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職場は楽しくあらねばならない 驚きの米国職場体験

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今回はHALさんのブログ『The Wisdom of Crowds – JP』からご寄稿いただきました。

職場は楽しくあらねばならない。驚きの米国職場体験
この記事は“楽しい職場、アメリカの日本と全く異なる労働観”について紹介します。多くの日本人にとってはきっとeye opening(目が見開かれる)で、jaw dropping(あごが落ちる)な驚きの内容かと思います。協力してくれたのはノア。ノアは本当に楽しそうに働いているアメリカ人です。彼についてはすでに記事を書いているので、こちらも読んでみてください。

「New Yorkで最も幸せな住人の1人、Noah(ノア)。」 2010年5月3日 『The Wisdom of Crowds – JP』
http://wisdomofcrowdsjp.wordpress.com/2010/05/03/a070/

仕事をしている人なら毎日が常に忙しくない、時には暇な時間があることは知っているかと思います。日々の仕事には繁閑(はんかん)があります。でも、多くの日本企業の場合だと暇そうにしていると“評価が下がる”し、悪い場合には“叱責(しっせき)される”のはないでしょうか。だから多くの日本人はたとえ忙しくなくても、忙しいふりをしている人が多いと私は思います。

一方、ニューヨークで働くノアの場合(アメリカの一流金融企業勤務)はというと、彼の職場では仕事が暇な時には『Wii』で『大乱闘スマッシュブラザーズX』か『ニュー・スーパーマリオブラザーズ・Wii』で遊んでいると言っていました。???? 私は最初ノアが何を言っているのか全く理解できませんでした。「同僚同士集まって『Wii』のテレビゲーム大会をしているのがアメリカの職場!?」とそれを聞いて驚いてあごが落ちました。ノアによると「仕事が忙しくないときは職場でみんなと遊ぶに限るよ♪」と言っていました。そしてまたjaw dropping(驚いてあごが落ちる)という表現はこの時ノアから教えてもらいました。思い返してみると、私のインターン先でも、金曜日の午後くらいになると“勤務時間中に社員の人同士が卓球をしている光景”をよく見ました。卓球をしている彼らは楽しそうでしたね。

確かに“仕事が暇なときに忙しいふりをしている”よりは“暇な時は割りきって遊んでしまう”方が社員の職場に対する忠誠心は上がるし、仕事に対するやる気は増します。日本の常識を捨てて考えてみれば、ノアの職場の方がよほど社員のやる気を引き出す事を工夫している職場なのかもしれません。仕事の効率を追求している『トヨタ生産方式』*1 においても、「現在手元に仕事がない場合ははっきりとそれが分かるようにしなければならない」と説いています。しかし、たいていの日本企業の事務所においてはこの『トヨタ生産方式』の教えが守られていません。

*1: 『トヨタ生産方式—脱規模の経営をめざして』大野 耐一著 ダイヤモンド社
http://book.diamond.co.jp/cgi-bin/d3olp114cg?isbn=978-4-478-46001-6

これに関連した話があります。国連本部にノアと一緒に観光した後に「この近くで友達が働いているから紹介するよ」と言われて、日本人でも知っている有名銀行に向かいました。その職場を訪問したら、ノアの友人が出てきて「よく来たね♪」と歓迎して、どんな風に仕事をしているか教えてくれました。別にこれくらいならもう驚かなかったのですが、その友人と話した後にその友人の上司の所まで連れていかれて、その上司とも楽しく歓談しました。見ず知らずの日本人観光客を歓待してくれる余裕がある職場って……。なんだかもうこの時は驚きすぎて疲れました。「彼女全然働かないだろ? KAIZEN *2 を知っている日本人として彼女の働きぶりはどうかな?」「私は今日は”5時間”は熱心に働きますよ! プンプン」という会話がそこで行われていました。私は、jaw dropping(驚いてあごが落ちる)のままで会話になんとか参加しました。

*2: KAIZEN……改善。トヨタ生産方式の基本概念の1項目。一般的意味は悪い状態を改めてよくすることであるが、製造業で用いられる用語としての改善は、工場の作業者が中心となって行うボトムアップ活動のこと。
「改善」『フリー百科事典ウィキペディア』より
http://ja.wikipedia.org/wiki/改善

