セ・リーグはどこまで粘るのか?

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セ・リーグはどこまで粘るのか?

東日本大震災の影響で東京電力管轄内の関東圏でも「計画停電」が実施されている。

既にご存知かとは思うが、今回の計画停電では、それぞれの地域を数グループに分け、時間帯により最大3時間づつ送電を停止して大規模停電が起きない様に制御する、という内容だ。

ただし、実際には東京電力が消費電力をモニタリングしながら「可能な限り停電は避ける方向」で送電停止するため、計画停電区域内でも毎回停電する訳ではない。

「計画通りに停電させた方が良い」という意見も無くはないが、交通機関の混乱や医療機関の対応を考慮した場合、極力停電させない方向で調整している電力会社の姿勢は評価すべきだろう。

そして計画停電区域に入っているのに意外と停電しない背景には、やはり「節電」を意識してる人達や企業の努力がある。店舗・企業における営業時間の短縮や必要最低限の照明、暖房節約といった、様々な積み重ねにより停電を回避しているのである。

このように日本中が節電にも力を注いでいる時期ではあるが、日本プロ野球組織 セントラル・リーグ(セ・リーグ)では、当初の予定通り3月25日のリーグ開幕を推し進めた。セ・リーグは、パシフィック・リーグ(パ・リーグ)や選手会と揉めたりしながらも、なぜか強行する姿勢を曲げようとはしなかった。

しかし監督省庁となる文部科学省より要請が下される。再度の検討の結果、「(セ・リーグ開幕は)3月29日に延期し、可能な限り節電してナイトゲームも開催する」と発表したのだ。

この発表を受け、文部科学省は再び「ナイトゲームの見直し」を要請することとなる。

文部科学省からの通達文を抜粋すると
1. 厳しい電力需給事情を踏まえ、計画停電が行われている東京電力・東北電力管内以外の地域で試合を開催するよう、可能な限りの努力をお願いします。

2. 特に、東京電力・東北電力管内の地域では、夜間に試合を開催することは厳に慎むようお願いします。
とある。

「厳に慎むようお願いします」と「お願い」の形をとりつつも、実質は監督省庁からの厳しめの指導と受け取るべき内容である。

ところが、セ・リーグ側の対応は先にも述べたように「4日間の延期」と「ナイトゲーム中も可能な限りの節電」というもの。これには文部科学省としては、「再考して頂きたい」という要請を出さざるを得ない。

再びセ・リーグ側は代替え案を模索し始めたようであるが、巨人の滝鼻卓雄オーナーは
開幕はお上(政府)が決めることじゃない。節電に協力しろということでしょう
と露骨に不快感を示したそうで、まだまだ揉めそうな雰囲気である。

これまでの経緯とセ・リーグ側の発言、――とくに読売巨人軍の対応は、Jリーグなど他のスポーツが「自粛」「協力」するムードの中では異質なものである。

無論、プロ野球という“企業”として考えた場合、「利益」を上げたいという本音はあって当然だ。平日は昼間よりもナイターの方が集客も見込めるだろうし、年間の試合数はできるだけこなすのが理想的だろう。ホームグラウンドを含めた興行としての場を交えることで、そこに携わる人々の生活を支えるという意味合いも大きい。全てを「自粛」の言葉で済ませる訳にもいかない。

しかし、今求められているのは、野球活動に対する「自粛」という概念的なものではなく、「節電」という実質的なことなのだ。

計画停電により停電を強いられる人達のみならず、「ナイトゲームの照明」については野球ファンからも、疑問の声が挙がっている。

こうした様々な事情を踏まえつつ、文部科学省は「国民の理解を得にくい」とセ・リーグ側に再三に渡って説明(または指導)をしているのだが、セ・リーグ側の歯切れは悪い。

代替え案として「(関東、東北以外などの)電力に余裕のある地域で試合をする」というものなどが挙げられたが、これについても一向に飲む様子はなさそうである。野球の試合と言う観点だけで見れば「地方球場での試合」も案外良さそうであるが、ホームグラウンドを離れる球団の経営陣にとっては、何かと都合の悪い部分もあるのかもしれない。

また、電力問題以外にも、今の状況でプロ野球を関東地方で開催する事には「交通機関に対する負荷」や「安全性」といった問題を抱えている。

平常運行の時さえ、週末のナイトゲーム時には球場周辺の駅は非常に混み合う。一時は鉄道各社も節電の為に電車の本数を減らす「間引き運転」をしていた状況を考慮すると、大きな負担が生じることは想像に難(かた)くない。

さらに今でも宮城沖や関東周辺では、しばしば余震が発生している。このような時期に「一カ所に数万人を集結させる」のは非常にリスクが高いことと言える。あるいは試合開催中に「大規模停電」が発生しても大変なことになるだろう。

いま、もしも“何か”が起きた場合のリスクは、非常に高い時期なのだ。

加藤コミッショナーの言葉を借りると、「世論の賛否両論は十分、理解している。私も多くの方から意見を頂いた。復興のメドがつくまでじっと待てばいいのか。国難の時こそ真剣勝負を見せるのが責務。野球を通して日本に、世界に元気を与えるのが(球界の)使命だ。」ということらしい。

確かに平常通りに「プロ野球の試合を見せる」と言う事にも意義はあるかもしれない。
そうした意味で“元気”も大事だけど、今は“電気”や“安全”の方が大事なのではないだろうか。

※ガジェット通信一芸記者のYELLOWさんが執筆しました。

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