ネットで多発する言葉の暴力、どんな罪に?
現実とネット上での言葉の暴力は法的に区別されない
インターネット上の掲示板やFacebook、Twitter、LINEなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の進化と著しい普及は、他人とのコミュニケーションや情報発信において不可欠なものとなりました。しかし、インターネット上では顔の見えない者同士、実生活上のつながりがない者同士のコミュニケーションが当たり前になされるため、歯止めが効きにくく、より言葉の暴力などにつながりやすい面があります。
また、実生活でつながりのある者同士でも、メールやSNSなどのやりとりでは、面と向かって言えないようなことも簡単に言えてしまうことがあり、しばしば問題が起こります。こうしたネットでの言葉の暴力が、犯罪になることがあるでしょうか。
答えはもちろん、あり得ます。相手を誹謗中傷したり、攻撃したりする言葉の暴力については、法的に現実の言葉で発せられた場合と、ネット上で文字として発せられた場合で区別されることはありません。
ネット上の書き込みに基づく名誉棄損の損害賠償事件は年々増加
たとえば、「殺すぞ」「放火するぞ」などの表現を特定の相手に伝えた場合、ネット上でも脅迫罪が成立し得ますし、それが金銭の要求につながっている場合には恐喝罪が成立する可能性が浮上します。ネット上での言葉の暴力が企業や事業者などに向けられた場合には、業務妨害罪の対象となります。しばしば掲示板では、無差別での殺害予告などが問題になりますが、警察もこの手の犯罪予告には厳しく対応していますので、犯罪の対象場所となっている施設や企業に対する業務妨害罪という形で捜査されることも珍しくありません。
また、インターネット上の掲示板など、不特定多数の第三者が閲覧できる場所に、特定の人間や企業の名誉や信用を傷つけるような書き込みがなされた場合には、名誉棄損罪や信用棄損罪の対象にもなります。実際、民事事件でも、インターネット上の書き込みに基づく名誉棄損の損害賠償事件は年々増加しているように感じられます。
ネット上の発言は、客観的な記録の存在により言い訳ができない
刑事事件や民事事件との関係では、ネット上の発言であることを理由に大目に見てもらえるということは全くありません。むしろ、ネット上の発言というのは、ほぼ確実に証拠として残ります。いわゆるウェブログや掲示板での書き込みは本人が後から削除しても、インターネットの性質上、痕跡を完全に消すことは極めて困難です。
メールでも当然、相手方に届いた履歴を消すことはできません。また、匿名の書き込みでもプロバイダなどに照会すれば、そのIPアドレスなどのデータから、掲示板などへの書き込みを行った人間を特定できることもあります。このため、ネット上の言葉の暴力の場合には、客観的な記録の存在により言い訳ができない分、より責任を問われる可能性が高くなります。
インターネット上でさまざまな発言をする際には、これらのことについて十分に意識する必要があります。ネット社会がその存在を大きくし、影響力を増すほど、言葉の暴力による被害も大きくなります。その分、ネット利用者に向けられる目も厳しくなることは自然のことです。
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