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アマゾンの読み放題サービス「Kindle Unlimited」に「知らない間に入れられている」と著者が告発

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アマゾンジャパン株式会社が8日3日に提供を開始した新サービス「Kindle Unlimited」は、月額980円で和書12万冊以上、雑誌240タイトル以上、洋書120万冊以上の電子書籍が読み放題ということで大きな話題を呼んでいる。

これまでも「dマガジン」(ドコモ)や「ブックパス」(KDDI)など、定額制による読み放題サービスは存在していた。

しかし、電子書籍ストアの中でも利用率が高く(*1)、コンテンツ数が膨大な「Amazon Kindle」による読み放題サービスは、これまでのものとは違う、非常に大きなインパクトを出版業界にもたらすことは、容易に想像できるはずだ。

(*1/MMD研究所が今年3月に発表した「2016年電子書籍に関する利用実態調査」によれば、男女ともに利用している電子書籍ストア・アプリは「Kindle」がトップ。男性は46.1%の利用率と、「楽天Kobo」の28.6%と大きく引き離している。また、女性は43.4%と、「楽天Kobo」の26.0%をこちらも引き離している)

■著作者に「無断」でラインナップに入っている作品がある?

このKindle Unlimitedについては、各メディアはおおむね好意的な評価をし、電子書籍への期待の声をあげている。

例えば『ニューズウィーク日本版』では、『日本版「キンドル・アンリミテッド」は、電子書籍市場の転機となるか』という見出しで記事が掲載され、Kindle Unlimitedの開始が電子書籍市場の転機となるかもしれないと期待を寄せる。(*2)

その一方で、Kindle Unlimitedがスタートした直後から、一部の著作者からは次のような声があがっていた。

キンドル読み放題、自分の本も何冊か対象になってたんだけど、これ何の許諾もした覚えないんだよなあ。

契約書のどこかの条文に根拠があるのかも知れないけど、後から問い合わせて引っ込めさせる作家さん多いかもね。その場合、電子版は手元に残るのかな。

— 古市憲寿 (@poe1985) 2016年8月2日

僕のまわりでもキンドル読み放題に、知らない間に入れられていて激怒している著者が多数いるので、結構な数の本がすぐになくなるかも。ある出版社は、キンドルアンリミテッドが何かよくわからずに担当者がOKしてしまったという情報も。

— 古市憲寿 (@poe1985) 2016年8月3日

*いずれも「ツイッター」からの引用

この他にも、匿名を条件に、ビジネス書著者が次のような「告発」を新刊JPに寄せた。

「Kindle Unlimitedのラインナップの中に自分の本があって驚きました。出版社からは何の連絡もなかった。電子書籍を一冊一冊売るのと、読み放題サービスは印税も変わるはずなのに…」

■契約書上は問題ないと読み取ることができるが…

なぜそのようなコンテンツが、読み放題のラインナップに並んでいるのだろうか?

中堅出版社A社の電子書籍担当者に話を聞いたところ、次のような回答が返ってきた。

  ◇    ◇    ◇

――著作者の一部には連絡がないまま自分の本がラインナップに入っていると訴えている人もいるようだが。

「こちらについては、対応がまだ間に合っていないというのが現状です。ただ、販売方法の変更や読み放題サービスへの参加については契約上、(出版社側が決めて)問題ないという認識をしています。これまでもdマガジンやブックパスといった同様のサービスがありましたし、Kindle Unlimitedもそうしたサービスの一つだと考えています」

――Kindleで販売されている電子書籍の中には、Kindle Unlimitedに入っているものとそうではないものがあるが、これは出版社が決めているのか。

「基本的には出版社側で決めています」

――Kindle Unlimitedスタートの告知はいつ頃にアマゾンから連絡があったか。

「『正式にスタートをする』という連絡が届いたのは前々日くらいだったと思います。ただ、2ヶ月くらい前には『8月にスタートします』というような話はうかがっていました。もちろん収益分配の説明は以前から受けていました」

  ◇    ◇    ◇

「契約上、出版社が決めて問題ない」という認識については、日本書籍出版協会が提供する「出版権設定契約ヒナ型2015年版」の「出版権設定契約書ヒナ型3(配信型電子出版設定用)2015年版『出版契約書(電子配信)』」の第7条(2)を見ると、出版社側が「価格、宣伝方法、配信方法および利用条件等を決定する」ことができると読み取ることができる。

■古市氏「著者と出版社の信頼関係を壊しかねない行為」

しかし、「契約書上は問題ない」としても、著作者への連絡が不徹底である状態でスタートするのは倫理に欠ける行為であるとは言えないだろうか。

新刊JPの取材に対して、声をあげた著作者の一人である古市憲寿氏は次のように語る。

  ◇    ◇    ◇

――古市さんは無断でKindle Unlimitedに自分の本が並んでいるのを発見されて、どのような対応を取られたのでしょうか。

「まずは出版社に問い合わせました。すると、編集者の方も事態をよく把握されていない会社があったり、社内に一斉メールでKindle Unlimitedについての告知がなされただけで、著者への周知を徹底できていない出版社もありました。

僕は、担当の方々を責めるつもりはありません。これは出版社だけの問題ではなく、アマゾン側も十分な説明を出版社にしていなかったのではないか、ということも考えられます。

また、勝手にKindle Unlimitedに参加させられたことに関して、販売・プロモーション方法は出版社に一任するといった契約書の文言が根拠になっているようでした。しかし、僕の場合は、問い合わせをして初めて著者にいくら分の金額が分配されるなどの情報が明かされました。

胴元しかルールがわからないレベニュー・シェアというのは不公正だと思います。この件に関しても、アマゾン側の制度設計に問題点があるのではないかと感じました」

――今後、出版社側に求められることはどのようなことだと思いますか?

「僕はKindle Unlimitedの趣旨にすべて反対しているわけではありません。しかし、電子書籍で一部ずつ販売することと、読み放題の一冊に自分の本が加えられることは、まるで違う読書スタイルだと僕は思っています。そのようなサービスに、著者に無断で参加するというのは、著者と出版社の信頼関係を壊しかねないものです。

もし著者への連絡なしに出版社がKindle Unlimitedに参加するのであれば、著者側も、出版社を通さないで自分で電子書籍を出版したほうがいいという動きが広がりかねないのではないでしょうか」

  ◇    ◇    ◇

古市氏は自ら検索をかけて、自分の本がKindle Unlimitedに並んでいることを知ったという。おそらく、自分の著作物がラインナップに入っていることを知らない著作者も多いのではないか。

また、利益配分についても著作者は確認しておくべきだろう。数冊のビジネス書を執筆しているある著者は「利益配分がどのように変わるのか、説明はまだ受けていない。著者側にとって不利にならなければいいが」と困惑の色を見せる。

さらに、別のビジネス書作家は「電子書籍のルールの裁量の大きさは以前から気になっていた。その点で、書店さんが売りづらくなるので、電子書籍は避けている。今後、電子書籍等をやるときも、著者側の意向をきちんと汲むところ以外とはやらない」とコメントを寄せた。

こうした電子書籍に対する著作者側の意思表明は、自らの立ち位置を不利にしないためにも必要だろう。

この件の対応について、8月9日にアマゾン株式会社に質問を送ったが、8月12日正午現在返答は届いていない。

(新刊JP取材班)

*メイン画像は「Kindle Unlimited」のサインアップ画面をキャプチャしたもの

*2/「日本版「キンドル・アンリミテッド」は、電子書籍市場の転機となるか」(ニューズウィーク日本版)

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/08/post-5609.php

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