カシマレイコの正体
今回は疑似科学ニュースのメカAGさんの記事からご寄稿いただきました。
カシマレイコの正体
テケテケのことを検索していたら「カシマさん」「カシマレイコ」というのがヒットした。テケテケの本名はカシマレイコという説がある。あるときは口裂け女の名前がカシマレイコだという。
カシマレイコとは誰なのか?
カシマ包囲網
http://go_raptor.tripod.com/
かしまさん関連年表
http://go_raptor.tripod.com/history.htm
上記の年表では戦争中の1943年に鹿島様出征流言というのがあったらしい。この鹿島様というのは鹿島神宮の神様のようだ。鹿島神社は全国に600社あって、その総本社が茨城県鹿嶋市にある常陸国一宮、鹿島神宮なのだという。
祀られているのはタケミカヅチ(建御雷神)。古事記や日本書紀に出てくる。アマテラス率いる天孫族が葦原の中つ国(本州)を平定していく過程で、出雲平定時に登場する神だ。いわゆる大国主の国譲り。
タケミカヅチ – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/タケミカヅチ
大国主の子供タケミナカタ(建御名方神)はタケミカヅチに勝負を挑み、逆に両腕をへし折られてしまう。タケミナカタは長野県の諏訪まで逃げてようやく服従したという。そのタケミナカタを祀っているのが諏訪大社。またこの時の勝負が現在の相撲の起源になったという説がある。
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カシマさんに話を戻すと、上記の年表の戦争末期の1945年にはこんな記述がある。
5月、東京の山の手が激しい空襲を受けた際に、ある女性が爆弾により腰から下を吹き飛ばされた。ところが、それでも女性は死なず、しばらくの間上半身だけで這いずり回っていたという。
時代は下り1972年の項目には
この年から75年にかけて「かしまさん」の噂が東京の小中学生の間に広まり、新聞・TV等で扱われるほどの騒ぎとなったらしい。
とある。内容も鉄道事故、この話を聞くと3日後に死んだ女性が自分の所にやってくる、と現代の話に近くなってくる。
しかしこの頃はカシマさんというのは、妖怪から自分を守ってくれる神様っぽい。カシマさんが上記の鹿島神宮の神様ならさもありなん。それがだんだん時代が下るに連れて妖怪そのもの名前と混同されていったのではなかろうか。
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また戦前や戦争中は鹿島神宮は軍神として崇められていたようだ。カシマさんにまつわる妖怪はテケテケのように下半身がなかったり、手足が欠損していたりすることが多い。そういえば「午前2時に何かがくる」という怪談も、工事現場の事故で手足を失った人が、この話を聞いた人のところに夜訪ねてくるという話だった。
子供にとっては最大級の恐怖が「手足を持っていかれる」というものなのかもしれない。子供にとって死というものはまだよく理解できない。むしろ自分の手足がなくなるという方が恐怖を感じるのだろう。
そして手足がないことと戦争からは傷痍軍人が連想される。1970年代は結構街で傷痍軍人を見かけた。俺が育った街はそれほど大きな町ではないが、たまに路上で見かけたように思う。「午前2時に何かがくる」の話を聞いた時に連想したのもそれだった。
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テケテケの正体は傷痍軍人やそれに代表される戦争という暗い時代の象徴だったのではあるまいか。そして戦争の記憶が薄れていくうちに、工事現場の事故や列車事故など、手足がない理由が新たにつけ加わっていく。
俺が初めてテケテケの話を聞いたのはやはり1970年代のラジオ番組だった。その時はまだテケテケという名前はなかったが、冬の北海道で列車の事故によって下半身が切断されてしまった。しかしあまりの寒さで血管が収縮し、すぐには死ななかったというストーリー。
考えみればこれは順序が逆で、上半身だけで生きている理由を正当化するために冬の北海道という設定があとから追加されたのではなかろうか。
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子供の頃傷痍軍人というものを理解できなかった。なんとなく触れてはいけない話題という気がして大人に質問もできなかった。ただ当時の子供たちもなんとなく暗いものを感じ、それが実体化したのがテケテケの怪談なのかもしれない。
現在のテケテケはそういう暗さはそぎ落とされ、純粋な妖怪っぽい側面が強調されているように思う。矛盾するけれど明るい妖怪。テケテケはまさに「テケテケ」という名前を与えられた時に、それまでの暗いしがらみから脱皮し、純粋な妖怪になったのだ。
ゲゲゲの鬼太郎とかなんどもアニメ化されているけれど、時代が下るに連れて、エンターテイメントやアクション的な要素が増えているように思う。端的にいえば怖くない(笑)。
むかしの鬼太郎は怖くてまともにテレビ画面を見れなかった。ストーリーも社会風刺が結構混ざっていた。風刺だから勧善懲悪ではない。社会の歪みを描いてそれっきり。解決は放り投げている。
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怪談や都市伝説はその時代の世相を反映している。アメリカでラジオ放送を本物のニュースと勘違いしてパニックが起きたH.G.ウェルズの宇宙戦争は、「火星人ではなく日本が攻めてきたのだろう」と考えた人がいたという。1938年はそういう時代だったのだ。まあこのドラマ自体が劇中劇の形式なのもパニックを呼びやすい原因ではあるが。
参考サイト:
「カシマレイコ(前編)」 2003年8月13日 『「かしま」にまつわる基礎知識』
http://www5d.biglobe.ne.jp/DD2/Rumor/column/kashima1.html
「カシマレイコ(後編)」 2003年8月27日 『脚への執着』
http://www5d.biglobe.ne.jp/DD2/Rumor/column/kashima2.html
執筆: この記事は疑似科学ニュースのメカAGさんの記事からご寄稿いただきました。
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