『Twitter』上で「余裕のある人は遊んでいても良い文化があるとしても、仕事の偏りがあった時に遊べないくらい忙しい人が“うるさい!”とか“集中できない!”とか言うことになったりはしないのですか??」という質問をもらいましたので、ここで補足説明します。アメリカと日本の事務所の配置は全く異なります。だから大丈夫です。アメリカの職場ではたいてい個室が与えられます。そこで周りからの雑音を気にせずに仕事ができます。一部屋に全員を押し込んでいる日本とは違います。そして、『Wii』の大会や卓球で遊んでいるのはたいてい大会議室です。テレビゲームを会議室にある大画面テレビで遊ぶのは楽しそうですね。

職場が楽しい企業ではサウスウエスト航空が有名ですが、アメリカでこの企業が生まれるだけの理由があるのだなとノアとの体験、そして私のインターンシップ期間に体験したことを通じて実感しました。

以下、職場が楽しいことで有名なサウスウエスト航空の業務風景です。1分過ぎくらいから面白いです。
『ラップで機内アナウンス(日本語字幕つき)The Rapping Flight Attendant』
http://www.youtube.com/watch?v=fD-yyMzF8lI



サウスウエスト航空では職場環境を良くすることで離職率を低め、また優秀な人材を自社に引きつける戦略を取っているのです。ラップで業務をするサウスウエスト航空も、勤務時間中に卓球で遊ぶ私のインターン先も、給料は平均かそれ以下です。別に特別な能力を持っているから、特別な職場環境が与えられているわけではありません。これは楽しい職場環境を提供することで、高額の賃金を出さなくても社員のやる気・忠誠心を高めようとしているためです。またこの記事で後述しますが、他にも利点として職場の雰囲気を明るくして風通しを良くすることで、社員同士が自由に意見を言える職場環境をつくりあげています。

サウスウエスト航空についてさらに詳細を知りたい方は次の書籍がおすすめです。

『破天荒!―サウスウエスト航空 驚愕の経営』ケビン&ジャッキー・フライバーグ著 日経BP社
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/140124.html

別のことを紹介します。「本当に使える 実践ビジネス英会話」*3 の不明点についてノアにいくつか質問をしている際に、転職時の面接についての話題になりました。その話題は“My biggest fault is……”、つまり自分の短所について話すことです。

私はその場では正直に「私は考えずに働くことが苦手です」と言いました。ノアは私が最初何を言っているのか理解できませんでした。補足説明すると、「上司からその仕事をする意味が分からない無駄な作業を与えられた際に、もくもくとそれに従って仕事をすることが苦手です」ということです。例えば、新卒一年目にやらされたひたすら伝票にハンコ押し続けさせれる作業、またひたすらダンポール箱を作り続ける作業をしました。これらの業務は結局2年目以降の仕事において全く役に立ちませんでした。

*3:「【職場】職場で実際に使われている英語を学ぶ “本当に使える 実践ビジネス英会話”」 2010年3月22日 『The Wisdom of Crowds – JP』
http://wisdomofcrowdsjp.wordpress.com/2010/03/22/e055/

こういう業務をするくらいならもっと会社に貢献できるような業務があるだろうにと、当時は、そして今でもおかしいと思っています。さらに補足説明をすると「自分で工夫することが許されない仕事が苦手です」と言いました。具体例には『Excel』の単純作業を省力化するためのマクロを組むことを禁止されるようなことは受け入れがたいことです。これが冗談なら良いのですが、実際に私も似たような経験をしたことがあるので、全く笑えません。

参考:「マクロを組んで作業するのは実力ではないですか?」『OKWave』
http://okwave.jp/qa/q5419623.html

この時、ノアからは「日本では上司と意見交換をすることはないの? なら上司が明らかに間違っている指示を出した場合はどうするの?」と聞かれました。私はその時思わず黙りこんでしまいました。私は前職の日系企業時代には「明らかに上司の指示が間違っている場合でも、反論したことはありませんでした」。これはノアの会社と違って上司にモノを言える雰囲気が全くなかったからです。

私はよく会社の先輩から「自分のやりたいように仕事をするためには40歳になるまで待て」と言われていました。こんなことを何度も言われるうちにばかばかしくなって、その会社は辞めてしまいましたが。だって40歳になったころには自分よりも優秀な20代の若者たちが会社に入ってきています。そしてそのころの若者たちが今の自分と同じように自分の意見が言えないということを想像すると……なんという不幸の世代間連鎖 *4 なのでしょうか。サウスウエスト航空とまるきり正反対の方針をとっている日本企業、職場を自ら面白くない場所にしている日本企業は社員のやる気を著しく低下させます。

