経済の教室(現実編2) 株価はどこまで上がるか?(中部大学教授 武田邦彦)

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経済の教室(現実編2) 株価はどこまで上がるか?(中部大学教授 武田邦彦)

今回は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

経済の教室(現実編2) 株価はどこまで上がるか?(中部大学教授 武田邦彦)

(この教室は「武田の意見」を表面するものではなく、経済学的にどこまで予測できるのか、役に立つのかを現実や基礎の問題として解明していくのが目的です。)

日銀が「お金の供給量」を現在の130兆円から270兆円に2倍にすることと、土地などに関連したやや危ない債券などを買い進めるということで、大幅に株価が上がっています.

そこで、ここでは「株価はどこまで上がるのか?」を現代経済学はどの程度に予測ができるのかについて、まずは整理をして行きたいと思います。

【8000円台の株価】

2009年頃から株価は8000円から9000円ぐらいをウロウロしていました。株価は「企業の収益」を元にPER(株価収益率、利子のようなもの)で決まります.つまり、お金を持っている人は、銀行預金、債券、外国通貨などの「投資先」と「株への投資」を比較して、より有利な所にお金を移します.

銀行預金や債券はほぼ利率が決まっていますが、株は「配当と将来性」で決まります.つまり配当が高くても、将来の発展が見込まれなければ徐々に株価が下がるので、買うことはできませんし、逆に配当という点では債券などより低くても将来の値上がりを期待できれば買うこともできます。

だから「株の利子=PER」が標準になり、将来が暗ければそれより安くなり、将来が明るければ株の利子から計算した株価より高くなります.今年、一応、予想されている「株の利子」からの株価は14700円とも言われている.

【14700円】

この14700円というのも怪しい.というのは、「現在の企業の収益から計算した株価」ではなく、「今年の企業の収益見通しからの株価」だから、企業の収益が上がると「株の利子」から計算した株価も上がるし、逆に企業の収益が下がると下がる.

企業は生き物なので、収益は下がったり上がったりするので、「収益予想」が違えば違う.つまり「株価の本質」は、

1)企業の収益予想から株の利子が決まり、それで株価が決まる
2)少し前は、妥当な株価は10000円ぐらいだった
3)ところが民主党では先行きが不安なので8000円だった(利子からの株価より2000円安)
4)安倍政権になり将来の見通しが明るくなってきたので12000円が妥当な数値になった(利子からの株価より2000円高)
5)さらに企業収益が上がる予想になったので、今年に入って14700円が妥当な利子からの株価になった
6)先行きが明るければさらに2000円高は普通だから16700円までは株価が上がることになる
7)その間に、企業収益がさらに向上する予想が出てきたら、株価はさらに上がる
8)その間に、企業収益が下落するか、ユーロが崩壊したりする(おそらくは可能性が少ないが)と株価は下落する

現在の経済学では株価がどうなるかはわからない。もしわかったら、何も仕事をせずに経済学者は億万長者だらけになるけれど、実際は経済学者は結構、貧乏だ. それからも予測は1)から8)のように進むので、最後の7)、8)がわからないのです。

ただ、時期はある程度、予想されます。世界でユーロ崩壊、アメリカの財政の崖などが起こらなければ、日銀がお金を刷っている間で、刷っても日本の企業がそれに応じない状態が続き、さらには日本人が「節約」などを主張して買わないのが続けば、失望売りが始まることになりますが、少し時間がかかると思います。

執筆: この記事は武田邦彦さんのブログ『武田邦彦(中部大学)』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年04月10日時点のものです。

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