原子力をめぐる不透明さ
今回は河野太郎さんのブログからご寄稿いただきました。
原子力をめぐる不透明さ
2011年3月22日付け、環境エネルギー政策研究所 田中信一郎客員研究員の「「未曾有の津波」は東京電力を免責するのか−土木学会指針と電力業界の関係−」というペーパーがある。
「「未曾有の津波」は東京電力を免責するのか−土木学会指針と電力業界の関係−」
https://getnews.jp/archives/106918
※ガジェット通信に寄稿していただきました。
東京電力は、土木学会が出した指針に基づいて津波の高さを想定していたが、今回の津波はその想定を大きく超えるものだったと言っている。ところがこのペーパーは、指針を策定した土木学会の原子力土木委員会津波評価部会は、電力会社とその身内が大半を占めていて、“第三者性”が疑わしいという。
このペーパーの結論は「利害当事者が策定に関与し、発注事業者の影響力が強い学会で策定されたという事実は、指針が“お手盛り”なのではないかと疑わせるに十分である。よって、土木学会指針を根拠として、東京電力が福島第一原発の事故における補償を免責されるということは、決して認められるべきではない」。
これを読んでその土木学会の原子力土木委員会津波評価部会のメンバーを調べてみた。指針が策定された頃のメンバーや議事録は見つからなかったが、最新の津波評価部会のメンバーが載っていた。
それによると
原子力土木委員会 津波評価部会 委員名簿 平成23年3月
主査 東北大学(元建設省九州地方建設局建設技官)
委員
電力会社等 11名
委員 東北電力(株)土木建築部(火力原子力土木)
委員 東京電力(株)原子力設備管理部
委員 中部電力(株)発電本部土木建築部
委員 北陸電力(株)土木建築部
委員 関西電力(株)土木建築室
委員 中国電力(株)電源事業本部(耐震土木)
委員 四国電力(株)土木建築部
委員 関西電力(株)土木建築室
委員 九州電力(株)土木部
委員 日本原子力発電(株)開発計画室
委員 電源開発(株)原子力事業本部原子力建設部
大学 8名
委員 東京大学大学院 大学院新領域創成科学研究科
委員 東北大学大学院 工学研究科 附属災害制御研究センター
委員 京都大学防災研究所 巨大災害研究センター
委員 東京大学 地震研究所
委員 関西大学 社会安全学部
委員 岐阜大学 工学部社会基盤工学科
委員 名古屋大学地震火山・防災研究センター
委員 防衛大学校
官公庁 3名
委員 経済産業省
委員 国土交通省 国土技術政策総合研究所
委員 気象庁 気象研究所
独立行政法人 2名
委員 (独)港湾空港技術研究所
委員 (独)原子力安全基盤機構 解析部
幹事
幹事長 (財)電力中央研究所 地球工学研究所 流体科学領域
電力会社 2名
幹事 東京電力(株)原子力設備管理部
幹事 東京電力(株)原子力設備管理部
電力会社系列企業・関連法人 7名
幹事 東電設計(株)技術開発本部
幹事 東電設計(株)港湾・海岸部
幹事 東電設計(株)港湾・海岸部
幹事 東電設計(株)
幹事 (財)電力中央研究所 地球工学研究所 流体科学領域 委員兼任
幹事 (財)電力中央研究所 環境科学研究所 環境科学領域
幹事 (財)電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域
コンサルタント 5名
幹事 (株)ユニック
幹事 (株)エングローブコンサルタント
幹事 (株)三菱総合研究所
幹事 (株) 三菱総合研究所
幹事 (有)シーマス
オブザーバー 一般社団法人 日本原子力技術協会
このメンバーが津波評価部会だと言われても、とても中立公正に指針が作られたとは思えない。
原子力関係のあらゆる場面でこのような疑わしいことが起きる。
例えば、原子力のコスト。原子力発電で得られた電力のコストについて、経産省が発表したコストが正しいかどうか検証しようとしてバックデータを要求すると、出された資料の大半は黒塗りだ。なぜ、バックデータが出ないのかと尋ねると、それは電力会社の企業秘密だからだと経産省は答える。しかし、その第三者には検証できないコストに基づいて、様々な負担が決められる。
かつて超党派の自然エネルギー議員連盟が自然エネルギーの促進のために自然エネルギーによる電力の買い取りをルール化しようとしたことがある。
経産省は、それをつぶすために大急ぎでRPS法案をつくり、各党の幹部に根回しをして買い取りルールを潰し、RPSを導入した。その結果、日本の再生可能エネルギーは諸外国と比べ、大きく遅れを取ることになった。
昨年12月には資源エネルギー庁の長官が直接、東京電力に天下った。原子力、放射線、核などに関する独立行政法人、財団法人、社団法人は数限りなくある。そうした団体に天下った数、出された補助金の金額を何度も資料請求したが、時間がかかりますと返事が来たまま、包括的な資料が出されたことは、自民党政権、民主党政権を通じて一度もない。
さらに、核燃料サイクルに至っては、その問題点がまともに議論されたことすらない。核燃料サイクルの問題に関しては、約11分間の次のビデオをご覧ください。
「河野太郎の指摘 「日本のエネルギー政策」シリーズ1 原子力発電」
http://www.taro.org/2009/08/post-609.php
経産省と電力会社の癒着は、シロであることが証明されない限り、クロだ。
原子力に関するこうした不明朗なところが是正されない限り、安全性も確保されない。原子力は、その政策、体制、経済性、優位性、そして安全性、すべてがお天道様のもとで見直しが必要だ。
※ガジェット通信では今回の大型地震に関する情報・動画・写真・原稿などの提供をお待ちしております。
執筆: この記事は河野太郎さんのブログからご寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信
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