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『ズートピア』監督インタビュー バイロン・ハワード&リッチ・ムーア 「生きるために変化は必要なものだ」

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『アナと雪の女王』『ベイマックス』のディズニー映画最新作『ズートピア』が、4月23日(土)より全国で公開中だ。

『ズートピア』
動物が人間のように暮らす“楽園”、ズートピア。誰もが夢を叶えられるこの理想の“楽園”の危機に、夢を信じる新米警官のウサギのジュディが立ち上がるが……

本作の監督には、バイロン・ハワード監督とリッチ・ムーア監督、ジャレド・ブッシュ共同監督がクレジットされている。

バイロン・ハワード氏の監督代表作は『塔の上のラプンツェル』、そしてリッチ・ムーア氏の監督代表作は『シュガー・ラッシュ』と名作ぞろい。今回は、バイロン・ハワード氏とリッチ・ムーア氏にインタビューする機会に恵まれることとなった。そこで筆者も、ウサギのジュディの格好でインタビューに臨んだ。

部屋に入ってきたバイロン・ハワード監督は俳優と見まごう超イケメン。『ラプンツェル』のフリン王子そっくりだ。一方、リッチ・ムーア監督も実に表情豊かなダンディ。屈託のない笑顔は『シュガー・ラッシュ』のフィックス・イット・フェリックスそのものだ。

―― 今日はよろしくお願いいたします。

リッチ:こんな素敵な方にお会いできるなんて!(笑)

―― 今日はジュディが好きすぎてこんな格好で来てしまいました。

バイロン:え?(ウサギの耳を触りながら)これ衣装なの? これが素だと思ったよ(笑)

―― たぶんこの作品を見た人たちは僕みたいにジュディのことが頭から離れられなくなってしまうと思うんです。そのぐらいキャラクターの描写が魅力的すぎると感じました。

リッチ:ジュディというキャラクターは本当に愛されるべきキャラクターです。愛らしくて聡明でありながら、魅力的でとても決意のあるキャラクターなんですね。彼女は可愛くて小さくてフワフワしているというだけじゃなくて、ちゃんと夢を追い求めるやる気があります。
先ほども僕たち話していたんですけど、今、日本は春であり、特に若い方たちは新学期ですとか、就職ですとか、引っ越しですとか、親元家族から離れて自分の人生を生きていくという時でもありますよね。

そういった方々は、彼女のキャラクターからインスピレーションをうけたりすると思います。今日、この格好を着て来ていただいて大変、嬉しいですね!

バイロン:やはりみんながジュディを大好きになる。彼女が愛されるというのは、とにかくだれもが共感できるキャラクターだからと思うんですね。

小さい子供たちはお兄ちゃんとかお姉ちゃんが家を出て行って寂しい気持ちになるっていうのを思い出すかもしれませんし、10代のティーンエイジャーたちはまさにそういう時を迎えていて、自分の人生を歩みはじめる第一歩の門出を迎えているところも共感できるかもしれません。

大人は大人で親の世代になったりすると、ジュディの両親と同じようにですね、子供が巣立っていくところを見守る。親である自分の元を離れて、一人前になっていく心境とかを振り返って思い出すかもしれません。
あるいは、自分が初めて親元を離れて自立したときのことを思い出してちょっとジーンとくるかもしれませんよね。

ホントにどんな年齢層でも誰もが共感できる。そしてあとはやっぱり誰にとってもみんなが、自分が叶えたい夢っていうのを持っていると思っているんです。そういったところでもね、本当にみんなが感情移入できるキャラクターなんじゃないかと思いますね。

―― 今回、そんなキャラクターたちの描写がとにかくすごいと感じました。

おそらくモーションキャプチャーといった技術だけではだけでは表現しきれないような細かな表情をそれぞれのキャラクターから感じました。

僕が忘れられないシーンのひとつに、ジュディが物凄く打ちひしがれて部屋で食事するところがあります。あの時の表情は忘れられません。他にも物凄く感情が高まったときに鼻がこう、ヒクヒクって動くところだったり。あのときに「うわ、本当に彼女たちはスクリーンの中で生きているんだ!」って素直に思いました。どうしたらあんな表現、生きている彼ら彼女たちがいるような表現にたどり着けたのでしょうか。

リッチ:実際にそういったものを可能にしたのは、本当に私たちのスタジオの優れたアニメーターたちの才能と技術なんですけれども、アニメーターたちが駆使している技術というのは、実際はディズニーのアニメーターたちが60~70年前に使っていた技術と非常に類似しています。すでに僕たちは、伝統的にそういったものを継承しているという背景はあります。

とは言いながらも、今回はCGでそういったものを表現しています。ただ、おっしゃるように我々はモーションキャプチャーを使わず、動物の愛らしさや動きなどをきちんと勉強して取り入れています。

例えばナマケモノのゆっくり笑顔になるまでの動作であったり、ジュディがニックに謝る際の、心に突き刺さるようなシーンなどがあります。こうした表現もアニメーターたちがいろいろコントロールしながら技術を駆使しているからこそ実現できているのです。

バイロン:やっぱり単に動物を擬人化したようなキャラクターとして描くというだけじゃなくて、動物の特有の“動物らしさ”みたいなね、“本物らしさ”を絶対に失わないようにっていうのは非常にこだわった部分なんです。

というのは、みんな私たち人間は、実は非常に動物を見慣れているので、動物が実際どんな動きをするのかとか、どんな姿形なのかということを既によく知っているわけなのです。

