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“最も近い伝説”J・ディラの封印されたラップ・アルバム『The Diary』から伝わる人間臭い魅力(Album Review)

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 2006年3月、32歳の誕生日に名盤『Donuts』をリリースし、直後に血液の病で他界したDJ/プロデューサー、J・ディラ。“最も近い伝説”と呼ぶべき彼の功績は、ア・トライブ・コールド・クエストのQティップやアリらと組んだプロデューサー・チーム=ジ・ウマー(The Ummah)としての活躍をはじめ、バスタ・ライムスやコモン、エリカ・バドゥらの素晴らしい作品群といった形で残されている。

 彼が他界した後も、未発表のトラック群は実弟イラ・Jのラップ・アルバムに使用されたり、或いは幾つかのインスト作として発表されて日の目を見てきたが、この4月には、かつてソロ名義のメジャー進出作として準備が進められながらもお蔵入りしていたアルバムが、遂に『The Diary』というタイトルでリリースされた。本来は、UKレーベルのBBEからリリースされた『Welcome 2 Detroit』に次ぐアルバムとして発表されるはずだった作品だ。

 製作時期は2001年から2002年の頃とされ、この時期のディラはラッパーとしての活躍にも意欲を燃やしていた。本作に収録されている「Fuck the Police」は当時シングルとしてリリースされ、彼自身が手がけたソリッドなラテン・ビート風のトラックに乗せて怒りのラップをまくしたてる内容だ。才能豊かな外部プロデューサーたちを招いてラップに打ち込んだ『The Diary』は、当時リリースされていたとしても、ディラの豊かなディスコグラフィーを形作る一枚に数えられていたはずの充実したアルバムである。

 『Welcome 2 Detroit』でも共演していた幼馴染=フランク・ン・ダンクと掛け合いを繰り広げる「The Anthem」は、まさにデトロイト・アンダーグラウンドの匂いを嗅ぐわせる1曲。プロデューサー陣にもプラチナム・パイド・パイパーズのワジードやカリーム・リギンスなど、後に活躍の場を広げてゆくことになる同郷の才人たちが迎えられている。また、ジェイリブ(J・ディラ+マッドリブ)として結実する2人のコラボレーションは、アルバム『Champion Sound』のボーナス・トラック「Ice」として限定的に公開されていた1曲が、本作では「The Shining Pt. 2 (Ice)」として正式に採用されている。

 ピート・ロックのスムーズなトラックの上で、ビラルの美声をフックに用いた「The Ex」は珠玉の逸品だ。本作はNas主宰のレーベル=Mass Appealからのリリースとなっており、日本盤ボーナス・トラックにはNasとのコラボ曲「The Sickness (feat. Nas)」も収録されている。この世を去る直前には、やはりビートメーカーとして大きな足跡を残すことになるJ・ディラだけれども、ラップへの意欲とユニークなコラボレーションが詰め込まれた『The Diary』では、彼の人間臭い魅力が強く受け止められるのだ。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『ザ・ダイアリー』
2016/04/27 RELEASE
HSE-5060 2,592円(tax in.)

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