原発メーカーの社員が「被災地ボランティア」に行く理由
「実は僕、原発メーカーに勤めているんです」
福島県いわき市で2011年6月11日に開催されたライブイベント「SHARE FUKUSHIMA」。その参加者の一人は、イベントに申し込んだ「意外な理由」を明かした。
メディアジャーナリスト津田大介さんが企画したこのイベントは、被災地での野外ライブ観賞とボランティアツアーがセットになったものだ。東京発のバスでいわき市にやってきた約100人の参加者は、ライブ前に会場付近でガレキ撤去やゴミ掃除のボランティアを行う。さらに1人あたり1万円の参加費は、地元の被災者のため、すべて義援金として寄付される仕組みだ。
「被災地にボランティアに行きたいが、どうしたらいいか分からない」という人のため、津田さんが友人のアーティストたちと一緒に企画した野外ライブ。冒頭の発言の主である男性は、津田さんのツイッターでイベントの存在を知り、すぐに申し込んだ。ライブに出演したシンガーソングライターの七尾旅人さんのファンだったこともあるが、なによりも大きかったのが、ボランティアに参加できることだった。
男性が勤めているのは、誰もが知っている総合電機メーカーで原子力発電の分野でも有名だ。原発関係の業務に直接たずさわっているわけではないが、自分の会社が原発に関わっているのは事実である。
「今回の震災で、確実に原発が世間に大きな影響を与えています。なのに、会社はまったく原発推進の立場を崩さない。部署が違うとはいえ、給料のいくらかは原発部門が稼いだもの。そのような立場の自分は、常に思う所がありました。もともと今日は反原発のデモに参加しようと思っていましたが、それよりもボランティアで現地の方々に直接、お役に立てるほうがいいのではないか。そう考えました」
実はこれまでも、何度かボランティアに応募しようとしていたというこの男性。しかし、特に専門的な技術があるわけではないため、断られたり、応募をためらってしまったりしていたそうだ。そんな中、非常に「申し込みやすい」ボランティア付のライブツアーと巡り合ったことで、彼は一歩を踏み出せたという。
念願叶っての初ボランティア。その感想を聞くと、
「こんなことを言っていいのかわからないけど『楽しかった』です。今後も他のボランティアに参加していきたい。ようやく一歩踏み出せました」
という答えが返ってきた。
(大住有)
【関連記事】
観光バスで被災地へ 「ボランティア初心者」の第一歩
放射線下の作業は「年寄りの暇つぶしに限る」 暴発阻止行動隊、語る
「魚の腐敗臭どうにかして」 被災地・石巻で「魚回収プロジェクト」始動
ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。