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メダルはなぜ金銀銅か

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オリンピックの中継を観ていて寝不足になってしまっている人も多いのではないでしょうか。3種類のメダルを目指し世界のアスリートたちが競い合っています。今回はそのメダルの素材について佐藤健太郎さんのブログ『有機化学美術館・分館』からご寄稿いただきました。

メダルはなぜ金銀銅か
バンクーバーオリンピックがたけなわ、昨日(編集部注:記事執筆当時)は日本選手が今大会初のメダル獲得ということで、今日はこの辺の話題で書いてみましょう。

現在ではオリンピックの3位までの入賞者に金・銀・銅のメダルが贈られることはすっかり定着していますが、近代五輪開始当初はそうではなかったようです。第1回アテネ大会(1896年)では財政難などもあって1位に銀メダル、2位に銅メダルが与えられただけで、3位以下には何もありませんでした。第2回パリ大会では陸上競技のみに金・銀・銅メダルが贈られたものの、製作が間に合わず本人の元に届いたのは2年後であったというエピソードがあります。

さてこのメダルがなぜ金・銀・銅に落ち着いたか。実は周期表を見ていただくと、この3金属はものの見事に縦に並んでいることがわかります。これに気づいた時は筆者はちょっと感動したのですけど、みなさまはいかがでしょうか。

これはもちろん偶然ではありません。この第11族元素は、電子配置の関係でイオンになりにくい――すなわち、貴金属性が高いのです。このため自然界でまれに金属単体として産出することがあり、人類は古くからこれらを発見していました。貴重であり、美しく輝くこれらの金属は珍重され、やがて貨幣として取引されるようになりました。現在でも第11族元素を指して「貨幣金属」(Coinage metal)という呼び方をすることがあります。

この3種の金属のうち、最も安定で錆びないのは金、次いで銀・銅の順です。また地上での存在比からいえば、金は銀のほぼ100倍貴重で、銀は銅の100倍貴重な存在です。となれば、どうしても金が1位、銀が2位、銅が3位に位置づけられるのは自然の流れであったでしょう。

また、これら3金属が全く違った美しい色合いに輝き、区別がつきやすいことも、メダルに選ばれた重要な要素でしょう。単体の金属で、このようにはっきり色がついて見えるものは金と銅だけです。なぜこの2つだけが色づいて見えるか――というのは、相対性理論なども絡んでくるなかなか難しい説明になります。物理の苦手な筆者にはあまり突っ込まないでいただければ幸いです。

ちなみに有機合成化学者にとっては、これら貨幣金属の価値は全く逆転します。銅にはUllmann反応・Michael付加・薗頭カップリングなど多彩な反応が知られていますが、銀はせいぜい酸化剤や脱ハロゲン化に用いられる程度、金は長らくこれといった用途がありませんでした。金が安定な金属であるということは、有機化合物に対しても反応しないということであり、何の面白みもない金属と思われていたのです。

しかし近年になり、この銀や金も多彩な触媒作用があることがわかってきました。特に金触媒の研究は盛んで、「21世紀のゴールドラッシュ」という表現がなされるほどです。*1 最も古くから知られている、最もなじみ深い金属に、これだけ新しい研究の余地があるのは面白いことだなと思います……と、無理やり有機化学に結びつけてこの項を締めくくる筆者であります。

*1:『Sigma-Aldrich』注目テクノロジー「金触媒-21世紀のゴールドラッシュ-」
http://www.sigma-aldrich.co.jp/aldrich/organic/gold_catalysts/first.htm

執筆: この記事は佐藤健太郎さんのブログ『有機化学美術館・分館』より寄稿いただきました。
文責: ガジェット通信

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