映画『スリー☆ポイント』山本政志監督×蒼井そらトークショーレポート「からみシーンは監督・演出“蒼井そら”」
『闇のカーニバル』『ロビンソンの庭』『ジャンクフード』などの作品で世界を圧巻させてきた山本政志監督が“超インディーズ宣言”をかかげて作り上げた新作『スリー☆ポイント』。東京編に出演した蒼井そらさんと山本政志監督のトークショーが作品上映中の渋谷ユーロスペースで行われました。一部抜粋してお伝えします。
超インディーズ宣言 『スリー☆ポイント』公式サイト
http://three-points.com/index2.html
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映画『スリー☆ポイント』山本政志監督×蒼井そらトークショー
作品上映後、23時よりトークショー開始(トークショーはHMVオンラインの長澤さん司会のもと、すすめられました)。
※以下、一部蒼井そらさんを“そら”または“そらさん”、村上淳さんを“村淳”と略しています。
【注意】内容に若干のネタバレを含みます。
---蒼井そらさん登場---
●ゲリラだらけの撮影
司会:『聴かれた女』以来の2回目の山本政志監督作品の出演ですが、振り返ってみて『スリー☆ポイント』はいかがでしたか。
蒼井:「山本さんはゲリラですごい大変」とよく言われていて、前回の『聴かれた女』では外のシーンがなかったんですけど、今回の撮影はゲリラだらけでした。私、すごい苦手なんです、ゲリラ。
渋谷のスクランブル交差点のシーンが一番きつかった。小心者なんで「あーーむりむりむりっ!」っていう感じで。でも、できあがってみたらそのシーンがすごく良くて、スクリーンを通して見ていい映像だなって。女優として一つ経験になりました。
司会:ほかに大変だったシーンはありますか。
蒼井:公園で、私が演じている沙紀が「私っておかしい?」って言って、井賀役の村上淳さんが「おかしくねーよ!」って大声で叫ぶシーンがあるんですけど、周りにいる人は何にも知らなくて、カメラも遠いですし。でも、反応がないんです。みんな無関心で通り過ぎていくんです。あー、東京だなって思いました。
一番最後の「私は沙紀だよ」って言うシーンも、新宿の伊勢丹のところなんです。村上さんが走ってきて倒れて、私はあとから入っていくんですけど、すごいドキドキしながらやっていましたね。
●沙紀のような女性について
司会:そらさんが演じた沙紀という役は、男性のタイプに合わせて、洋服を変えたり、キャラクターまで演じているという女性像ですが、そういう女の子ってどう思いますか。
蒼井:沙紀の場合は、本人になりきろうとしているので極端ですけど、普通女の子だったら、好きな人に合わせようと思っているわけではなくても合っていっちゃう。こういう服装好きなんだと思ったら、ちょっと着てみようとか、こういう音楽好きなんだと思ったら、一緒にいると聞く時間や観る時間が多いから、そういうものに影響されていくのかなと思いますけどね。
ちなみに私は本当に変わりやすいです。
●山本監督の現場
司会:山本監督の映画の現場というのは、どんな感じなのですか。
蒼井:その場その場で決めていく気もするんですけど、でも実はしっかり台本通りで、最初から頭にあることをはきだしている中で、ひとつづつ作り上げていくのかなと思います。現場は明るいですね。基本は私、山本さんのことをうさんくさいおっさんだと思っていますけど……。
---山本監督登場---
蒼井:このトークショーに出るというのに酒を飲んでくるし。
山本:もともと俺今日出るつもりなかった。ホントホント。役者の時には出るつもりないから。役者さんはもう役者さんで、光ってもらって、その時は後の方で「うさんくさい」って言われながら、それに喜びを得ようと。
●監督が蒼井そらを選ぶ理由
司会:山本監督がそらさんを使いたくなるというのは、どういうところなのでしょうか。
山本:カンがいいんだよね、カンが。
『聴かれた女』のリハーサルをやったときにびっくりしちゃって、いきなり初日にハードルを上げたんだ。普通だったら台本を頭に入れてもらって芝居に入るけど、初日で台本を読むなというところから始めたから。
蒼井:エチュード(即興劇)ですもんね。
山本:そういうことが自分の中の映画作りでできるやつが、あんまいないんだよね。『聴かれた女』の時「あぁ、そらすげぇな」って思って、で、まあ今回もそう思った。
●からみのシーンは“そら監督”
