イスラーム向けの食事は単に酒と豚を避ければ良いわけではない! 日本初のハラールエキスポを体験
ムスリム(イスラーム教の信者)は豚肉とアルコール類を口にしないというのは有名な話です。これだけでも間違えないですが、飲食店としてムスリムに食事を出したり、日本に旅行や出張に来たムスリムと食事を楽しむにはある程度の知識が必要です。 また、これからの予測として日本にムスリムの人が訪日することは増えると予想されています。 今回、ムスリム向けのビジネスを行う人を対象にした『ジャパン ハラール エキスポ2014』を取材してきました。
ムスリムの人が安心して食事が出来る『ハラールマーク』
イスラームの教えは『クルアーン』(コーラン)にかかれており、ムスリムたちは神(アッラー)との契約で生活をしています。 その中で食事に関する契約も書かれています。日本人として有名なのは「豚肉を食べない」、「アルコールを摂取しない」という物があります。誤解される例として、
「オムレツの上にハムが乗っている料理から、ハムを取り除けば良いのではない?」
という物がありますが、これは間違えです。 実際は豚やアルコールが食事を作るすべての工程で使用されたり、製造途中でアルコールが発生してしまうことに関して気をつけなければいけません。『ハラールマーク』は認証機関が認定したものに添付するマークで、このマークを見ればムスリムは安心して食事を楽しむことが出来ます。
ハラール認証を受けた製品に付けられたハラールマーク これは『日本イスラーム文化センター』が認証しています
ハラール認証の実際
料理に豚肉やアルコールが見た目に使われないのは当然で、細かな原材料までチェックされます。日本で特に問題あるものは醤油です。醤油は製造過程で自然にアルコールが発生してしまうため、たとえ後から除去しても使うことが出来ません。 豚を使っただしやスープも当然NGです。
豚以外の動物であっても、適切に屠殺されている事が必要であるため、ビーフステーキなどの料理も無条件で良いわけではありません。 また、牛の骨をろ過材として利用した食材も、その牛が適切に屠殺されているか証明することが必要です。
特に出来合いの調味料やふりかけなどは、製造メーカーも主成分は企業秘密とされるため公開を渋る傾向にあります。 ハラール対応の料理を提供するには多くの労力が必要なのも現状です。
シーズニング(ふりかけ、出来合いの味付け粉末)と醤油の含まれる食品のハラール対応は難しい
アルコールを一切使わない洗浄液を使う必要があります。一般的なアルコール洗浄液は使えません
牛肉は食べても良いが、適切な方法で屠殺される必要があります。 骨、油脂を使う場合も例外ではありません。
ハラール認証機関の乱立、決めるのはアッラー(神)のみ
更に理解を難しくしているのは、ハラール認証機関が多くあることです。セミナーの質問として「どうして統一化やイスラーム側で公式認証しないのか?」という質問に対しては
「ハラールかどうかを決めるのは神(アッラー)のみである」
という考え方があるためです。 仏教の場合はそれぞれの宗派が囲い込みを行っており、信者は宗教団体の傘下に入るという考えがあります。イスラームの場合は特定の宗教団体に属するという意識はありません。日本にも複数のイスラームの宗教法人が立ち上がっていますが、いずれも上下関係やどちらが正規のものなのかという考えはありません。 個人的に神との契約を守っているという意味が非常に強いです。このため、誰でもハラール認証機関を立ち上げる事が出来てしまいます。
だったら、どのような基準で認証機関を選ぶ必要があるのか? この質問も「自分でインタビューして見つけて下さい」との事でした。 正しい、ハラール認証を受けるには食事の提供者もある程度のクルアーンの知識が必要であるとの事です。
JETRO(日本貿易振興機構)発表の資料、ハラールは規格だけではない宗教的理解も必要であることをスライドで提示
意外にハラールフードは安全
ハラールフードはムスリムのためだけの物という印象がありますが、多くの部分はムスリム以外の人に対しても安全を提供するとの発言がありました。全ての材料が明確になるということはより食事に対して安心できます。 実際、うどんやそばなどの原材料がシンプルなものは何もしなくてもハラール認証を通ってしまうものが多いとの印象も展示品でうけました。
うどん、そばはそのままハラール認証を受けられるものが多い。 日本の食品は安全性が高いのでシンプルな原材料のものは容易だと説明
日本でお馴染みの「辛ラーメン」もハラール認証を取得。取得にあたってはハラール食品専用工場を立ち上げていると説明
メディア向けに提供されたハラールランチ(弁当)非常に美味しい弁当として楽しめました。
意外な落とし穴
豚由来のものを避けるという部分は簡単そうですが、混ざるというルールが厳格なので、日本人にとっては落とし穴でもあります
・ゼリーのゼラチン(ゼラチンは豚から作られる)
・医薬品のカプセルやゲル
・骨や写真フィルム、インクジェット用のインク(それらが食器、ろ過材、パッケージで使われる)
・豚毛のブラシ
・ラードなど豚由来の脂
・豚料理を調理した鉄板やフライパン、包丁、まな板などを使いまわす
・醤油など製造過程でアルコールが自然発生するもの
・アルコール洗浄液での食器、食材、調理器具の洗浄
など、盲点があります。
これからの対応
観光客はもちろん、日本食の輸出などで、これからハラールを意識した活動がより身近になってきます。 このためにも多少のイスラム文化やハラールについての知識は必要なのではと感じています。 全く食事に関して制限がない私達にとっては理解が厳しいですが、ひとつの文化として尊重していく必要があると感じました。
ハラール対応のレセプションパーティーに参加しました。 出てくる料理はソーセージやハムがない程度でほとんど変わりはありません。
パーティーの乾杯は当然ノンアルコールです。 国産のノンアルコール飲料は製造工程でアルコールが発生しているものは全て口に出来ません。
日本初のハラールエキスポ YouTube
http://youtu.be/Xqm3FepprCU
ジャパンハラールエキスポ公式サイト
http://japan-halal.jp/
写真はYouTube及び筆者が撮影
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