裸で起業する男『ヲタケン』、【会ってみた】開始前夜・前編
インターネットが人々の生活に浸透するのに伴い、パソコンなどの機器も広く個々人にまで普及しました。その影響で技術は飛躍的に向上、製品は安価で供給されるようになったわけです。そしてそのような流れは、弱者が強者に成り代わるという可能性を持つ、かつてない逆転現象を生み初めています。かつては寡占市場だった出版、映像、音楽業界も、外海からの“黒船”ではなく、内海にたたずむ小さな船の影響を受けるようになったのです。個人が書くブログが世論に影響を与え、インディーズバンドの存在が全国で認知され、家庭で作られた映像が世界中の人々に届けられるのです。
そしてこうしている今も、“素人”でありながらも作品を提供し続ける人達が誕生しているのです。
インターネットの動画共有サイト『ニコニコ動画』。サービスを利用したことはなくても、その名前ぐらいは耳にしたことがある方も多いと思います。動画にコメントをつけることで得られる“共有できる空気感”が人気を呼び、数年で多くの人々が作品を公開、閲覧する場所へと成長しました。そして当然のことではありますが、そこに活躍の場を求める人々が現れ始めたのです。その表現手段は様々。ゲームをプレイしている動画をアップする人、踊っている姿を披露する人、歌声を届ける人。キャラクターに歌を歌わせることが可能な『ボーカロイドソフト』で音楽を作った人の作品は、東京・渋谷駅のすぐ近くに位置する繁華街『センター街』でその歌が流されるなど、もはや無視できない存在へと成長しているのです。
そんな若いクリエーターである彼/彼女らの人物像に迫るインタビューシリーズ。第1回目は様々なことに裸で挑戦し続ける『全裸で○○してみた』シリーズで注目を集めることとなった『ヲタケン』さんです。最初に『ニコニコ動画』にアップした作品『1年前の生卵を全裸で食ってみた』は、現時点で70万4584回も再生され、コメント数はなんと22万520件にもなります。その人気の源泉はどこにあるのか、本インタビューではその秘密に迫りたいと思います。
■ ヲタケンさんは好青年だった
― こんにちは
ヲタケンさん(以下ヲ) こんにちは。こんな者のためにわざわざ札幌まで来ていただいて…。
― いえいえ。しかし普段から裸だったらどうしようかと思いました
ヲ さすがにそれはないです(笑)
― そうですよね(笑)。では早速、インタビューに入らせていただきます
ヲ よろしくお願いします。
■ ニコニコ動画との出会い
― そもそもなぜ、『ニコニコ動画』に動画作品をアップしたのですか
ヲ 友達がですね、『ニコニコ動画』にカラオケで歌っている自分の動画をアップしていたんですよ。
― それを見たのがきっかけだったと
ヲ そうですね。それにコメントがついたりして、見てくれるている人の生の声が聞こえるのが面白いなと思って。
― ダイレクトな反応があるところが良かったわけですね
ヲ それがなかったら映像を友達の間で回して、それで終わりだったでしょうね。
― では最初にアップした動画作品『1年前の生卵を全裸で食ってみた』についてなんですが、反応はどうでしたか?
ヲ すごく大きな反応だったんですよ。まぁビックリしてる人が大半だったんですけどね。「こいつは何してるんだ」なんて。
― なぜそのような大きな反応が得られたんだと思いますか
ヲ 誰もが考えないことを合わせ技でやったのが、評価につながったんじゃないですかね。“馬のマスク”と“全裸”と“1年前の生卵”という。
― 1つ1つにそれなりのインパクトがありますしね
ヲ そうですね。でも1つだけだったら、飽きられていたと思うんですよ。だから合わせ技は正解だったなと。
― 素顔をさらすことには不安はなかったんですか
ヲ とくに不安ということはないですね。「キメぇ」なんて言われるのも慣れてますし(笑)。
■ 動画作品について
― ではこのような作品を生み出したきっかけはどこにあるんですかね
ヲ 好奇心と探究心ですね。卵は腐った際に放つ腐卵臭というものが気になっていて、かいでみたかったんですよ。
― 動画作品の中には1年前と半年前の卵が出てきましたけど
ヲ 比較対照がほしかったんですよ。偽装だと思われたら駄目じゃないですか。今も家には3カ月目の卵がありますよ。
― また挑戦されるつもりなんですか
ヲ 1年前と半年前の卵で、固形と液状を見たので、今度は半熟を見てみたいという思いはあります。
― ちなみに1年前と半年前の卵では、どちらが強敵でしたか
ヲ 半年前の卵は水分が残っていただけに辛かったんですよ。またやるなら1年前のほうですね。こちらの食感は『ヌガー』というお菓子みたいなものでした。
― 他にも2度とやりたくないものはありますか
ヲ 送られてきたものなんですが、80箱近いものを1つに溶かし込んだアポロチョコレートですね。確か2000粒以上はあったかと。
― 甘いものは得意ではないのですか
ヲ いえいえ(笑)。そうではなくて、食べても食べても終わらなかったんですよね。
― そんなヲタケンさんの“鉄の胃袋”ですが、敗北した食べ物はあるのですか
ヲ 誤解されている事が多いのですが、実はほとんどお腹を下してるんです(笑)。セーフだったのはダンボール肉まんですね。ただダンボールで作って食べただけですから。
― “ただ”ダンボールですか(笑)
ヲ あとは毒きのこはちょっと危なかったですね。視界が狭くなったりしました。
― 意外にも、というか、当然デリケートではあるわけですね
ヲ それはまぁ、僕も“普通の人”ですから。だから変なものを食べるのは全部土曜日なんですよ。平日にお腹を壊したら怖いから。
― 作品が人気を呼んだ秘密はどこにあると思いますか?
