Winny開発者・金子勇「悔いや後悔というのはない」

ファイル共有ソフト「Winny」開発者の金子勇氏

 MIAU(インターネットユーザー協会)代表理事の津田大介氏が司会を務め、インターネットに関わる問題を討論するニコニコ生放送の番組「ネットの羅針盤」。2012年2月22日の放送では、ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を開発した金子勇氏が出演した。違法コピーによる著作権法違反の幇助(ほうじょ)の罪に問われて逮捕・起訴されたものの、昨年12月に無罪が確定した金子氏は、「Winnyを開発して後悔はないか」という質問に対して、「悔いや後悔はない」ときっぱりと答えた。

 金子氏がファイル共有ソフト「Winny」を開発したのは2002年のこと。2004年には、インターネット上でのゲームや映画の違法コピーを手助けしたとして、著作権法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕された。一審(2006年12月)は罰金150万円の有罪、二審(2009年10月)では一審を破棄し「違法使用をすすめていない」として逆転無罪。さらに、最高裁は2011年12月19日、「著作権侵害を手助けしようという故意はなかった」として検察の上告を棄却し、金子氏の無罪が確定した。

■「Winny」は”包丁”か?それとも”拳銃”か?

 包丁は、料理の際に食材を切る目的で使われるが、人を殺す道具としても使用されることがある。しかし、包丁の製造者が”悪”だとみなされることはない。一方で、拳銃は包丁と異なり、拳銃を使った者も製造者(売った側)の両方とも”悪”とみなされる向きがある。

 このような例えを用いながら、津田氏は「Winny」が著作権侵害という犯罪行為のために使われており、一部から「包丁ではなくて拳銃ではないか」と指摘されていることを紹介した。この指摘に対して、ソフトウェア開発者の立場から金子氏は

「別に拳銃は開発したからといって、違法ではない。規制というのは、(開発が)できてからされるはず。できる前から規制されるのはありえない。拳銃と同じと言えば同じ。同じというのは悪用できるから同じなのではなくて、できる前なんだから分からないに決まっている。できるかどうか分からない状態では心配のしようがない。できてから心配するべき。作れる可能性については論ずべき」

と語った。その上で、

「『作れないでいい。そもそも(作ることを)封じてしまえ』という発想では、何も前に進めない。まず、作れるか作れないかが重要。作れたとしたら、(それが社会に対して)悪影響があったとして、『では、どうすれば対処できるか』を真面目に論ずるべき」

と述べ、社会的な影響については開発後に考慮すべきとの考えを示した。

■Winny開発に「悔いや後悔はない」

金子勇氏

 番組では、津田氏が「Winnyを開発して後悔はないか」と問う場面もあった。金子氏は「タイムマシンで昔に戻っていたなら(自分に)『(Winny開発は)やめたほうがいいよ』『10年後こうなってますぜ』と言う」としつつも、

「悔いがあるとか後悔があるというのは別にない。一応、最善を尽くしてきたつもり」

と答えた。この金子氏の回答に対して、視聴者からは多数の「wwwww(笑いの意味)」とともに「でもやってもらって(開発してもらって)よかった」「心底かっけーな」といったコメントが寄せられていた。

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 津田大介氏の「包丁と拳銃」の例え部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv82228280?po=news&ref=news#0:45:03
・[ニコニコ生放送] 金子氏がWinny開発に「後悔ない」と語る部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv82228280?po=news&ref=news#2:01:51

(松本圭司)

【関連記事】
Winny開発者、無罪確定へ ”2ちゃんねらー”に「悪用しないで」メッセージ
作家・東野圭吾ら”自炊”を代行するスキャン業者を提訴
知られざる「違法ダウンロード刑事罰化」の流れ
あなたも知らないうちに負担している? 「私的録画補償金」とは
マジコンがネット検閲の引き金に?「模倣品・海賊版拡散防止条約 (ACTA) 」とは

  1. HOME
  2. デジタル・IT
  3. Winny開発者・金子勇「悔いや後悔というのはない」
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。