なので、それこそさっきおっしゃったようにですね、うさぎがちょっと興奮したときとかね。ビックリしたときに鼻をピクピクっとさせたりとか、ヨガをしているところで出てくるヤクがですね、ボサボサの髪の毛で(笑)、ボサッボサッとやったときに、ついでにブルンブルンの唇がブルンブルン!と動くところとか、狐のニックがムカッときたときに、口元から歯を二カッとむき出すみたいな、……本当に種々の動物の仕草とか行動とか表情とかいうものをきっちりリアルに描きました。そういったリアルな動物の動きを通して、私たち人間の“感情”というものを描いています。

―― 『ズートピア』は、本当、一回見ただけでは整理がつかないくらいに深い。深いっていう一言も陳腐に思ってしまうくらい。作品の中で言わんとしていることが幾層にも重なっていて、たぶん一回見るだけでは、みんな自分の中で『ズートピア』を吸収しきれないんじゃないでしょうか。おそらく何度も見たくなる作品になっていると思います。

バイロン:そうですね。今作はディズニーにとってもこれほど複雑な作品は初では無い、というぐらいですね。

この巨大な世界観のために、実際に150もの異なったセットをこの作品のために作りました。世界観だけでなく、ストーリー自体も複雑なモノになっています。

ですので、実際に作品を観た方は「愉快な動物モノの作品を見に行ったと思ったら、大変驚かされた」「感情面で本当に深く掘り下げられた作品だった」ということを言ってくださいました。

で、リッチとも話をしたんですけども『ズートピア』という映画はですね子供たち(そしてディズニー)にとっては、おそらく最初の“刑事モノ”の作品になるだろう、と。子供たちが初めて目にする種類の作品であれば良質な作品を提供したいという思いもあります。そういったいろいろな意味でも観客を驚かさせる作品であるかな。

リッチ:テーマ的に凄く複雑で奥深いモノがあると思うんですね。でも、ひとつには世の中というのは「これはこう」「これはこう」という感じで白黒はっきりしていない、グレーの領域というのがたくさんありますよね。

あ、もちろん「夢は叶わない」と言っているわけではないんですけど、夢を叶えようとするときや目標を実現しようとするとき、自分が思い描いていた通りに進まないときもあります。
そういうことをきちんと包み隠さず、世の中の現実みたいなところを伝えているというところも、テーマ的にちょっと奥深くしているのではないかと思います。

―― 最後の質問をお願いします。偶然聞いた話なんですけども、実際の野生動物たちも、いま肉食動物の方が絶滅の危機に瀕しているなんて話があるらしいんです。その理由の一つに「肉食動物は性質が専門化されているからこそ、つぶしが利かない。だから餌が取れなくなって、草食動物よりもだんだん絶滅に近くなっている」というのが挙げられるそうなのです。

それは「変化や多様性を求められている」という風にも取ることができます。

今、人間界も巣立のシーズンで、環境の変化に迫られている人たちもたくさんいると思います。これから“変わろうとしている人たち”に向けて、メッセージお願いいたします。

バイロン:リッチともこの話をしていました。学校で大学行くために巣立ったりですとか、親元離れたりってこととか、若い人たち変化を経験する人とかいらっしゃると思います。

私たちが本当にジュディが大好きな理由って言うのが、本当に彼女が決意があってやる気があって、世の中を良くするためにがんばろうという思いでいながらも、彼女は自分が完璧ではないと気づくんですね。それでも、自分の夢を追い求めるということもしています。

同じく私たちもやっぱり完ぺきではありませんよね。

失敗もしたりするのが私たちですから、その失敗から学んだり、お互い支え合ったり、助け合ったりしていきます。

世界中いろんなところにいろんな人たちがいても、皆、「幸せになりたい」というところはとても共通していると思うんですね。同時に、世の中っていうのはとても複雑なものである、生きるっていうのは大変である、っていうことも、この作品の中でジュディが経験することでした。

だからこそ、お互いが支え合えば人間は一人ではないんだというのがわかっていただければと思います。

また、世の中に対して諦めていたニックはジュディに会うことによって“希望”を見つけました。私たちもジュディから刺激を受けたように、日本の皆さんもジュディからいい影響を受けていただきたいと思います。

リッチ:今の質問、世の中の矛盾とか、私たちの矛盾みたいなモノを浮き彫りにするいい質問だと思います。

私たちって、意外と変化を好まない生き物です。毎日同じ決まったところに住んで、決まった日課を、安定した暮らしを心の中で求めているんですけども、生きている以上変化というのは避けては通れません。

何か大きな変化が自分の人生で起こったときっていうのは、やっぱりちょっと不安な気持ちになったり、心もとなかったり、怖かったりということがあると思うんです。

けれど「変化を悪いことだ」「変わる事ってのは悪い事だ」って思うことは間違いで、そう考えるのではなく、「変わるのは自分が成長するためには必須だ。必ず必要なものだ」「変化は良いモノだ」っていう風にまず受け止めるべきかもしれません。

今のままで満足していたらやっぱり自分は成長できませんから。こうしたことをきちんと受け止めて、成長していってほしいなと思います。

―― ありがとうございます。

『ズートピア』は、ただ動物を擬人化しただけの作品ではない。

監督たちのメッセージにもあったように、緻密かつ広大な世界観に、動物(そして人間を)非常によく観察したうえで生み出されたキャラクターたちの存在感が、本作の奥深い仕上がりにつながっている。

おそらくディズニー作品の中でもあらたな“殿堂入り”となるであろう『ズートピア』。観た後で、また、監督たちのメッセージを読み返してみてほしい。

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記者:

「予備校生のような出で立ち」で写真撮影、被写体(スチル・動画)、記者などできる限りなんでも、体張る系。 「防水グッズを持って水をかけられるのが好き」などの特殊な性質がある。 好きなもの: 食べ物の写真、昔ゲーム(の音)、手作りアニメ、昭和、穀物

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