ヲ 人気かどうかは分かりませんが(笑)。ニコニコ笑ってるのがポイントになったんじゃないですかね。まずそうに食べていたら駄目だったと思っています。
― こういった活動を通して、何か自分に変化はありましたか
ヲ 大げさに聞こえるかもしれませんが、人生が変わりました。それと、外に表現することに喜びを見出すようになりましたね。
― なるほど。では自分をとりまく環境などは変わりましたか
ヲ “裸仲間”が増えました(笑)。元々付き合ってた友達が脱ぎだした。お互い裸になれたかなってことかなと思ってます。まぁでも僕が無理やり引っ張りこんだみたいなものですね。みんな脱ぎたくて脱いだわけじゃない(笑)。
■ 『ヲタケン』そのルーツ
― 元々こういった活動はされていたんですか
ヲ 動画を撮ることが楽しくなったのは大学4年生の時です。仲間内の旅行動画を撮影したのがきっかけですね。
― 撮影する役割になることが多かったんですか
ヲ 家庭の影響で、小さい頃からビデオを撮ることには慣れていたんです。撮ること、撮られることが身近だったんですね。
― ではインターネットを利用するようになったのはいつ頃からなんですか
ヲ 中学校3年生の時ですね。これはかなりの黒歴史(大人になってから後悔するような恥ずかしい過去)なんですが、当時は『モーニング娘。』のおっかけだったんですよ。
― いえいえ(笑)中学生でしたらそういった事もあるでしょう
ヲ そうですかね(笑)。それでまぁ、『モーニング娘。』の情報を集めるためにインターネットを使ってました。そしてその情報を元に地方を回って“追っかけ”をしていましたね。
― 何かサービスのようなものは利用していましたか
ヲ 『2ch』にはお世話になりましたね。これもまた黒歴史なんですが、自分のメールアドレスをさらして失敗したり。当時のハンドルネーム(インターネット上で用いるペンネームのようなもの)で検索すると、恥ずかしい爪あとが残ってます…。
― そのハンドルネームは教えてはいただけませんか
ヲ さすがにそれはちょっとかんべんして下さい(笑)
■ 『ヲタケン』としての活動を振り返ってみて
― 自身の作品でのお気に入りはありますか
ヲ 『毒キノコを全裸で採って食ってみた』ですね。あの動画には同人時代の全てが詰まっています。
― 「力を出し切った」という感じですかね
ヲ そうです。当時、僕が考えられる範囲の全てのエンターテインメントが入ってますね。
― 作品中では常に裸ですが、裸になる意味はあるのでしょうか
ヲ これ以上失うものはない、何も隠してないという意味です。決意と覚悟の表明なんです。
― おお、なるほど。そもそもなぜ、映像作品を選ばれたのですか
ヲ 馬鹿らしくて楽しそうな姿を見て、少しでも気楽に、そして楽しい気分になってほしいんですよね。
― 多くの人が見てくれていることに対する率直な感想などはありますか
ヲ 見続けてもらえる限り、つまらないことはできないと思っています。これからも面白いと思えるものを量産していきたいですね。
― では『ヲタケン』というキャラクターは将来的にどのようになっていきますか
ヲ これからやりたいことは、人が考えていない、実行していないことを形にできるかだと思うんです。世間の常識と勝負したいですね。
― この路線を続けられるということですかね
ヲ そうですね。でも基本的なこととして、逮捕されるようなことはしませんよ(笑)。細心の注意を払っています。
― しかし外で撮影されたりもしていますよね
ヲ それはまぁ、ロケハンで探したいくつかの秘密の場所があるんです(笑)。山奥であるとか。まぁあんまり細かいことは言えないんですけどね(笑)。
さてさて、“全裸で無茶なことをする”というイメージをまったく感じさせないほどの好青年な『ヲタケン』さん。北の大地で敢行されたインタビューはまだまだ続きます。え、『ヲタケン』さんの洋服がなんだかおかしな事になってるって? いえいえ、そんなことはありません。何かの気のせいでしょう。
さて、「ネットで話題」なあの人の素顔、『ヲタケン』さん【後編】は、次週、5月16日(土)の掲載を予定しています。『裸で○○に挑戦』し続けたヲタケンさん、実はこの活動をベースに起業することを決意したそうです。次週はそんな起業家としての一面に迫ります。今しばらく、お待ち下さい(このインタビューの詳細はこちら)。
後編は以下からどうぞ。
「ネットで話題」なあの人の素顔、『ヲタケン』さん【後編】
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動画『全裸シリーズ』
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