山本:からみのところはね、ほんと“そら監督”みたいなもんだからね。やっぱ緊張感あるし。
蒼井:緊張感出しますからね。
山本:すごいんだよ、ほんとに。
あの現場に関しては俺も村淳も明らかにそらに食われてちゃってる。村淳も「そらさん、すごいっすね」って。どういやいいんだろうなぁ。なんか、もうそらの空間にしちゃうんだよ、現場を。で、俺はもう単なる付添人の町内のおやじみたいになってる。暖かく見守って、あとはごっそり「おれの才能だ」っていいふらしゃいいか、みたいな。うまいんだよ。
蒼井:そういうシーンに関しては負けられないっていう気持ちが、人一倍大きいのかもしれないですね。
山本:演出もそらだと思うけどな、明らかに。そらが出るとあのシーンが充実してくるじゃん。
エロチックな表現というのが、日本映画のどこからか貧しくなってきちゃってて、韓国映画とかは役者さんもみんながんばってやってるけど、日本映画は「脱ぎません!」みたいな感じでさ。ひどいのになるとパンツつけたまんまやっていたりして、「え? 超能力者か、おまえは!」と思うようなとこあるじゃん。そこはやっぱりね、ちゃんとやったほうがいいと思うし。
俺はそらがいないと、けっこうからみとかスポーツ的になっちゃってダメだと思う。
蒼井:そんなの全然エロくないじゃないですか。パンパンやればいいだけじゃないんですから。だからあたし緊張感出すんですよ。
もちろんアダルトをやっているので脱げるという感覚はあるんですけど、「じゃあ行きます」という感じで、いつでもどこでも脱いでたら緊張感が出ないので、しっかり隠しながら撮影に挑んだり、そういうことを心がけています。
司会:園子温監督が、そういうシーンをちゃんとまじめに必要があるから撮るという場面でも、理解を得られないということが多いとおっしゃっていました。そらさんみたいな方はとても貴重だと思います。
山本:役者がもう貧しいということだね。
●村上淳の暴走
山本:今回、村淳もよかったよね。大知(渡辺大知さん)も軽い感じできたしな。一番危ないと思ったのは、村淳が暴走したシーン、最高。
蒼井:柿ピーならべるやつ。
山本:そうそうそうそう、あれけっこうやばかったよな。
蒼井:あれは台本に書いてない。
ビールを飲みながら、「ブーーッ」て吹いてるじゃないですか、映像でみると全然かかっていないんですけど、すっごいかかっていたんですよ、これで笑ったら絶対今のシーンがダメになるってこらえました。
山本:その前にむちゃくちゃ暴走していて、もうわけのわかんないシーンになってたんだよな。
蒼井:私もイライラしながらさきいか食べてた。何回もやっていたからあんなにイライラしていたのかも。
山本:あそこで大地が違うノリしたりとか、そらが笑ったりするとあのシーンはNGになるんだけど、うまくまとまっちゃったから。
蒼井:全然カットがかからないので、パッとかけられたときにどうしようという感じになって、「これは無理、カットなんて関係ない!」って、立ち上がってフレームから外れようとしたら、カットがかかった。こういうのまでちゃんと芝居なんだなって、すごくエチュードでした。
山本:けっこう時間かかってあそこに着地したんだもんな。あまりにも脱線しすぎて「ちょっと待 て!」って止めたの何回かあったもんな。止めないとあの馬鹿(村淳)なにやるかわかんない。熱中症にでもかかったかと思ったよ。
おちついてよかった。あれはほんとスリルとサスペンスだった。
●みなさんへのメッセージ
司会:最後にお客さんに何か一言ありましたら。
蒼井:冒頭の沖縄編をみたときに、監督も出てるし、カニを捕まえてるし、何が始まるんだと思いました。沖縄編と京都編のシーンが交互に出てきて、東京編の『Switch』もこういう形で繰り広げられるのかと、ちょっと不安になりながら観ていたんですけど、最後しっかり終われていたので、よかったです。ああいう行き当たりばったりで映像ってとれるんだ、すごいなって思いました。
山本:毒があるなおまえ。
蒼井:ポスターを見ると原始人のような方が出ていて、これどんな映画に参加したんだろうと思いながら本当に不安になったんですけど、そういう面白さも含めて、たくさんの人に観てもらいたいです。みなさん広めて欲しいなと思いますのでよろしくお願いします。
山本:宗教活動とかね、壷(つぼ)を売ったりするのと一緒で、どんどん広めてもらって壷(つぼ)だらけにするようにね。よろしく。
