『ゴーン・ガール』観たぞ! デヴィッド・フィンチャー最新作は笑っちゃうほどの“胸糞”展開[映画レビュー]

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ゴーン・ガール

『セブン』『ドラゴン・タトゥーの女』など、独創的な映像表現と力強いストーリーテリングで世界中の映画ファンを熱狂させている天才デヴィッド・フィンチャー。米国で600万部以上を売り上げ大ヒットしたギリアン・フリンの小説を原作とし、幸福の絶頂にいるはずの夫婦をめぐるスリラーを描いたフィンチャー監督の最新作『ゴーン・ガール』が12月12日(金)より全国公開となります。

本国アメリカの様々なメディアで「アカデミー賞本命」との呼び声高い本作、21日に完成披露試写会が開催され、筆者も一足お先に映画を観てきましたので、ネタバレしない程度にレビューを書きたいと思います。

【ストーリー】

結婚5周年の記念日。誰もが羨むような幸せな結婚生活を送っていたニックとエイミーの夫婦の日常が破綻する。エイミーが突然姿を消したのだ。リビングには争った後があり、キッチンからは大量のエイミーの血痕が発見された。警察は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、次第にアリバイが不自然な夫ニックへ疑いの目を向けていく。新妻失踪事件によってミズーリ州の田舎町に全米の注目が集まり、暴走するメディアによってカップルの隠された素性が暴かれ、やがて、事件は思いもよらない展開を見せていく。完璧な妻エイミーにいったい何が起きたのか……。

原作の「ゴーン・ガール」は“イヤミス”として話題に

ゴーン・ガール

「ゴーン・ガール」は全米で6,000万冊以上を売り上げ、日本でも「このミステリーがすごい!」9位、「文庫翻訳ミステリー・ベスト10」6位と2013年のミステリー賞にもランクインするベストセラー。

原作、そして映画『ゴーン・ガール』の脚本を執筆しているのが43歳の女性作家ギリアン・フリン。アメリカ合衆国ミズーリ州の出身で、本作の主人公ニック・ダンもミズーリ出身です。「KIZU―傷―」「冥闇」そして「ゴーン・ガール」の3作を発表しており、「KIZU―傷―」のテレビドラマ化が決定するなど、まさに今ノリにノっている状態。お恥ずかしながら筆者は今回の映画化まで存在を知らなかったのですが、既に原作を読んでいる友人に「すごく、いや〜な話だよ!」と聞いており、どれほどのイヤミス(後味が悪いミステリー)なのか期待して完成披露試写会に挑みました。

ジェットコースター展開からの衝撃の展開に唖然!

結論から言うと、この映画めちゃくちゃ面白いです! 2時間半越えのやや長尺なのに、時間を全く感じさせないジェットコースター・ムービー。そして予告編を観る限り、謎解き要素強めの作品なのかと思いきや、ド級のブラック・コメディでもあるという。もちろん、原作未読組としては「真実は何?」「最後どうなっちゃうの!?」とハラハラするのですが、要所要所に差し込まれてくるシニカルな表現だったり、やりすぎな所だったり、言っちゃ悪いけどピンチになればなるほど笑えるんです。

この「笑える」という話、映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ「たまむすび」の中でも話しており、映画ファンの間では「ゴーン・ガール=笑える」という認識が定着しつつありますが、実際に劇場が爆笑に包まれる瞬間を味わうと何とも言えない面白さがありました。

また、同じく町山智浩さんの『ゴーン・ガール』評を聞いての感想となりますが、エイミーの「これが××ってものなのよ」というセリフには痺れました。本作、エイミーが消えて警察やマスコミに翻弄されるニックの姿と、エイミーの日記による回想が交互に出て来ますが、夫婦関係がどんどん壊れて行く過程がなんともしんどくて……。言ってみれば『ブルーバレンタイン』(2011)を観た時の様なしんどさ。『ブルーバレンタイン』よりもシニカルで抜け感があるものの、「ああ、ここまでいかなくてもこういう事ってあるよなぁ」みたいな気持ちになるはず(でもなんか可笑しい)。

この映画、男性は主に男女間のあれこれに「やだな〜こわいな〜」ってなると思うんですけど、女性的には今流行の“マウンティング”的な恐さ(怒り)を感じるじゃないかなあ、と。また、既婚・未婚でも見方が変わりそうなのも面白い。あとはもう何と言ってもフィンチャーですから、映像のスタイリッシュさ、サントラの素晴らしさは文句無しですよ。

アメリカ人女子の好きを具現化した様なナイスガイ、ベン・アフレックと、文句無しのエイミー像を演じあげたロザムンド・パイクの演技も最高! ロザムンド・パイクは『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』で、パンクブーブー佐藤似の彼(パディ・コンシダイン)に恋されていたあの知的なイギリス美女ですよ。日本ではまだそんなにピンと来ない女優さんだからこそ、本物のエイミーの様に見えるのかも。そういう点では、本作そこまで著名な俳優さんが出ていないのもプラスになっていると思いました。

これ、ハッピーエンドだとかバッドエンドだとかって話じゃないんですよね。誰かのバッドエンドは誰かのハッピーエンドかもしれないし、そもそもニックの人生に、まだ“エンド”は見えないし、十分エンドかなあ……とかとか。胸糞悪いけど笑える、これ不思議な感覚ですよ!

原作読んでいったほうがいいのか問題

映画を観た後、書店に直行し原作本をゲットした筆者。今、夢中になって読んでいますが、面白いです。冒頭にも書いた原作読んでる組の友人は映画を楽しんでいたので、これは原作読まずに映画を観てもOK、映画観てから原作読んでもOKな作品。町山さん的には「上下巻の上巻だけ読んでいく」のがオススメなのだとか。

それにしても、深町秋生さんの「果てしなき渇き」(宝島社刊)を、『告白』の中島哲也監督が映画化した『渇き。』といい、今年は美女が謎の失踪をとげる映画が多いなあ、と。これからは“失踪系女子”がアツい!

http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/

(c)2014 Twentieth Century Fox

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藤本エリ

映画・アニメ・美容に興味津々な女ライター。猫と男性声優が好きです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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