*4 :「不幸の世代間連鎖を断ち切ることの大切さ」2009年07月09日『女と男の心のヘルス-癒しの心理学』
http://www.556health.com/archives/2009/07/post_367.html

この話を聞いたアメリカ人たちは全員「日本人はおかしい。私なら絶対“Fxxk you!”と言って会社を辞めてる」と言っていました。日系企業では自身の管理する業務を改善する“改善提案”は許されても、部署全体を改革するような“改革提案”は決して許されないし、口にしてもいけないのかもしれません。

一方ノアの場合はというと、「上司が間違った事を言えばその場で反論するし、普段から『Wii』で遊んでいたり、『facebook』で友人関係にあるから別に雰囲気が悪くなるなんてことないよ」と言っていました。転職が当たり前で一見冷たく思えるアメリカ企業、でもこの風通しの良さはなんなのでしょうか。そして、「社員は家族だ。大事にしないといけない」という日本企業の方が社員同士言いたいことを言えない閉塞感( へいそくかん)漂う職場環境が多いというのはなんとも皮肉な現実だと思います。

また、アメリカ企業の場合は“転職が当たり前なので、前任者の業務内容を否定しやすい”という環境もあります。既存の制度/仕組みが時代遅れなったり現状に合わなくなれば、全てを否定することができます。一方、多くの日本企業の場合は“時代遅れの制度”を作った張本人が社内にまだいて、おまけに出世して社内で偉くなったりしている場合があります。そういう場合にその制度を「もう時代遅れだから辞めてしまおうか」と口に出せない雰囲気があります。だからこそ、転職が当たり前でない日本においては「定期的に制度を廃止していくことが必要」だと思います。そうしなけばいつまでも時代遅れの非効率的な制度に苦しみ、仕事の生産性は落ち続けます。流れない水はよどみ、腐敗します。

参考:「流れない水は淀むー私はなぜ43歳の若さで社長を辞めたのか」『SOFTBRAINco.,Ltd』
http://www.softbrain.co.jp/new/detail.php?462

“社会の厳しさ”の9割は「社会は厳しくあらねばならない」という妄想を持った人たちによって作られている。日本社会はこの言葉を文字通りに実行している人が多いのだと思います。社会が厳しくなければいけないなんてだれが決めたのでしょうか。仕事が暇な時に職場で同僚同士、会議室の大きなテレビを使って『Wii』でゲーム大会をしてはなぜいけないのでしょうか。“職場は楽しい場所であるべき”という考えに基づくアメリカ人たちはこれを現実に実行しています。そして彼らの職場は毎日笑いが絶えません。笑いながら楽しそうに働いている、そして労働時間は1日8時間、かつ給料は私たちの数倍以上もらっている。現にアメリカでこういう会社があるのだから、「アメリカはアメリカ、日本では実現不可能」と言って現実から目を背けることなく、その差を埋めるためには何をすべきなのか考えるべきだと私は思います。

以上で「職場は楽しくあらねばならない。驚きのアメリカ職場体験」について終ります。日本人にとっては eye opening(目が見開かれる)で、jaw dropping(あごが落ちる)な驚きの内容でしたでしょうか。

注意 関連記事の紹介
この記事と次の記事「世界的な人材獲得競争」の内容は密接に関わっているため、両方の記事を合わせて読んでください。

「世界的な人材獲得競争」 2010年5月6日『The Wisdom of Crowds – JP』
http://wisdomofcrowdsjp.wordpress.com/2010/05/06/a075/

世界的な人材獲得競争にてアメリカ企業はなぜ社員に居心地の良い職場環境を提供しているのか、その背景となる理由について書いています。世界的な人材獲得競争を読まないと、この記事の内容は半分しか理解できません。

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ブログにて『はてなブックマーク』を2200以上獲得した(獲得数で歴代100位以内)「実用的な英語を習得する方法」、TOEIC860点を取得、かつ日本の英語教育で欠けている“話す”、“書く”ための英語学習方法を紹介しています。なおこの「実用的な英語を習得する方法」は書籍化が決まりました。
「実用的な英語を習得する方法」
http://wisdomofcrowdsjp.wordpress.com/sitemap/english/

また、地球の歩き方には載っていない“とんでもないアメリカ社会”を紹介した「米国体験記」をブログにて公開しています。こちらもぜひご覧ください。
「米国体験記」
http://wisdomofcrowdsjp.wordpress.com/sitemap/us/
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執筆: この記事はHALさんのブログ『The Wisdom of Crowds – JP』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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