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東京編に出演された蒼井そらさんは、サッパリした強い意志を感じさせる美しい瞳の女性でした。映画でも彼女の演技にドキドキ。その存在が生と性と死と狂気を際立たせていました。女優、タレント、AV女優、歌手とさまざまなステージで活躍されている彼女の今後に期待です。
作品を観ると、そのエネルギーとセンスに圧倒されますが、山本監督は近所を散歩している途中で立ち寄ったかのように自然に登壇、お話をされていました。これからもムチャをやっていただきたい。次の作品も、そのまた次の作品も観てみたい、そんな方でした。
『スリー☆ポイント』はは自由気ままなロードムービー、激しさと緊張を含んだフィクションとノンフィクションの間の物語、そしてサイコサスペンスという全く異なる内容・場所で展開されるストーリーがちょうどいい割合でミックスされている不思議な、そして色々な意味で衝撃的な作品。見逃さないほうがいいかも。
『スリー☆ポイント』は渋谷ユーロスペースで6/17(金)までレイトショー公開中。
トークショーはまだまだ続きます(いずれも映画上映後23時より)。
・6月3日(金) ゲスト:吉永マサユキさん(写真家)、山本政志監督
・6月4日(土) ゲスト:飯田和敏さん(ゲームクリエーター)、山本政志監督
・6月7日(火) ゲスト:村上淳さん、渡辺大知さん
※最新情報は劇場もしくは下記の公式サイトをご確認ください。
『スリー☆ポイント』公式サイト Information & News
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●山本政志監督プロフィール
『闇のカーニバル』(’83)が、ベルリン・カンヌ映画祭で連続上映され、ジム・ジャームッシュらニューヨークのインディペンデント監督から絶大な支持を集める。
また、JAGATARA(じゃがたら)のファーストアルバム『南蛮渡来』や日比谷野外音楽堂での『アースビート伝説’85』を始めとする多数の音楽イベントをプロデュース、江戸アケミや町田康(町田町蔵)など当時のパンクロッカーたちを俳優として起用するなど、ジャンルを超えた独創的な活動で注目される。
『ロビンソンの庭』(’87)-ベルリン映画祭Zitty賞/ロカルノ映画祭審査員特別賞/日本映画監督協会新人賞-では、ジム・ジャームッシュ監督の撮影監督トム・ディッチロを起用、香港との合作『てなもんやコネクション』(’90)では専用上映館を建設、『ジャンクフード』(’97)を全米10都市で自主公開、『リムジンドライブ』(’01)では単身渡米し、全アメリカスタッフによるニューヨーク・ロケを敢行するなど、国境を越えた意欲的な活動と爆発的なパワーで、常に新しい挑戦を続けている。
山本政志監督『Twitter』
http://twitter.com/#!/ma345to5
●蒼井そらさんプロフィール
2002年AVデビュー、以来人気AV女優として確固たる地位を獲得。
その後テレビ、ラジオに活躍の場を広げ、2005年『嬢王』(TVドラマ)ではメインキャストのひとりに選ばれ俳優としての評価も高まる。人気タレントをもしのぐ知名度を誇り、海外での人気は特筆ものである。特に中国では中国版ツイッターのフォロワーが294万人を超す(2011年5月31日現在)という驚異的な人気ぶりである。山本政志監督作品『聴かれた女』の主役に抜擢(ばってき)され、確かな演技力で監督からの信頼を獲得、本作で3年ぶり2度目の山本作品出演。東京編である『Switch』で難役沙紀に力強く挑んでいる。6/4に公開される『軽蔑』にも出演、2011年1月中国で『毛衣(意味:セーター)』という楽曲で歌手デビュー、また深夜バラエティ番組『おねがい!マスカット』から派生したユニット『恵比寿マスカッツ』にも参加、アルバム『ザ マスカッツ〜ハリウッドからこんにちは〜』が先日発売され売り上げを伸ばしている。これからの活躍が期待されるマルチな女優である。
蒼井そら『Twitter』
http://twitter.com/#!/aoi_sola
苍井空『新浪微博』
http://weibo.com/n/苍井空
●Three☆Points-スリー☆ポイント-予告篇 『YouTube』
●恵比寿マスカッツ チヨコレイト 『YouTube』
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