかな、視聴者により伝わるかな、と思いを巡らせたりしてなかなか楽しいものです。

—かつて舞台女優やモデルの仕事をしていた岡田さんが、気象予報士になっていたのには驚きました。気象予報士は試験に受かったらすぐに仕事があるのですか?

岡田:試験に受かった後で予報の仕事に就く方法は、だいたい3パターンです。ひとつは気象予報士を必要とする会社や官公庁・地方自治体の求人に応募すること。農林水産業や港湾関係など天気が密接に関係する業界は少なくありません。最近では、気象災害に備えて地方自治体の求人が増えつつあります。

もうひとつは、ウェザーマップのような気象会社に所属して仕事をする形。3つめは、日本気象予報士会という社団法人の会員になり、仕事の情報を手に入れるスタイルです。 全国に約1万人の予報士がいる中、予報業務に就いているのはごく一部。

学校の先生や公務員、医師の方が、本業とは別に有資格者だったりします。地域で、母親や子どもを相手にお天気教室を開くなどして活躍するママさん予報士もいます。

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—予報士としてどんな仕事をしてきたのか教えてください

岡田:最初に携わったのは、波の予報でした。港湾作業者向けに、波の高さをお知らせする仕事です。

他には高速道路の天気予報に出演したりと、テレビで大勢の視聴者にお伝えするのとは対照的で、割とターゲットをしぼった情報をお伝えしていました。

同じ高速道路でも、人によって知りたいことが違いますので頭を使います。たとえば、平日や夜間に高速道路を走るプロのトラックドライバーと、土日に増える、土地に不慣れな行楽の家族とでは、伝えるポイントが変わってくるんです。

—印象的だったお仕事を教えてください

岡田:初めての仕事ということもあってか、波の予報が一番印象深く気持ちに残っています。波が高くなると、港湾での作業ができなくなりますので、予報を出す方も、受け取る方も真剣そのもの。

ある時、どしゃ降りの雨と高波のタイミングを予想して、それを目安に港湾業者さんが作業スケジュールを組まれたんです。その日は見ごと予報が的中して、「なんとか作業が間に合ったよ」とはずんだ声で感謝の電話をいただきました。とてもうれしかったことを覚えています。

自分が出した予報で喜んでくれる人がいる…気象予報士ってサービス業でもあるなって感じた瞬間でした。

—はずした時はやっぱりショックなんですか?

岡田:くやしいですね。でもなぜはずれたのかを突き止められたらしめたものです。次に同じ気圧配置や気象条件になったらはずしません

■天気は刻々と変わるので、予報作業は24時間体制。どんなにヘロヘロでも出演時はシャキッと笑顔で。

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—気象予報士の1日のスケジュール感を教えてください

岡田:当たり前といえば当たり前ですが、天気は24時間変わり続けています。ですから予報だって24時間体制です。体力はとても大事! 高速道路の天気予報では、午前2時に起床して・・・・・・。

—気象だけに!?

岡田:ええ、まぁ(困惑)。朝の2時に起きてスタジオにむかい、収録は5時~6時になります。実質2時間くらいで専門天気図等を読んで原稿を書くといった準備をします。

気象庁は午前1時と午後1時の2回、最新の数値予報資料(専門天気図)を出します。予報士はそれを指示報とよばれる解説資料を手がかりにしながら読み解いているんです。

—午前2時起きって!(驚) 前日は相当早めに寝ないとダメですよね。

岡田:慣れるまでは大変でした。特に荒天時は、地域に気象情報の発表があるかどうか、注意報警報の発表や切り替えなどがあるか、常に注意を払わなくてはなりません。

予報士試験に合格するまでも大変ですが、実際に仕事に就いてみると、何時に何が発表になるのかという予報士がもつべき時間感覚を実地かつ体当たりで覚えるのが大変でした。

—ヘロヘロでも、やらなきゃいけない、がんばりどきがありますよね

岡田:はい、そうです。

■好きな天気図は“FXJP854”。初めて覚えた業界用語は“ゴーパッパ”

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—岡田さんが天気予報をするポイントを教えてください

岡田:予報士さんによって好きな専門天気図は違います。多くの方がそうかと思いますが、寒気の入り方は必ずチェックします。

私の場合はそれにプラスして、“FXJP854” という子がお気に入りです。

—何かのコードネームっぽくてかっこいいですね

岡田:そうでしょう。“FXJP854”はとっても優秀で、暖かく湿った空気が入って来るのか、乾いて冷たい空気が入って来るのかが、これ1枚で分かる優れものです。

FXJP854は、他の予測データにも反映されますので見なくても事足りてしまう資料かもしれません。ただ、すべてが反映されるわけではないので、これをしっかり見ておくことで、雨や風の変化の見落としがぐっと減るんです。空気の入れ替わるタイミングも。読み込んでおくと、より深いレベルの解説ができます。

—“FXJP854”は毎日欠かさず見ているのですか?

岡田:ええ、毎日見続けていると、いつもと違う時が分かるようになります。

試験では、台風や大雪の事例が出題されますが、実際は毎日そんな大荒れの天気になるわけではありません。しかし、普段からちょっとした違い、小さな変化に気づけるようにしておくことはとても大切なんです。

そういう地味な作業が、災害を引き起こすような現象にいち早く気づける、予報士としての瞬発力や体力を養うように感じます。

—大気に対する感覚が鋭くなったら能力者みたいでカッコイイです!

岡田:超能力は言い過ぎですが、感覚にきめ細やかさが出るのは本当ですよ。 予報士の資格を取ると、自然や四季のうつろいに敏感になれると思います。

—気象予報士らしい業界用語を教えてください

岡田:予報士に成り立ての頃は“ゴーパッパ”がカッコイイと思っていました。「ゴーパッパ今年は元気ないね」「ゴーパッパの張り出し」って何だか専門的で素敵だと思いませんか。意味は、上空高いところの500ヘクトパスカルという気圧面で見た場合の、5880m等高度線のこと。これは、日本の夏の暑さをもたらす太平洋高気圧の目安です。

—コミカルな響きがあるので、もうちょっと知的な用語をお願いします

岡田:そうですか? いいと思うんだけどなゴーパッパ・・・・・・。ではJPCZはどうでしょう。日本海側の天気を左右する、風の収束のことです。

冬の日本海側は、このJPCZの影響を受けて急に大雪が降ったり、あられや突風に見舞われたりとドラマティックに天気が変化するんですよ。

■社会的なニーズやビジネスの観点からも、活躍の場は広がるはずーー。気象予報士の“これから”

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—最後に今後の目標をお聞かせ願えますか?

岡田:番組で災害の現地取材をすると、より踏み込んだアドバイスができる予報士でありたいとつくづく思います。災害が起こりそうな時に、予め危険性を伝えるのはもちろん、避難のしかた、さらに避難が難しい段階になってしまったら無理せず家の2階以上に移動したほうがよいなど、的確に話せる予報士です。

また、これはすぐには難しいかもしれませんが、健康に役立つ天気予報の普及も夢です。アメリカやドイツのように、健康天気予報が気軽にお茶の間で見られるようになるといいなという夢があります。

—予報の世界には、まだまだ可能性があるんですね

岡田:気象庁のスーパーコンピューターがはじき出す計算結果には、まだまだ活用の余地があるように思えてなりません。新しい気象サービス、新しい予報士の仕事はこれからもぞくぞく生まれていくでしょうから、ぜひ、資格を取り、活躍される方が増えるといいなと思っています。

—ありがとうございました

協力:ウェザーマップ http://www.weathermap.co.jp/

文:本山光

編集:大山勇一(アーク・コミュニケーションズ)

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