そのベランダ、本当に安全?「子どもの転落事故」は5月が最多! 未然に防ぐために今日からできること4選

あっという間に春が過ぎ去り、気温がぐっと上がってきた5月。「帰宅後に窓を開けて風を通す」「今年初めてエアコンを使う」など、季節の変わり目ならではの行動も多くなるのではないでしょうか。実はこの“日常の変化”が、思わぬ事故につながるリスクにもなっているのです。

東京都消費生活部によると、こうした季節の変わり目となる5月は、窓やベランダの出入り口の開閉が増加する傾向にあることから、子どものベランダからの転落事故が1年間で最も多く発生するタイミングだそう。

今回は転落事故が起きてしまう背景や、事故を未然に防ぐ対策方法を紹介します。

5月にベランダ転落事故が最多!

▲出典:東京消防庁「こどもが住宅等の窓・ベランダから墜落する事故に注意!」

東京消防庁によると、令和2年から令和6年の5年間で、一軒家やマンションなどの住宅等の2階以上からの転落により、5歳以下の子ども63人が救急搬送されています。

月別と搬送データとしては、5月が最多、次いで10月と季節の変わり目に頻発していることが読み取れます。

ヒヤリ! ハッと! 消費者体験談をご紹介

実際に子どものベランダ転落事故を経験した消費者や、ヒヤリ・ハット体験をされた消費者の方の声も数多く届いています。

・自宅の2階のベランダで台に乗って遊んでいたところ、ベランダの柵を飛び越えて転落。(2歳)
・親が外出中に2階のベランダを乗り越え、ベランダの柵にぶら下がった後、足から転落。(6歳)
・夫と息子が2人でリビングにいて、夫がスマホを見ている間に息子が一人でベランダに出て、椅子にのぼり身を乗り出して外の車を見ていたことがあり、ヒヤリ。(1歳)
・子供が施錠されていないベランダのドアを開けて、子供用の軽いイスを持ち出し、そこに立ってのぼろうとしていたことがあり、ハッとした。(3歳)

では、こうした事故が発生してしまう背景にはどのような原因があるのでしょうか。

事故が起きる背景、ベランダの手すりの高さ「110cm」は本当に安全?

ベランダの手すりは、建築基準法により、110cm以上の高さと定められています。この最低基準である110cmという高さは、子どもたちからするとどのくらいの高さなのでしょうか。

文部科学省が実施した令和6年度の学校保健統計の調査結果によると、5歳男児の平均身長が110.6cm、女児が109.6cmとなっており、「5歳児の平均身長とベランダの手すりはほぼ同等の高さ」であるとわかりました。少しジャンプしたり、土台となるようなものに登ってしまえば、容易に乗り越えることができてしまうのです。

実際に、消費生活部がおこなったベランダの手すりに関する実証実験では、6歳児はほぼ全員、4歳児は7割、2歳児は足元に足掛かりとなるものがあれば、110cmの手すりに見立てた障害物を乗り越えられる子どもがいることが明らかとなっています。

今からできるベランダ転落未然防止対策4選

こうした実証結果を踏まえ、消費生活部が呼びかけている「今からできる未然防止対策4選」を紹介します。

1.ベランダや窓付近に椅子、テーブル、プランターなど足がかりになるようなものを置かない
2.エアコンの室外機は、手すりから60cm以上離して設置する
3.子どもの手の届かない位置にも鍵(補助錠)を設置する
4.ベランダや、ベランダに繋がる部屋に子どもを一人にしない

どれも当たり前のことかもしれませんが、その当たり前ができていれば、直近5年間で発生した63件もの事故を防ぐことができたかもしれないのです。
事故を未然に防ぐためには、私たちの認識から変化させていく必要があります。

ベランダ転落事故を未然に防ぐ施策は他にも!

実は消費生活部以外にも、様々な団体が子どものベランダ転落事故防止のための対策を実施しています。今回はその一部をご紹介。

・東京都住宅政策本部「子育て世帯向け補助事業(「子供を守る」住宅確保促進事業)」

▲出典:都庁総合ホームページ「子育て世帯向け補助事業」より

制度概要は、マンションに住んでいる人が、子どもの安全確保のための改修工事を行う際に、東京都の補助金が受けられる制度です。補助対象となる方は、「①分譲マンションの区分所有者で、自身が居住している」「②賃貸マンションの賃借人で、自身が居住している」「①②どちらかの要件に加えて、同居者に小学生以下の子供がいる」ことを満たす方となります。

補助対象工事には、転落防止手すり等設置(ベランダや窓)、ベランダに面する窓へ開口制限ストッパーや補助錠等の設置、チャイルドフェンス等の設置が挙げられます。
※補助対象経費の3分の2が対象で、上限金額は30万円/戸

・国土交通省「子育て支援型共同住宅推進事業」

▲出典:国土交通省公式ホームページ「転落防止チラシ」より

共同住宅(賃貸住宅及び分譲マンション)を対象に、事故防止や防犯対策などの子どもの安全・安心に資する住宅の新築・改修の取り組みや、子育て期の親同士の交流機会の創出に資する居住者間のつながりや交流を生み出す取り組みを行っています。

中でも、子どもの窓やベランダ等からの転落事故防止取り組みを支援する施策が充実。バルコニーの設置、補助錠・窓手すりの設置、室外機柵の設置などが対象の工事となっており、最大100万円が補助費用として支援されます。

・NPO法人 Safe Kids Japan 「Safe Kids家庭訪問」

▲出典:Safe Kids Japan公式ホームページ「補助錠の選び方リーフレット」より

子どもの窓・ベランダからの転落予防のための家庭訪問マニュアルです。補助錠の設置を支援する仕組みなど、保護者の皆さんの負担を軽減しながら、事故予防について一緒に取り組むためのサポートマニュアルを作成しています。

訪問者と保護者が一緒に住宅内で対策が必要な場所などを確認しながら、補助錠を選んで設置するための資料として活用します。

以上3種類の施策からも、ベランダ転落事故の未然防止施策には、国を挙げても注力していることが分かりますね。

油断禁物? まずは一度見直しを!

今回取り上げた子どものベランダ転落事故は、小さなお子さまのいるご家庭にとって、5月に限らず通年で注意したい課題です。「自分たちは大丈夫」と思わず、まずはベランダや窓付近の周辺環境の見直しからはじめてみてはいかがでしょうか?

消費生活部は毎月、消費生活における事件事故を未然に防ぐための注意喚起情報を発信しているので、今後も公式ウェブサイトをチェックしてみてください。

公式ウェブサイトはこちら:https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/

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